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『マンボウ哀愁のヨーロッパ再訪記』 北杜夫 を読んで

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目次

はじめに


50年ほどむかし、子どものころ、中学生か高校生のときに、「どくとるマンボウ航海記」を読んだ記憶があり、その読後感の良さだけは残っていて、そのマンボウ先生の本をいま、図書館で見つけて、マンボウ先生の話を急に読んでみたくなった。

マンボウ・ポルトガル再訪記

なかなかな話、たとえば、酒ばっかり飲んでいたり、女を買いまくっていたりとか、いまなら怒られそうな話がいっぱい書かれていて、医者だったマンボウさんも、ただの若者だったことが良くわかる。
当時から北杜夫さんは、日本のスチュワーデスをからかったりするひとで、当時の日本人スチュワーデスがユーモアを解しないことが残念そうだった。また、1960年ころと比べるとポルトガルの街もさぞ様変わりしていたようだ。

マンボウ・タヒチ追想記

1960年ごろ当時は海外旅行ブームであり、日本人客も海外でのマナーは悪かったようだ。今の中国人と同様に思えるので、オーバーツーリズムで外国人のマナーをどうこう言うのは身勝手な気もする。ここでは、北杜夫さんの海外旅行に行くときの注意点について語られている。
まだ海外旅行が自由化されていなかったころ、ハワイへ行かれて歓待されたことや、ものを買って消費税が付くことに驚いた話など、まだまだ日本がひよっこだった頃の思い出も語られる。
そういえば、子どもの頃は消費税なんて無かったな、水やお茶を買うなんて想像もしなかったことを私も思い出した。

タヒチは物凄く暑かったらしい。30度もあって・・・と書かれているが、2025年7月現在の日本は35度の日が続いているので大したことはない。いや、クーラーが無かったのだとしたら暑いわなあ。
それから、暑くて息が切れるので、速足で歩いてはいけないそうだ。走ってるやつは精神に異常を来したやつとみなされると書いてあってウケた。それなら日本で30度ある朝にランニングしてる人は精神的にヤバイ人ということになる。タヒチはのんびりしているのだ。

また、マンゴー好きな私にとっても有用な?情報があった。マンゴーは捥いでからすぐに食べてはいけない。下手をすると顔中にふきでものが出るらしい。海外でマンゴーを買って食べることがあれば、数日寝かしておこう。
なだいなだというペンネームはスペイン語でナッシングアンドナッシングのことで、ふざけているとか、いちいち面白い。

マンボウ・つれづれ旅行記

汽車旅ばんざい、と書いてある。阿川弘之さん、宮脇俊三さんらの名前が出てくる。私も宮脇俊三さんの鉄道の本を持っている。
マンボウさんはハンブルクで初めて汽車に乗ったそうだが、当時は医者で作家というのは機会に恵まれていたのだなとも思う。

パキスタンのディラン登頂の途中で、お茶を飲んだ話や水産庁のマグロ調査船の船医として行った初めての外国での食事のこと、たとえばドイツの料理はまずく、フランス料理はうまい、とは言えフランス語は分からないので、カレーと読めたメニューを覚悟して頼んだらいいのが出てきた、などあれもこれも行き当たりばったりの様子で、そんなんでよく生き残れたなあと思うのである。

「日本とアメリカの欠点」の章では、日本人にもユーモアが必要だと説きつつも、昔江戸時代には狂歌、狂詩、川柳、滑稽文学が多く書かれた(ので日本人にユーモアの素養が無いわけではない)と説く。加えて金の使い方への苦言。金持ちになったのはいいが堕落した人が多いとも説く。
アメリカの例としては、ヤップ島でアメリカはなんでもアメリカ流を押し付けるが、それはアメリカ人は一番でなければならぬというプライドがあるせいらしい。そのせいで島民たちはアメリカを好まないし、そのやり方は島民の真の幸福とは食い違うと説かれている。いまトランプ大統領が強引に進めている世界各国への関税政策を見ていると、これと全く同じで、トランプさんも勉強不足である。

書籍情報

・形式 単行本
・出版社 株式会社 青春出版社
・ページ数 202頁
・著者 北杜夫
・初版発行 2000年10月10日
・分類 エッセイ

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著者情報

1927年東京生まれ。作家。東北大学医学部卒。『夜と霧の隅で』で芥川賞を受賞。『揄家の人びと』で毎日出版文化賞、『輝ける碧き空の下で』で日本文学大賞、茂吉四部作で大佛賞を受賞。近刊は『消えさりゆく物語』。2011年逝去。(本書およびネットの情報から)

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