MENU
ホーム » 書評 » ミステリー » 「川瀬七緒『紅のアンデッド』──法医昆虫学×心理分析で挑む“死体なき殺人”」
この記事の目次

「川瀬七緒『紅のアンデッド』──法医昆虫学×心理分析で挑む“死体なき殺人”」

  • URLをコピーしました!

当サイトはアフィリエイト広告を利用しています。

目次

紹介

本記事では、川瀬七緒の『紅のアンデッド』を、法医昆虫学という専門領域とプロファイリングの融合という観点から紹介します。 ミステリー好きはもちろん、科学捜査や心理分析に関心のある読者におすすめ!

<🛒 Amazonで今すぐ購入>  紅のアンデッド 法医昆虫学捜査官 (講談社文庫)

あらすじ(概略)

東京都内の古民家で発見されたのは、3本の切断された小指と大量の血痕。 住人である高齢夫婦と客人の行方は不明。死体がないため、事件性の判断すら困難──。 この難事件に挑むのは、法医昆虫学者・赤堀涼子とプロファイラーのコンビ。 虫の痕跡から“時間”を、心理分析から“動機”を読み解き、真相へと迫る。

登場人物

捜査分析支援センター(科捜研から分離されたマイナーな部署)

 波多野光晴 研究職(還暦前)
 廣澤春美 プロファイラー(43) ナイスプロポーション 170センチ(想定)
      夫は年収7万円の売れない彫刻家(35)
 赤堀涼子 法医昆虫学者(36) 主人公 155センチ(広澤より15センチ低いと記載)

大吉昆虫コンサルタント
 辻岡大吉 池ノ上にある(209)赤堀の大学の後輩 ウズベキスタン人ハーフ

西荻窪警察署 刑事
 岩楯祐也(いわだてゆうや) 180センチ 主任(鰐川の上司)
 鰐川宗吾(わにかわそうご) 180センチ以上だが細い 既婚 プロファイラー志願

被害者
 遠山正和(69)
 遠山亜左子(65)
 客人(20~40)

宗方家 ベジタリアン
 宗方君江(70+)橋爪修一の愛人
 宗方大和(27)ひきこもり 修一の息子

橋爪家
 橋爪修一(63)
 橋爪の妻(23年前の事件で行方不明)
 橋爪の娘 詩織(24)事件後、妻の実家の養子になる

単語補足(文中の廣澤春美の説明から)
 プロファイラー:犯罪心理学とは、その科学的知識を犯罪抑止に役立てた応用科学です。・・・なぜ犯人が人を殺したのか・・・ということを膨大なデータに基づいて顔色ひとつ変えずに答えるのがプロファイラーです。

あらすじ(詳細)

第一章 法医昆虫学者とプロファイラー

岩楯刑事相棒の鰐川刑事はあらすじに書いた事件を調査している。

腐敗した指を検証した解剖医は、指の切断日時を5/20前後と推定し、赤堀は6/1の午後3時~4時の1時間だと推定していた。

6/2の激しいゲリラ豪雨が捜査を困難にしていた。加えて老夫婦の遠山家は質素で人につながる住所録や年賀状なども全く無く、捜査は困難を極めていた。

被害者宅の隣の老婆に聞けば、染め物教室の貝塚さんが性悪グループのボスだという。会ってみると、かなりの美人でわがままな感じ。自然を守りたいようなことを言うが、その行動は身勝手で迷惑だが、男性陣には評判がいいようだった。

広澤、赤堀は事件現場に入る。ここからプロファイラー広澤春美法医昆虫学者赤堀涼子による事件の解明がスタートする。

被害者宅の隣の老婆からタレコミあり、遠山正和さんは人に知られたくない持病があったらしい。

第二章 似通った二つの家

岩楯刑事と鰐川刑事は、タレコミから得た情報から遠山正和の診察をしたはずの国立総合医療センターを訪問し、当時担当した医者から話を聞いたが、リハビリ仲間の情報を得たにすぎなかった。

まるひろ

8/24現在、ニュースとなっていたマダニ類を媒介する感染症のSFTS(重症熱性血小板減少症候群)のことが書かれている。致死率は20%、本書が刊行されたのは2018年4月なので、ちょうど7年前であるが、このころから始まっていたのだ・・・ (116)

プロファイラー広澤春美は、今回の事件とよく似た23年前の事件を報告した。

岩楯刑事と鰐川刑事は、被害者の橋爪宅を訪問して、遠山宅とあまりにも雰囲気が似ていて驚く。似通った二つの家だった。橋爪に話を聞けば、縁を切った娘が一人いるという。偶然その娘が父を訪ねてきて対面した。娘の将来のことを考えて籍を抜いたという。だが、今回の事件と関連するようなものは見つからなかった。

赤堀涼子後輩の辻岡大吉プロファイラーの広澤春美を伴い、ウジムシがたかる死体腐乱再現実験の現場へと向かった。人間の代わりにブタの足で再現した足先三本に群がるウジムシを採取した。

また、行方不明となった遠山さんがかつて通っていた禁酒自助活動のサークルにも聞き込みをしたが、ここでも遠山さんは好かれていないようだった。ただ、尋常ではない洗脳のような活動が気になった。

第三章 不純な動機

赤堀涼子がなぜ法医昆虫学者になったのか。その以外な動機が暴露され、岩楯刑事はたじろいだ。まさか禁酒自助サークルへの聞き込みで見たサークル活動がきっかけとなり、赤堀涼子は自分の父がアル中だった過去を語るとは思ってもおらずさらに驚く岩楯刑事。今もトラウマに悩まされている。父が生きているのかも分からず、何か事件が起こるたびに父が犯人じゃないかと考えてしまうらしい。

法医昆虫学に没頭し、自己再生のためというのが法医昆虫学者になった不純な動機なのだ。

現場での検証で、赤堀は染め物教室の貝塚さんに刑事と共に聞き込みをし、貝塚さんのせいで、問題の害虫が大量発生していると指摘する。その聞き込みの際に玄関の下駄箱から犯行現場で採集されたスニーカーの足跡と一致するスニーカーが発見され、貝塚夫人は警察署に連行された。

貝塚夫人は、殺人は否定したものの、染料を盗みに遠山邸へ侵入したことを自白した。

そして、プロファイラーの廣澤先生が指摘していた類似事件とつながる事例が見つかった。どちらの事件でも近隣でやけど虫が大量に発生していたのである。貝塚夫人が自慢していたマリーゴールドは虫よけにはなっておらず、カメムシを寄せ付けているらしい。

第四章 三人の研究者

三人の研究者というのは、捜査分析支援センターの三人のことだ。

そして、三人が導き出した犯人の素性は、ヴィーガン(極端な菜食主義者)だった

それを聞いた刑事らは、ある仮説を立てた。老夫婦を刺したのは、うっかり動物性の材料が含まれる抹茶ケーキを出された客人の男だというもの。

捜査会議でその話を報告したが相手にもされなかった。

岩楯刑事鰐川刑事は、犯人はヴィーガンという話から自助サークルでの洗脳的な活動内容を主催していた沼井オーナーに目をつけ、彼が務めるコンビニを訪問した。両刑事は、沼田がやっている自助サークルは、霊感商法だと指摘し、自助サークル内のベジタリアンの名前(宗方君江さん)を聞き出した。

さっそく、七十過ぎの宗方君江さん宅を訪ねた。息子の宗方大和は27歳で引きこもりだという。そしてベジタリアンらしい。この事実は捜査分析支援センターの分析結果と一致するように思えた。

また三人で貝塚宅に隣接する遠山宅の裏手に発生した毒虫を鎮静化する作業の中で、畳をはがして床板を踏んだ時、赤堀涼子は貝塚宅の犬が遠吠えしていることに気づいた。犯行日時である6/1に犬の遠吠えが発生したことから、当日も畳を上げて誰かが床板を踏んだのではないかと予想された。


つまり、床下が怪しいということになる。鑑識も当然床下は調べたのだが、毒虫がさらにその下から湧いてくるということは、もっと深いところに埋めたのではないかと気づく。そしてついに地中に埋もれた井戸を発見するのである。

虫のおかげで発見できたと言える。

死体が発見され、類似事件も同様のからくりで迷宮入りしたのではないかと疑われ、すぐに23年前の事件の橋爪宅へ向かった。

第五章 救済とエゴイズム

この章ですべての謎が回収される。

続きはこちら👇

<🛒 Amazonで今すぐ購入>  紅のアンデッド 法医昆虫学捜査官 (講談社文庫)

感想・考察

久しぶりに、プロマネの視点(構造・差別化・体験)でレビューすると、

✅ 法医昆虫学という独自テーマが、他のミステリーとの差別化要因となっている。

✅ 科学と心理の二軸で進行するため、読者の思考を多面的に刺激する構造である。

✅ 赤堀涼子の冷静さとプロファイラーの感情的アプローチが好対照なキャラ設定

✅ 派手な演出はないが、論理と観察による“静かな緊張感”が持続します。

『紅のアンデッド』は、“ 静けさ”が印象的でした。 登場人物の言葉よりも、虫の動きや痕跡が雄弁に語る場面が多く、まるで自然そのものが証人になっているような感覚に陥ります。

赤堀涼子の冷静さと、プロファイラーとの対比も見どころ。科学的な視点と人間の内面を探る視点が交錯することで、事件の輪郭が少しずつ浮かび上がっていく構成が秀逸です。

また、昆虫の生態が物語の鍵になることで、読者自身も「虫の目線」で事件を追うことになり、読みながら自然と観察力が研ぎ澄まされていくような感覚がありました。

静かだけど、確実に心を揺さぶる一冊。 シリーズ未読でも楽しめますが、赤堀涼子の成長を追ってきた読者には、さらに深い味わいがあると思います。

Kindleで読めるシリーズ

巻数 タイトル Amazon Kindle
第1巻 法医昆虫学捜査官 今すぐ読む
第2巻 シンクロニシティ 今すぐ読む
第3巻 水底の棘 今すぐ読む
第4巻 メビウスの守護者 今すぐ読む
第5巻 潮騒のアニマ 今すぐ読む
第6巻 紅のアンデッド 今すぐ読む
第7巻 スワロウテイルの消失点 今すぐ読む
第8巻 18マイルの境界線 今すぐ読む

著者紹介

川瀬七緒は、乱歩賞受賞作家であり、法医昆虫学捜査官シリーズは8作以上の実績を持つ。 シリーズは各巻独立性が高く、初読でも問題なく理解可能。 科学捜査を軸にした知的ミステリーとして、継続的な読者層を獲得している。

購入リンクまとめ

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
目次