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『虚ろまんてぃっく』 吉村萬壱 あらすじ・所感

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目次

はじめに


この作品に限ってなのかは初見なので分かりませんが、下ネタが多い。

物語というか前後のつながりがよく分からない。

本人があとがきで語っているが、「これを書いた人間は少し頭がおかしいのではないか」

つまり確信犯なのである。

あらすじ

行列

「行列は延々と続いている」ではじまるこの話は、人生のようで、そして人生のある部分を強調して描かれたような世界観だった。

なんだこれ? という感じの短い話ではあるが、印象には残る。そして最後は何もかも分からなくなる。

夏の友

「夏の友」、それは宿題のことらしい。大阪の小学五年生が、夏休みの間、父の実家である徳島の田舎に滞在しているお話である。
田舎の親戚には、従兄弟や従姉妹がいて、その思春期にはいろいろある。
読者の私にとっても身に覚えのあるような、懐かしい昭和の描写が沢山ある。
私はこの主人公と違って、宿題は早めにやってしまう方だったので、そこは違うなと思った。

噓ろまんてぃっく

伊呂波埠頭
そこは、人気もない埠頭
「不法入国者多発。不審な人物を見かけたら、すぐに警察に通報して下さい。〇〇県警」
の看板がある。

裸になって、彫像のごとく静止する男がいるかと思えば、ブルーシートの小屋で寄り添う老人グループがいたりする。

車で来て、中で何かをする男女、女はスライドドアを開けて吐く。しゃがみ込んで尿を放つ。
静止していた男は、股間をしごいて、濃い液体を宙に放つ。

そして、伊呂波埠頭の細胞が登場する。
彼は静寂を愛するのだが、今日の埠頭は、とんでもなく美学に反してうるさい。
ある意味、不法入国者だらけなのである。

家族ゼリー

自動販売機のところで、「ちょっとどいて」と言われたら、誰でもこうなるだろう、という話だが、その展開が想像を超えている。
言われた方も、言った方も、しつこい。

すると、とんでもない状況になった。へ、変態か・・・
そして、さらにとんでもない事実が明かされる。
二人は、・・・だった。

・・・なんだかなあ・・・

そして、最後は家族がゼリーのように・・・変態だ・・・

これは、臭い官能小説である。

コップ2030

認知異常に関する調査が行われている。
調査されている人たちには、調査目的は知らされていない。

この状況で、一人の男がこの調査について疑念を抱き始めるところから、話は盛り上がっていく。

が、ここからあとに書いてあることは、意味が分からない。妄想にしてもほどがあるだろう!
夢でも見ているのか!

樟脳風味枯木汁

作家の男と老婆のアレの話である。
これ以上は、書きたくない。
なんで、この本を選択したのだろう。

大穴

女は大穴登(おおな)喜美子。
男は還暦前の売れない文筆家。

男が目を付けたのは、自分の前を歩く背の高い女だった。
残念なことに、颯爽と歩くその女性は、街灯の柱に激突して倒れこんだ。
男が助けを呼ぶ。

ところが、救急車が来る前に、女は逃走したのである。
男は女を追うが、雑踏で見失ってしまった。

四日後、電車でその女と遭遇する。女は貸したハンカチを返してくれた。
向かいに座ったその女は、もんじゃのようなものを吐いた。

また、なんか変な感じやな、と思っていると、やはりそうだ。

ここからは、もうあらすじなんて書けない。

と思いながら読んでいくと、この女を自宅に連れて帰るのである。
そのあとの展開は、まあご想像どおりだ。そんなうまい話は・・・
女は、昔庭に葬った狸の恩返しか!と思わせて、そうでもなさそうな・・・

いずれにしても、大女はいずれ家を出ていくのである。
何事も無かったかのように。

そして、もうすぐ還暦の男は、親に家賃を無心するのである。

なんだ、この話は・・・

希望

この章は、3分で読み終わりました。

工場のベルトコンベヤーの話を擬人化したものでしょうか。

私の頭には、水揚げされたサンマが、ベルトコンベヤーの上で選別されていく様子でした。

でも、小説のなかでは、何の工場だとか、それを擬人化しているとは、書かれていないので、

もしかすると、宇宙人に捕まった人間を缶詰にする工場とかでしょうか。

でも、そんな妄想をしている間に、もうおしまいでした。なんじゃこりゃ・・・

歯車の音

朝起きると、男の横には八十歳の見知らぬ女が寝ていた。
毒の海の水位が上昇して、家の一階は海水が押し寄せている。
という設定ではじまる。

ここからどうするのか妄想するのも面白いかも知れない。

それから、なまずになって泳いで・・・

そして、家に帰ると、男の家族の話になっている。
年老いた母と寝たきりの父に、引きこもりの自分がいる。
でも、寝たきりの父は、大穴さんのときの男のようでもある。幻覚?

そして、母と父をののしっているだけの自分がいるのだ。

前半と後半のつながりが、よく分からなかったなあ・・・。

大きな助け

ケチで厳格な男と、宗教にハマった妻と、虐待される四歳の息子。

自己犠牲は、小さな助け。
したがって、信者は自己を傷つけたり、子どもを傷つけたりして徳を積もうとする。
大きな助けは、心臓を突き刺すことらしい。(容赦ないなあ)

こんな宗教に係わっていたら、いずれ大変なことになるのは目に見えていて、やはりそうなる。
灰が降ってきて、ガスタンクが爆発している。

これは、もうどうしようもない、ということなのか。
わたしも、もうお手上げである。

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感想

あらためて、作者紹介を見れば、芥川賞作家であった。( ,,`・ω・´)ンンン?。

妄想みたいな流れもあるので、SFならもっと壮大にしてほしい気もするが、社会派のような路線を強調したいのなら、短編でもいいのかと思うが、まだよく分からない。

今回のこれは、ややエロティックな、ただしあまりきれいではないやつ、という感じです。
吉村さんが自分に合うかどうかは、別の作品も読んでみるしかなさそう。

書籍情報

・形式 単行本
・出版社 株式会社文藝春秋社
・ページ数 312頁
・著者 吉村萬壱
・初版発行 2015年9月10日
・分類 文芸作品

著者情報

1961年、愛媛県松山市生まれ、大阪で育つ。京都教育大学卒業後、東京、大阪の高校、支援学校教諭を務める。2001年「クチュクチュバーン」で第92回文学界新人賞を受賞しデビュー。2003年「ハリガネムシ」で第129回芥川賞受賞。主な作品に「バースト・ゾーン」「ヤイトスエッド」「独居45」「ボラード病」「臣女」など。
(本書の情報から)



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