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『コーヒーが冷めないうちに』 川口俊和 感想・あらすじ

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感想

久しぶりに本屋さんで本を買いました、その2。
34か国で翻訳、世界中でベストセラーというのは、ほんとうだろうか?
調べると、有村架純主演で映画化されていた。映画は見ないし・・・

四話あって、どれも、あるコーヒー店の、不思議な座席のお話のようだ。
この狭いエリアで、どんな物語を読ませてくれるのか、楽しみである。

読んでみると、
・こんなことができるのなら・・・・
・ほんとうのことを知ったら幸せなのか・・・・
・他人のことならいいけど、全部顔見知りの常連さんや自分たちの話・・・・

まあ、途中からネタフリが多いので、展開が読みやすかった気もするが、感動させてもらえるから良しとしよう。
四話とも短編で読みやすいし。

物語

第一話 『恋人』 結婚を考えていた彼氏と別れた女の話

清川二美子は、この喫茶店で、彼から別れ話を切り出されて、喫茶店を飛び出した。

その後、この喫茶店の都市伝説を聞いた二美子は、あの別れのシーンをやり直したくて、1週間後にまたその喫茶店にやってきて、マスターに「私を過去に戻らせてください!」と叫んだのである。

店内には三人の客とウエイトレス。テーブル席には、白い半そでの幽霊の女、冴えない男、カウンターには真っ赤なキャミソールの女、カウンターの中にウエイトレスだ。

それぞれの素性はさほど重要ではないと思うが、割と事細かく説明されていた。そうでもないと後で気づく・・・。


戻れるのは戻れるらしいが、いろいろ条件があって、そんな条件下で、どうやって過去を覆すのだろうか。
条件の中に「過去に戻ってどんなに努力しても現実は変わらない」というものがあるし。

(東京リベンジャーズはどうだったかな、毎回変わったよな、とか考えてみたが、ん~思い出せない。)

ついに二美子は1週間前にもどって、無事帰ってきた。

さて、二美子が1週間前に戻って意味はあったのだろうか?

以下、ネタバレ省略。

第二話 『夫婦』 記憶が消えていく男と看護師の話

第一話に出てきた「真っ赤なキャミソールの女」の名は、平井八絵子。
その妹の平井久美は、ウエイトレスの時田計(時田数の従妹)に姉への手紙を渡し、「父母も怒ってない」と伝言を残した。カウンターの裏に隠れていた八絵子はそれを聞いていた。

妹は旅館を継がされて、姉を恨んでいるらしい。
でも、今回の主役ではなさそうである。第三話が「姉妹」だから、フリだな。

第一話に出てきた「冴えない男」の名は、房木。若年性アルツハイマー型認知症。いわゆる記憶障害である。
彼もまた過去に戻るつもりだと言う。
妻に渡しそびれた手紙を渡すそうだ。

喫茶店に入ってきた看護師の高竹さんが自分の妻だと認識できない。「どこかでお会いしたことありましたっけ?」

ついに、この時が来たか、奥さんのショックは計り知れない。
となると、「妻に渡しそびれた」手紙のことも、本人は忘れ去っただろう。もう本当に渡せない。

そのとき、第一話に出てきた、いつもワープ席に座っている「白い半そでの女」がトイレに立った。
チャンス到来!!!

奥さんが過去に行けば、冴えない男が「妻に渡しそびれた」手紙をゲットできるかもしれない。
そう考えた時田計は、奥さんにワープ席に座ることを強く進言した。ラブレターかも知れないよ。

看護師の高竹さんは、その言葉に決心がついた。
自分のことが分からなくなる前に、夫が私にラブレターを渡そうとしていたのなら、読んでみたい。

高竹さんは、その席に座った。
ウエイトレスの数ちゃんが、彼女の前に新しいコーヒーカップにコーヒーを注ぐと、目の前が揺らぎはじめた・・・

認知症が進む九十代の父を持つ読者の私にとっては心にしみるラストシーン(ネタバレ省略)である。

第三話 『姉妹』 家出した姉とよく食べる妹の話

さて、今度の話は、逆の世界から見た物語らしい。
カウンターの中にいるのは、この喫茶店のマスターだ。

そして、ワープ席には、「白い半そでの女」ではなくて、若い高校生くらいの女の子が座っている。
そう、この子は未来からきて、そこに座り、ルールどおりそこから動けないでいるのだ。

その少女は、産婦人科から帰ってきた計ちゃんに、いっしょに写真を撮ってくれと頼んだのだ。

読者の私は考えた。この子は、今、計ちゃんのおなかにいる娘で、未来に計ちゃんが天国に行ってしまったので、過去に戻って親子写真を撮ったのだ、と。 きっと、次の話のフリだろう。

で、今回の主役は、第一話に出てきた「真っ赤なキャミソールの女」で、第二話の冒頭で妹から隠れていた常連さんでスナックのママ八絵子。若干三十歳といったところか。

そのあと、妹は寂しく実家へ帰る途中、交通事故で亡くなったという。
実家の旅館を継いだ妹は、姉に戻ってきてほしくて、何度も何度も八絵子を訪ねてきていた。
そんな妹を追い返すようなことをしていた挙句、今回の交通事故に合わせてしまった。

後悔した姉の八絵子が取るべき行動は!?

もちろん、最後に会いに来た妹に、隠れずに会うことだった。
ワープ席に座っている白い半そでの女の呪いを乗り越えて、そこに座ることに成功した。

ウエイトレスの数ちゃんが、八絵子の前にコーヒーカップを置き、コーヒーを注ぐと、目の前が揺らぎはじめた・・・

このあとは、ネタバレ省略。

第四話 『親子』 この喫茶店で働く妊婦の話

第一話に出てきた「清川二美子」は、「白い半そでの女」の前に座って女を観察していた。

ウエイトレスで数ちゃんの義姉の計ちゃんが顔面蒼白で体調が悪そうだ。
計ちゃんは心臓が悪く、激しい運動ができない。

計ちゃんとマスターとの出会いは病院だった。
病弱な計ちゃんは、体中包帯を巻かれた大きなマスターに一目ぼれし、結婚を申し込んだという。
もちろん、答えはイエス。

いま計ちゃんは妊娠しているが、子どもを産んだら母体の体力は持たないと、主治医に言われた。

そして、計ちゃんは「白い半そでの女」席が空いたので、未来へ行ってみようという気になった。
自分と子供がどうなったか、いや子供の顔を見てみたいと思った。
夫のマスターは、ダメだという。

・・・

遂に、計ちゃんの信念がマスターの首を縦に振らせた。

不思議な力を持つウエイトレスの数ちゃんに、10年先の15時に行きたいとお願いした。
そうすれば、ここにいる人たちが、その日その時刻に、計ちゃんの子供をこの喫茶店フニクリフニクラに連れてきておけば、計ちゃんはわが子に会えるはずである。(なるほど・・・)

だが、計ちゃんが着いた先は、数ちゃんに告げた10年先の15時ではなく、15年先の10時だった。

このあとは、どうなるのか! ネタバレ省略です。

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書籍情報

・形式 単行本
・出版社 
・ページ数 352頁
・著者 川口俊和
・初版発行 2015年12月6日
・第79刷発行 2024年9月20日

著者情報

大阪府茨木市出身。1971年生まれ。元・劇団音速かたつむり脚本家兼演出家。代表作は「COUPLE」「夕焼けの唄」「family time」等。本作の元となった舞台、1110プロヂュース公演「コーヒーが冷めないうちに」で、第10回 杉並演劇祭大賞を受賞。本作が小説デビュー作。(内容はこの書籍に掲載されていたものです)


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