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颶風(ぐふう)の王 河﨑秋子 三浦綾子文学賞受賞作

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颶風とは、強く激しく吹く風のこと。

目次

内容紹介

第一章 乱神

捨造は、今は亡き養母に育てられた。大きくなって自分の土地を手に入れたいと考え、北海道開拓者募集へ応募した。
そして、別れ際に閉じこもりとなっていた母から「自分(母)の過去についての記録」が書かれた紙を渡された。

それには、母の過酷な運命と捨造が産まれるまでが綴ってあった。

要約すると、このような感じとなる。
庄屋の娘のミネ(捨造の母)は、小作農家の吉治と深い仲となり、正月に二人は失踪するが、吉治は追っ手に追い付かれて捕まり、ミネはアオ(馬)に乗って逃走した。ミネとアオ(馬)は、村から逃げる途中で、雪崩に巻き込まれ遭難してしまう。そして、雪洞の中で何日も耐え、馬の肉を喰らい生き延びて、行商人に発見され、捨造を産んだのである。

第二章 オヨバヌ(トコロ) かっこ書きは説明として追加。

北海道太平洋側東部、根室地方。捨造は東北からここに辿り着いて祖父になっていた。孫娘の和子と馬を育て、家畜商の馬喰(ばくろう)の山田老人に馬を売るのである。

明治期に入り、西欧文化の流入で、家畜飼育の価値観が変わり、日本政府の方針が変わった。

日本の小さい牡馬は、もう仔を残す必要がないとされた。むしろ残してはならない。牝馬の腹は全て外国馬のために使わねばならない。


戦に使うため、欧米の多きくおとなしい馬が必要だったのだが、国産の牡馬はかわいそうである。
だが、政府の意に反して、一部の道産子は見逃されて純国産馬として残り続けた。

和子の馬もそうであったが、大きな台風で馬の大半を失った和子らは、悲痛な思いのまま、釧路から、母の実家の十勝へ移住することになったのである。

第三章 凱風(おだやかな風のこと) かっこ書きは説明として追加。

時代は過ぎて、和子は祖母になり、孫娘のひかりが登場する。

花島に置き去りにされた馬の子孫の牝馬と、置き去りにされた馬を育てた祖母に聞かされてきた昔話の記憶が刷り込まれた孫のひかりとが、長い年月を経たあとに邂逅し、お互い一族を代表して、お互いの生き方に納得したのだ、という感じがした。

この海に囲まれ、風に削られ、そうしていつか地にひれ伏し倒れても、それは意思及ばず朽ち果てたことにはならない。ここで最後まで、死ぬまで懸命に生きたということが、意思が及んだという証明であり答えだった。


人が思っているほど、馬や動物は弱くはないということを思い知った。また逆に人がいっしょにいた馬や動物を思い続けているさまは、もはや人間だけが、単なる動物ではなくなってしまった証明であり答えだということだろうか、と思った。

時代・場所

明治はじめ 東北の農村

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登場人物

庄屋
 捨造の祖父母
 捨造の母ミネ(お嬢様、閉じこもり)
捨造  ミネの子、北海道開拓者募集に応募する
和子  捨造の孫
ひかり 和子の孫

河﨑秋子さんのプロフィール

羊飼い。1979年北海道別海町生まれ。北海学園大学経済学部卒。大学卒業後、ニュージーランドにて緬羊飼育技術を1年間学んだ後、自宅で酪農従業員をしつつ緬羊を飼育・出荷。(本書の紹介文より)

著者の作品

2012年「東陬遺事」で北海道新聞文学賞(創作・評論部門)受賞。2014年に三浦綾子文学賞を受賞した『颶風の王』を15年KADOKAWAより単行本として刊行。同書で2015年度JRA賞馬事文学賞を受賞した。近著に『肉弾』がある。(本書の紹介文及びネットの情報より)

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