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鯨井あめ アイアムマイヒーロー 同窓会を抜け出した大学生の敷石和成は、駅のホームで突然タイムスリップし、小学六年生に。今の自分に自信が持てず、原因は過去だと思っていた敷石にチャンスが来たのか!

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鯨井あめ アイアムマイヒーロー


拙評・感想

敷石和成(しきいしたかなり)は、十年ぶりに、乗り気ではない小学校の同窓会に出席した。飯塚正人はゲーム好きの私大生、田島拓郎は婚約中、の仲良し三人組で、自分だけが浪人して大学もあと1年ある自堕落大学生だった。

そのため、会話も弾まず、遠慮のない同級生の昔のノリの言葉に耐えられず、同窓会を抜け出してしまった。
そして、帰りの駅のホームで、女性が線路に落ちるところで、敷石はタイムスリップした。

タイムスリップした過去は、十年前で小学六年生。
通常のタイムスリップとは違い、自分は当時存在しなかったはずの誰かになっていた。過去の自分を客観的に見つめることができる点は新しい。

自堕落大学生の敷石の小学校時代は、さらにひどい状態であったので、対面した自分に対しても批判的である点が面白い。
であるなら、その過去の自分を変えさせることができれば、今の自堕落な大学生ではなくなるかも知れないと、私(まるひろ)は考えたが、そんなに簡単ではないようだ。

困惑している敷石に声を掛けたのが、同級生の渡来凛だ。
彼女の家は富裕層で、自宅は高級住宅街にあった。しかも両親は仕事で忙しく、凛はひとりのようだ。
タイムスリップのことを全て話しても、凛は驚かず、敷石を自宅に泊めてくれた。

なぜか、小学生の仲良し三人組は、カズヤを知っており、何事もないかのように日常は過ぎる。
こうして、カズヤは自分であるタカナリと会話まで出来てしまうという、面白い設定である。

カズヤは、未来へ戻る手がかりとなるもの(異物)を捜し始めた。
異物:本来起こりえなかったこと、いないはずの生き物・人。
そんなとき、不審者情報がささやかれはじめる。
そして、あちこちに動物の屍骸が発見され始めた。

凛は「どうしてタイムスリップしたのか」と聞き、カズヤが「偶然?」と答えると、凛に「そんなわけないでしょ。タイムスリップは過去を変えるためにするものだよ。」と言われてしまう。

カズヤは、わがままなタカナリと会話して、22歳の自分を思い出す。
大学生活に目的を見出せず、就活は苦行と思い、自分には魅力は無く、無能で、繊細で、プライドが高い、こんな自分になってしまった原因は過去だ、と思っていた。
(その思いがベースにあって、目の前の事故からも逃げたくて、タイムスリップしたのか?)


渡来の家に置いてあった凛の「気づいたことノート」

嫌いな自分を辞める方法

  • 嫌いなところを書き出す。
  • 理想を作る。
  • 嫌いなところを変えていく。
  • 習慣にする。
  • どうしようもないときは大丈夫のおまじないを使う。

なりたい自分

  • 人に心配をかけない。
  • 唯に優しくできる。
  • かっこよくて、真面目。
  • なんでもできる。
  • 否定しないと、成長できない。
  • 「助けて」はかっこ悪いから言わない。

タイムスリップしたことで、敷石は自分の過去を見つめ、優等生だった渡来凛の苦悩も知る。
「優等生の正論なんていらない。自分を否定して嫌いなところを羅列して成長した気になってんじゃねえよ」とカズヤ。
そして、不審者があちこちで見られるようになったころ、渡来凛が行方不明になった。
カズヤは、その不審者の正体に気づき、凛からもらっていたあるモノから監禁場所に辿り着いたが、不審者に見つかって拘束されてしまう。

(中略:ネタバレ部分)



気がつけば、敷石は駅のホームに立っていた。そして、女の人がホームから落ちる。。。電車が迫る!


カズナリに戻った敷石は、彼女を救えたのか、不審者は誰だったのか、タイムスリップを起こした真犯人とは。。。

「消し去りたかったあの姿を、和也(タカナリ)は否定しない。過去がいまを、いまが未来を構築していく。」
過去を見つめた敷石は、ようやく前向きになったようだ。

タイムスリップの分類

登山タイムスリップ
木の幹タイムスリップ
巻き戻しタイムスリップ
赤の他人タイムスリップ(今回はこれ)

主な登場人物

小学六年生
敷石和成(しきいしたかなり)
田島拓郎(デンロ―)
飯塚正人(サトちゃん)
柴犬(マイゴ)
渡来凛(わたらいりん)
渡来唯(わたらいゆい):りんの弟
カズヤ:10年後の敷石和也
杉内先生:駄菓子屋の孫

鯨井あめ さんのプロフィール

1998年生まれ。兵庫県豊岡市出身。兵庫県在住で、大学院在学中。執筆歴13年。(本書の紹介文より)

著者の作品

2015年より小説サイトに投稿を開始。2017年に『文学フリマ短編小説賞』優秀賞を受賞。2020年、第14回小説現代長編新人賞受賞作『晴れ、時々くらげを呼ぶ』でデビュー。本作が2作目となる。(本書の紹介文より)




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