悠々として急げ

 ~未知との遭遇 in books & libraries~

空席 今野 敏 竜崎署長が転勤になる。新署長の赴任が遅れ、署長不在の間に二つの事件が重なる。果たして大森署の混乱を収拾したのはやはり。。。

拙評

『竜崎署長ならどう言うだろう』
私にも、いや誰にもそう思ってしまうような頼りになる人がいる(いた)のではないだろうか。仕事でピンチになったとき、そんな風に考える。ここ大森署でも部下たちがそのような状況になっているようである。この物語の竜崎前署長は考え方が柔軟であることが強みであり、やってみなければ分からないときも、先(未来)を想像して凡人が思いつかない解決策を見つけてしまうところも強みだろう。伊達にキャリア組ではないらしい。そして女性キャリアの新署長は想像を超える美女。新署長のお手並みも拝見したいとろだが。警察における縦社会の構図が分かり易く描かれている。緊急配備をめぐる「通信指令本部」と「第二方面本部」の権力争い。そんなことをしていると犯人が逃亡してしまうぞ。少ない人員の取り合い。そこに庶民派刑事とバランス感覚を重んじるベテラン刑事との喧嘩も重なり、ただでさえ忙しい大森署は混乱する。この状況を打開すべく、警務課の刑事が離任したての竜崎元署長に助けを求める。新任署長は赴任が1日遅れるという。そう、だから署長の椅子は今日は「空席」なのである。たった1日でも署長が居なくなると、警察の権力バランスがこれほど崩れるものなのか。筋違いの支援依頼だが、それを柔軟な解釈でみごとにさばく。竜崎警視長のあざやかな差配が見どころである。


主な登場人物

場所:警視庁大森署
・通信指令本部
・第二方面本部 本部長 弓削
・第二方面本部 管理官 野間崎
・大森署前署長 竜崎伸也警視長
・大森署新署長 藍本百合子警視
・大森署副署長 貝沼悦郎
・警務課 課長 斎藤治
・地域課 課長 久米政男
・生活安全課 課長 笹岡初男
・同少年係巡査 根岸紅美
・交通課
・刑事組対課 課長 関本
 同強行犯係 巡査部長 戸高善信
 同知能犯係 刑事 船井武久56歳
 同刑事庶務係
・時計詐欺犯
・ひったくり犯 前島猛28歳

 

今野敏(こんの・びん)さんのプロフィール(Amazon商品説明より)

1955年、北海道三笠市生まれ。上智大学文学部在学中の1978年『怪物が街にやってくる』で問題小説新人賞を受賞。卒業後、レコード会社勤務を経て執筆に専念。2006年『隠蔽捜査』で第27回吉川英治文学新人賞を、2008年には『果断 隠蔽捜査2』で山本周五郎賞と日本推理作家協会賞をダブル受賞。2017年には「隠蔽捜査」シリーズで第2回吉川英治文庫賞を受賞。

 

著者の作品(Amazon商品説明より)

「隠蔽捜査」「ST 警視庁科学特捜班」「東京湾臨海署安積班」など人気シリーズ多数。近著に『道標 東京湾臨海署安積班』『棲月 隠蔽捜査7』『カットバック 警視庁FCⅡ』『任俠浴場』『エムエス 継続捜査ゼミ2』など。