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銀幕のメッセージ 女子大生の桜川東子が、バーで客の会話から難解事件をみごとにひも解いてゆく。厄年トリオの会話も面白い。

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拙評

渋谷区のバー「森へ抜ける道」で繰り広げられる厄年トリオのダジャレやらツッコミやら、ギャグに言い訳、見栄など昭和の会話が続いて、なかなか事件の推理へは行かないところが、また面白いと言えよう。

とくにマスターの茶々入れは激しい。常連客二人とのトリオ漫才を見ているようである。
本格推理ファンはどう思うかですが、スナック愛好家の自分としては、この状況(カウンターでの難事件の推理と楽しい会話)は羨ましいものです。あ、スナックはママとホステスさんがいるので、客席に女性が座ることはあまりないなあ。バーにしようかな。でもカラオケができないか。
今回は、アリバイ崩しの東子の異名を持つ桜川東子(さくらがわ はるこ)に、好敵手とでもいうべき映画技師の千木良悟(ちぎらさとる)が加わり、この二人が、巷で話題となっている殺人事件について犯人を推理して突き止めてしまう。その推理を聞きたくて、警視庁の刑事が客のフリをして飲みに来るのだ。
その合間あいまにマスターやアルバイトのいるかちゃん、常連のヤクドシトリオの冗談のような会話が挟まって進行する。
会話中心で、コミカルでとても面白い。最後の「スパイはつらいよ」は、ちょっとしんみりムードもあるが、全体的に、ドリフの大爆笑でも見ているかのような感じのなか、女子大生 桜川東子の鋭い推理に吸い込まれて、あっという間に読めてしまう。

あらすじ

帝国のゴジラ

渋谷区のバー「森へ抜ける道」で、山ちゃんは「<タカバ>の社長殺人事件」について考え込んでいた。(社長の名前は、与田勲)
タカバとは、ライトセーバーのようなシグナルライトを作っている会社だ、といった説明から話が脱線して、スターウォーズの上映順の話で盛り上がっている。
結論としては、第四作 第五作 第六作 第一作 第二作 第三作の順に見ると、時系列で見られるようだ。

さて、話を戻す。途中で入店してきたイケメンの映画技師、千木良悟(ちぎらさとる)が言うには、事件の推理は100%当たると言う。
そこへ植田刑事も入店してきた。この事件は社長の自殺で解決しているが、桜川東子(さくらがわ はるこ)は、他殺の疑いを持つ。

死んだタカバの社長は、クーデターで先代の社長を追い出したらしい。それなら恨まれるか。前社長は、高庭俊哉、43歳。
ダイイングメッセージは、「国境の長いトンネルを抜けると雪国だった」、「長い」の部分だけ太字だ

専務は黒沢仁52歳で、雪国の新潟出身、かつ全社長の重鎮。容疑者だろうか。
もう一人、社員の一人に「長井歩」という人物がいる。

イケメンの映画技師の千木良悟と桜川東子が、鮮やかに事件を解決に導く。
ダイイングメッセージは、被害者の勘違いだったら。その勘違いストーリーがそれなりに説明されていく。推理力というより想像力が高いなあ。

そしてP62の、旧体制と新体制のメンバー表(下記)を参考に、誰が得をするかといった考察からみごと犯人を炙り出した。

     旧体制 → 新体制
社長    高庭 → ◆与田
社長秘書 ◆姫野 → ◆姫野
副社長  ◆与田 → ◆半崎
専務    黒沢 →  黒沢
常務   ◆半崎 → ◆長井
部長    朽木 →  朽木
課長   ◆長井
(◆:クーデター派)

よくもまあ、酒を飲みながら、バーカウンターで事件を解決されたら、植田刑事の立場がない。

崖の上のファンタジア

金曜日の夜7時、今日集まったのは、僕と千木良、植田刑事、桜川東子、マスターといるかちゃんだ。
今日の事件は「崖の上の館で若い男性が殺された事件」。
被害者は、永山雄二、28歳、長身の独身イケメン。
館のオーナー。館の名前はファンタジア館。
事件の夜、その軽井沢の館に集まったのは、被害者と<本の森>書店の昔のバイト仲間の計5人。
・甘利博、25歳、東京から、男らしいナイスガイ、大手食品会社勤務
・久野一、26歳、東京から、細身、今も<本の森>書店で働く
永山雄二、28歳、北海道から、今回館で死んだ人物
・恩納修三、30歳、福岡から、小柄、冴えない眼鏡男、フリーター
・女川繁、42歳、大阪から、TV番組の制作会社勤務
そして、館の女管理人の川口リン、32歳

動機などを話していくうちに、植田刑事が大切なことを言った。
実は、三年前に、「窃盗を苦にして」自殺したバイト仲間がいる。
安西五和子(あんざいさわこ)さんという。
当時、金庫の管理担当は、甘利だったが、安西さんに任せていたいう。

安西さんの生活の変化などから、真実に迫っていく。またしても東子さんの鋭い洞察力が披露される。

スパイはつらいよ

三日前に山内が亡くなった。
でも、十三日の金曜日、僕はいつものバーにやってきた。
山内は映画館で映画を見ていて、突然立ち上がり、スクリーンに飛び込んで、そして時空を超えたかのように、映画館から一駅離れた街の路上で発見された。
常連のみんなは、スミノフを飲んでいる。
おつまみは、ピロシキ。いま、大変なことになっているウクライナやベラルーシ、ロシアなどで好まれている、日本の惣菜パンのようなものだ。

山内がスクリーンに飛び込んだ時、上映していたのは「男はつらいよ」の四十七作目でした。
山内と僕は、かつて宝石窃盗事件を起こし、服役した経験がある。なんと、このバーには前科者と刑事が集まっているというわけだ。

映画館でスクリーンに飛び込んだ人を、山内氏だと分かる観客がいるのだろうか。
ついに、東子さんの推理がさく裂する!
バーカウンターで、刑事の植田を挟んだ攻防はいかに。。。

主な登場人物

渋谷区のバー「森へ抜ける道」にて

厄年トリオ(ヤ:山内、クド:工藤、シ:島)
├マスター(島)
│  小太り、細いたれ目
├山ちゃん(山内)、職業不詳
│  背が高くて痩せているが筋肉男
│  妻子とは別居中、酒は弱い
└僕(工藤)
   元刑事、今私立探偵
   中肉中背、特徴なし

バーの常連
├いるかちゃん(阪東いるか)
│  OL、金曜だけバイト、二十歳程
│  細いがグラマラス、ボブカット
├桜川東子(さくらがわ はるこ)
│  女子大学院生、メルヘンの研究
│  深窓の令嬢、めっぽう酒に強い
│  アリバイ崩しの東子の異名を持つ
├千木良悟(ちぎらさとる)
│  渋谷のバトー館の映画技師
│  推理は100%当たるという
│  好きな映画は「宝石泥棒」
│  父は元宝石商
├植田刑事(警視庁勤務)
│  五十歳くらい、小柄、頭髪は薄い
│  銀縁眼鏡
└渡辺みさと刑事(警視庁勤務)
   うら若き女刑事

鯨 統一郎さんのプロフィール(本書の紹介文より)

1998年、『邪馬台国はどこですか?』でデビュー。傑作・怪作・奇作・話題作を連発する。本格推理会隋一のトリックスター。

著者の作品(本書の紹介文より)

近著に『歴史はバーで作られる』『歴女美人探偵アルキメデス』『タイムスリップ信長vs.三国志』『ただいま家事見習い中』『女子大生つぐみと古事記の謎』

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この記事を書いた人

ソフトウェア会社サラリーマン。書店や図書館で見つけた本の読書録を残したいと考えブログに書いています。ミステリー、時代小説、資格維持のための教養本などジャンルを問わずに読んでいます。読書録に加えてちょっとしたアイデアなども書けたらと思います。

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