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ミステリー・オーバードーズ 白井智之 ミステリーとSFとグロテスクで盛りだくさん

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目次

拙評

謎(ミステリー)の過剰摂取

全体としては、なかなかゲロいのに、しっかりとミステリー仕立てである。

何回も読まないと分からないほど難解である。が、文章は読み易く内容に集中できる。文学小説とは違い、クイズ小説なので、違う脳を使う必要があり、ミステリーファンにとっては望むところである。

まず、最初の「グルメ探偵が消えた」では、舞台がロンドン(という外国)で登場人物も外人の名前なので、わたしはやや苦手だ。この記事の下の方に登場人物を載せておいたから、それを見ながら読んでもいいだろう。

さて、グルメ探偵が消えたのだが、この理由と殺しの真犯人に辿り着くのは容易ではない。気がついたとき、あなたの人生は終わりかも知れない。

つぎの「げろがげり、げりがげろ」は、ほんとうに吐きたくなるような話だ。そんなことになってたまるか!という設定である。あー気持ち悪い。

「春香さんが殺された時刻、トラックの近くにおり、かつカードキーを持っていたのはあなただけです。・・・」気絶していたオレが目を覚ますと異世界!

異世界転生もの、グロテスクもの、ミステリーものがミックスされているので、やや濃いめの食事を取ったあとのような感じになる。

三つ目の「となりの部屋の女」も、なかなかオーバードーズな感じである。
それにしても、作者は「ドアノブを捻る」のが好きなようだ。
ミステリーに部屋とドアノブはつきものか。
わたし、は誰? ま、そこがポイントなんだけど。
誰が、まともなやつか最後は分からなくなる。
犯罪は偶然がお膳立てしてくれるもののようでもある。
ここに描かれている犯罪者の身の処し方は、犯罪者が平然とうまく生き延びる方法のひとつかもしれない。
とは言え、殺した牛をちゃんと食べるように、殺した人間をちゃんと食べると言う点と、しっかりどのように調理したかまで描くのはやりすぎではないか。さっき食べた晩御飯が食道を這い上がって来そうなミステリー(?)である。

四つ目の「ちびまんとジャンボ」は、フナムシの大食い大会という、おぞましいイベントで幕を開ける。
わたしは、ゴキブリの次くらいに、このフナムシは嫌いだ。同じ甲殻類のエビは好きなのだが。。。
フナムシだけでもゲロいのに、大食い大会では、ゲロタイムまで有って、とっても悪趣味である。
この話でのミステリーは、誰が犯人で、いつ毒を盛ったのかという点である。
犯人捜しに奔走する「肉汁すすむ」の命がけの活躍を楽しんでください。
ゲロっ。。。

最後は、「ディティクティブ・オーバードーズ」。探偵がゲロするのか?と思いながら読み始めたが、こちらはそのような趣味趣向は無いようだ。

とは言え、謎解きにSF的要素が加わり、それならなんでもできるじゃないかと思いつつも、最後は13歳の大人びた少女が、探偵らがノートに書き残したことを、事実幻覚と虚偽幻覚、AからDの四つの事象、記述者のペアで分類した表を使って、AからDの四つの事象が、事実幻覚か虚偽幻覚かを仮定して、記述者(探偵ら)との関係から犯人を絞り込んでいくのだが、数学が苦手な人には、頭が痛いのではないかと思う。

あらすじ

グルメ探偵が消えた

27年前の学生時代、ティムとアレックスとサイーフは、ハンガー・リリーフ・アクション(HRA:国際協力団体、ロンドン拠点)でインターン経験を積み、MP供給所を開設したところ、ギャングに襲われた。

最近、アレックスが行方不明になったが、同じころ、街で当時のギャングのラスティ(汚れたホルヘ)を見かけたことから、次に狙われるのは自分たちではないかと、ティムとサイーフは思い始めた。

そして、ついにアレックスは交通事故で偶然?死んでしまった。
葬儀には、ティムひとりで参列した。

ティムの心配を、サイーフは解いて見せた。ギャングの娘が何者かにレイプされ電車に投げ込まれて轢かれて死んだらしい。

ザンビアのギャングには同害報復の思想があるらしいから、ギャングはそのためにやってきただけだから心配ないと言うが、ティムには信じられない。

なぜなら、ティムにはギャングに襲われるだけの理由があることを分かっていたから。
このあとの展開は、あまり見たことがない。

げろがげり、げりがげろ

題名の意味が分からなくて調べたが、うまくヒットしない。仕方がないので読み進めて行くと、ようやくわかるが、この世界観はやめてほしい。ミステリーというよりはオカルト的だ。健康診断のときのあれを思い出してしまった。自分の糞でさえ、えずくのに。

設定は好みではないが、二つの世界を交えたアリバイ、入れ替わりの認識誤りなどが重なって、かなり難解なイメージだ。とても想像力を要求されるストーリーです。

この状況を利用して商売をしているイチジクさんは逞しい商魂の持ち主であり、二つの世界が重なる時がわかる特技が物心ついたころからあったというのは少し出来すぎだが、こうしないと転生仲間の春日部のところの話につながらない。

真相解明のところは、主人公の推理力、注意力の高さ、車の座席の高さに依存しているが、なるほどと思わせられるので問題ない。

最後の廣野の行動によって、春香の想いは達成されたと言うべきだろうか。
たぶん、どちらの世界の夏希(春香の妹)も前よりは幸せになったと信じよう。

隣の部屋の女

結婚三年目の梨沙子は、夫の秀樹の勧めで、良く知らない園畑のマンション「グリーンテラス園畑」に引っ越してきた。

梨沙子は、海側の景色を見て驚く。無骨な金属とコンクリートの工場群が立ち並び、煙突からは黒煙が絶え間なく吹き出ていた。 加えて眼下の川向うは、背の低いトタン屋根の小屋のような貧乏住居が並んでいて、梨沙子は言いようのない不安を感じた。しかも現在妊娠中である。

そんな梨沙子が園畑総合病院からの帰り道、男に付けられる。ある日、マンションで待ち伏せされた梨沙子を隣の部屋の女が助けてくれた。
そのあと、梨沙子は、「隣の部屋の女がさらわれる」のを目撃した。

梨沙子は、夫が止めるのも聞かずに、身重の状態で、隣の部屋の女がさらわれたと思われるアパートに乗り込んでいくが、意外な真相とそのあとに意外な結末が待っていた。

だが、グリーンテラス園畑で「わたし」が女を殺害したときの記述が、あとになって、犯人と被害者が、逆に読めてしまう。ここの記述が後では全く無視されているような気がする。

これを難解というなら、詐欺的でさえあると思うが、私の脳が着いて行けないだけか!?

ちびまんとジャンボ

「もぐもく興行」の事務所の役員は、通称団子三兄弟とよばれるデブの「もぐら」、「もぐり」、「もぐる」の三人である。

もぐらは長男
もぐりは、次男で医学部の秀才
もぐるは、三男で大食い糖尿モンスター;ジャンボSP!
ちびまんは、揚げ饅頭屋が生んだ食いしん坊ムスメ

「もぐもく興行」が主催する早食い大会の決勝で、ジャンボSPとちびまんがフナムシの大食い対決をやったのだが、途中でちびまんがゲロを吐いて負けとなり、そのままゲロの中で動かなくなった。

そう、女性タレントの「ちびまん」は、テレビの番組の早食い大会で、フナムシを喉に詰まらせ死んでしまったのである。

おれこと、「肉汁すすむ」は、クイズ番組の司会者だが、今、三兄弟にしばかれている。明日までに、ちびまんを殺した犯人を捕まえないと、殺すと脅されている。

そこで、すすむは、中学の同級生で弁理士になった馬喰山に助けを求めるが、相手にしてくれなかった。くやしいので、「生き延びてお前の愛人の尻にフナムシを突っ込んでやる」と捨て台詞を吐いたのだった。

仕方なく、自力で観客の中から犯人をでっちあげようとスキヤキビルで調べていると、犯人を知っているという週刊誌記者の女、真野マリアが現れた。

この女の推理(妄想)と取った行動が、思わぬ方向へと事態を進行させる。

ディティクティブ・オーバードーズ

Ⅰマーダーケース

殺人事件

篤美厚と泉田真理は、車で白龍館へ向かう途中、午後4時30分ごろ、地震に見舞われた。

篤美は歌舞伎町で探偵業を営み、とても忙しくて目が回っているときに、昔の探偵仲間の滝野秋央から手紙が届いた。渥美らは逆恨みで殺された探偵・白川龍馬の弟子であったが、白川の没後10年を期に集まろうということになった。

集合時間になっても、白龍館のドアが開かないので、窓から侵入すると、白川の甥の百谷が殺されていた。

Ⅱディティクティブ・オーバードーズ

探偵過量

白龍館に早く着き過ぎた犯人は、白川の甥の百谷がうまそうに葉巻を吸っている姿に殺意を覚えたのだった。

探偵が集まってくるというのに、犯人は罪を犯してしまった。

しかたがない。犯人は集まってくる探偵らを皆殺しにしようと作戦を考えた。LSDをワインに混入し、混沌としている間に、地震で毒ガスが吹き出ている外の空気を室内へ流入させて全員を死に至らしめる、という計画だ。

探偵たちは、この中に犯人がいると推理し、各自ノートに分かったことを書いて金庫にしまっておこうというルールを設けた。これなら誰かが殺されても犯人を割り出せるからだ。

まずは、篤美厚のノートだが、「百谷朝人は生きている」と書いていた。これはLSDで幻覚を見せられているので、犯人ではないと推察する。

亜空間に、白川龍馬を10年も隠して、今回取り出したという説を述べている。LSDのせいで幻覚をみたのだろう。
つぎに、滝野秋央のノートである。彼の説は、犯人は時間トラベラーというものだった。SFだ。
そして、泉田真理のノートには、宇宙意志がはたらき、遠心力を利用して殺害したと書かれている。宗教的だ。
釧のノートには、推理ではなく、訳の分からない物語が綴られていた。

弟子たちの集団と全員で一人の白川龍馬だったという話で、仲間外れの百谷さんが排除されたと考えている。
泉田真理の脳を啜ったが、おいしくなかった、とか書いている。何だこりゃ?オカルトだ。

Ⅲフーダニット・オーバードーズ

Who has done it? の 口語的な省略形が、フーダニット。
犯罪を扱った小説や映画で,最後まで犯人がわからないようにしてあるもの。

岡下収と姪の「いろり」は、二日遅れで白龍館に到着すると、玄関に篤美厚が倒れて死んでいるのを発見する。見渡すと、全員死んでいる。

なんと、この事件は、岡下の姪の「いろり」が謎解きをする。
どうやってかは、拙評のところで書いたとおり。

最後は、SF的にトンズラだ!

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主な登場人物

グルメ探偵が消えた

ロンドン警視庁
エドガー警部

ケンブリッジ大学セント・ジョンズ・Co.
アレックス・ワトキンス: グルメ探偵
ティム・ファインズ 小説家
アレックスの助手の経験あり
サイーフ・ティワーリー、インド貴族

バンガロー全焼事件
殺された五橋次郎は寿司職人
トニー・トッドが犯人で、ティムの恋人
ベバリー・サン

ハンガー・リリーフ・アクション
(HRA:国際協力団体、ロンドン拠点)
親友三人組は、ここでインターン経験
MP:メチル化プラリドキシム供給所開設
ギャングのラスティがMP供給所に侵入
して、ティムは記憶障害となった

チャリング・クロスのレストラン
(コヴェントガーデンのパブ)
ラスティ(汚れたホルヘ) 老人 顔に
ベイクドビーンズの無数のタトゥー
クラウス C&K開発 ラスティに食料輸
送ではめられた、義足

げろがげり、げりがげろ

省略

隣の部屋の女

グリーンテラス園畑
田代梨沙子 702号室 妊娠五カ月目
田代秀樹 梨沙子の夫
東条桃香 701号室 水商売っぽい

アパート スピカ園畑
佐川茜さん 201号室 心臓に持病
具合が悪そう 右の瞼の古傷

ちびまんとジャンボ

省略

ディティクティブ・オーバードーズ

白川龍馬 探偵の恩師
丸山周(龍馬を殺した人)
百谷朝人 白川の甥 殺害される。

白川龍馬の弟子たち
篤美厚
泉田真理 東大大学院卒 血が苦手
滝野秋央 190㎝
釧邦子
岡下収、姪のいろり

白井智之さんのプロフィール(本書の紹介文より)

1990年、千葉県印西市生まれ。東北大学法学部卒業。第34回横溝正史ミステリー大賞の最終候補作『人間の顔は食べづらい』で、2014年にデビュー。‘15年に刊行した『東京結合人間』が第69回日本推理作家協会賞(長編及び連作短篇編集部門)候補、’16年に刊行した『おやすみ人面瘡』が第17回本格ミステリ大賞候補となる。

著者の作品(本書の紹介文より)

『少女を殺す100の方法』『お前の彼女は二階で茹で死に』『そして誰も死ななかった』『名探偵のはらわた』がある。

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