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ドローン・スクランブル 未須本有生 ドローンをいかにして防衛省に売り込んでいくのか。ベンチャー企業の苦悩。大企業の狡猾さに驚く。

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この本を読んで、記憶のためのあらすじと感想を残しています。

目次

■未須本有生さんのプロフィール(本書の紹介文より)

1963年生まれ、長崎市出身、東京大学工学部航空学科卒業後、大手メーカーで航空機の設計に携わる。1997年よりフリーのデザイナー。

■著者の作品

推定脅威(2014年6月)、リヴィジョンA(2015年6月)、ドローン・スクランブル(2016年10月)、ファースト・エンジン(2017年5月)、絶対解答可能な理不尽すぎる謎(2018年7月)、音速の刃 (2020年6月)、オーバースペック (2019年1月号-2021年2月号 J-Wings連載)、ミステリーは非日常とともに! (2021 年5月)

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■あらすじ

航空機メーカーの基山製作所で無人機を開発する技術者の緒方は、無人偵察機を研究する中で、在原が経営するドローンを製作するベンチャーであるリモートテックにコンタクトし、ドローンを購入し試験に勤しむ。
緒方は、防衛装備庁の全体会議に出席し、典型的な小役人である保坂技官にドローンの市場調査をやってほしいとお願いされる。

また、航空機メーカーの三友重工の内山田は、民間ヘリ部門の国内シェアが1位ではないのはけしからんという社長の気まぐれから、民間向けのヘリコプターの市場調査を命じられる。

そして、もう1つの航空機メーカーの四星工業では、三友重工に戦闘機の市場を奪われそうなため、技術管理室の永田とその部下の沢本は自社戦闘機の新たな運用のアイデアを出すよう命じられる。

在原は、基山製作所とコンタクトをするうちに、基山を仲介して防衛省とつながるより、直接取引した方が利益もけた違いになると考えついて、防衛装備庁にドローンを売り込んだ。

その後、防衛省からなんの反応もなく、あきらめかけていた在原であったが、緒方が、防衛省のドローンの研究を担当することになったと聞き、試験内容の概要を確認して驚くとともに役人に対しての憤りが湧いた。なぜなら、その試験内容は在原が防衛装備庁に提出したものと飛行速度以外は全く同じだったからだ。

ここに、規模の違う三つの航空機メーカーと顧客の防衛省、そしてドローンを製作するベンチャーであるリモートテックという役者が揃った。

果たして彼らは自社の課題を解決できるのか。東京大学工学部航空科学科を卒業し、作家になる前は大手メーカーで航空機の設計を行っていた著者が、航空力学を駆使してドローンの強みの活用や弱点の解決方法を登場人物らに語らせる。

そして、ついに防衛省敷地内に民製ドローンの侵入を許すという事件が起こる。これに立ち向かう技術者たちと犯人とのドローン対決が始まる。事件が決着したそのとき、驚きの結末が用意されていた。

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■作品の背景

今、世界的にはドローンの活用により、無人配達や災害映像の撮影、観光などの宣伝の空撮等、いろいろな用途が考えられている。
一方、日本周辺の防衛という観点を常に感じ取っている航空機(戦闘機)メーカーにとっても偵察というのは重要な開発アイテムとなっている。
一般人から見ると、娯楽用のラジコンレベルの認識であったドローンに対して、性能が格段に向上した現在のドローンは、防衛省・航空機メーカーでの偵察機能開発の需要に応えるものとして現実味を帯びてきているのではないか。
著者の経歴からみても、この小説が生み出される土壌は揃っていたと言えよう。

■作品の感想

航空機メーカーの様子は、著者の経歴を見れば、かなり生々しいものだろうと想像される。航空力学の内容をドローンにどう適用していくのかという点も、素人にとっても分かり易い内容であったと思う。
技術的な内容が中心であったので、もう少し男女間の駆け引き、産業スパイ的な部分があると、よりスリリングになったかも知れない。
とはいえ、メーカーや個人事業主の立場や葛藤などが描かれており、製造業の一般的な構図を描いていて業界を知る参考になると感じた。

■主な登場人物紹介

【防衛省】航空幕僚監部
平岡 防衛部長 空将
守島 防衛部 自衛官
保坂 装備計画部 UAV(無人機)担当技官

【三友重工】東京 航空機メーカー
内山田幸介 OR(オペレーションリサーチ)グループの技術者
石橋和隆 防衛航空機部 飛行制御グループリーダー(次長格)

【基山製作所】東京 航空機メーカー
緒方知英 無人機を開発する技術者
畑仲里実 技術者。緒方の部下

【四星工業】浜松 航空機メーカー
永田昌彦 技術者
沢本由佳 技術者。永田の部下
倉崎修一 フリーランスのデザイナー(もと四星工業の技術者)

【リモートテック】(基山製作所と技術提携)
在原友耶 ドローンを製作するベンチャー、リモートテックの代表

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