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老後の資金がありません 垣谷美雨 1200万円を貯金して老後の資金は万全だったはずなのに。。。

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この本を読んで、あらすじと感想を残しています。

■垣谷美雨(かきやみう)さんのプロフィール(本書の紹介文より)
1959年生まれ、兵庫県出身、ソフトウェア会社勤務を経て、2005年「竜巻ガール」で小説推理新人賞を受賞し、デビュー。

■著者の作品(本書の紹介文より)
テレビドラマ化された「リセット」、「夫のカノジョ」の他に、「ニュータウンは黄昏て」「あなたの人生、片づけます」「子育てはもう卒業します」「if:サヨナラが言えない理由」「避難所」など著作多数。

■あらすじ
貯金して老後の備えは万全だった後藤篤子。彼女の一家に、突然老後の資金問題がふりかかる。彼女は悩んでいた。娘が派手婚を予定しており、なんと600万円もかかるという。
夫の父が亡くなる前の、夫の妹夫婦とのお金の負担に関するやり取りが、生々しい。ついに夫の父が亡くなった。
篤子は、かっこ付けて葬儀費用の負担を快諾した夫に怒りがこみ上げる。
娘の派手婚の原因は、婿とその両親だという。息子の勇人からヤバいんじゃねと言われて篤子も娘の結婚が心配になる。
ついに心配が現実のものになったか。電話の向こうで娘が暴力を受けているような音がした。
とうとう夫婦ともに失業してしまう。生活が不安になって、今まで払っていた電話や新聞まで解約する。考えてみれば、そんなもの無くても生きられる。車を手放せば、駐車場代などの維持費も不要だ。
とうとう月々の9万円の仕送りができない状況になり、義妹と大喧嘩となる。頼りにならない夫と気の強い義妹。篤子はついにお義母さんを高級老人ホームから引き取ると言い放ってしまった。1200万円あった老後資金は、気が付くと半分に!
ところが、このお義母さん、タダモノではなかった。ここからが相当面白い。わたしはこのお義母さんがとても気に入ってしまった。自分の母もこのくらいの胆力があったらなと思う。
老後をどう過ごすかという深刻な問題も、話を聞いてくれる人がいることが、一番大事なのではないかと思う。心配していたことが少しずつ解決され篤子一家にもようやく明るい兆しが見えてきたようだ。あっという間に読めるコメディだ。笑えるかな。。。

■作品の背景
2015年9月初版発行 中央公論社
2019年に金融庁が公表した、金融審議会による市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」で、「老後は2,000万円不足する」と言われて、ちょっとしたワイドショーネタになったのは記憶に新しい。
かと言って政府は何もしてくれないし、いまはコロナ対策で精いっぱいの体である。
この金融庁の報告には私も心細くなってしまった。
貯金などほぼないし、住宅ローンも残っているのだ。年金だけでは何万円も不足するような話だったと思う。
このような世相に金融庁の発表前に気づいた著者は、それをネタとした小説を創作したのだ。でも、最後はコミカルに描いて、「なんとかなるさ」と言いたかった感じになっているので救いがあるかもしれない。(現実はこうはいかない。。。)

■作品の感想
作品中で、次のセリフが心に突き刺さった。
『若い頃と違って、その場しのぎの言葉で取り繕うことができるようになった。だが、寛容を装うことがうまくなっただけで、心の中は年齢とともにどんどん狭量になっている。』
たしかにそんな気がする。
我が家も似たようなもので、とても共感を持って読むことができた。
けれど、篤子さんのお義母様のように行動することはできないなあ。

■主な登場人物
・後藤篤子 実家は山陰地方の城下町 自分は自分、人は人と考えている。
・篤子の夫 章さん 定年まであと三年 中堅の建設会社勤務
・篤子の娘 さやか 28才 もうすぐ結婚するらしい。
・篤子の息子 勇人 大学四年生
・章さんのご両親
・さやかの婚約者の琢磨 商社サラリーマン
・さやかの婚約者の両親 岐阜でスーパーマーケット経営
・さやかの婚約者の姉  優秀でアメリカの大学を出てネット販売会社を起業
・篤子の友人のサツキさん 奄美大島生まれ 篤子より2才年下 夫婦でパン屋経営
・サツキさんの長男 消防士で結婚が決まった
・サツキさんの長女 歯科衛生
・サツキさんの次女 看護師

■物語の設定など
・篤子は、娘の結婚式に親として600万円も出すことを納得していない。
・篤子の子ども二人は私立大学卒業
・後藤家には1200万円の預金あり。
・住宅ローンもあと二年で終わる。
・夫の両親への仕送りが月々9万円できつい。しかも高級老人ホームに住んでいるらしい。篤子はこれがまた気に入らない。
・フラワーアレンジメント教室の仲間であるサツキさんの家族は篤子から見るとうらやましい。

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