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社員参謀! 人と組織をつくる実践ストーリー 荻阪哲雄 日経新聞出版社 2016.6.24初版発行

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イントロ

役員昇進間際での関連会社出向の辞令! なぜ?
M&A戦略で合併した関連会社で、ひとりの男の出世の道が閉ざされた。
この小説では、そんな男が、いろんな人々の支援を受けて「新しい組織開発の実践」を行う。
まず、「草の根リーダーシップ」を広げる手立てを打つ。

トップ・リーダーの認識を変え、自分の認識も変えて、リーダーの言葉が社員に届く、組織文化が
変わる実践の様子がありありと描かれています。

社員参謀 荻阪哲雄

第1章 姿晋介、出向を命ず!

こだわった「役職の昇進」から人としての「成長の昇進」へ
トップ・リーダーこそが新しい組織開発の責任を担う
組織開発室(スタッフ部門)の仕事:直接的利益を生み出す実践者を間接的に支えること。

なぜ組織開発の立ち上げがうまくいかないのか ―三つのパターン
・トップと補佐役が対立し合う(組織開発に社長の意欲がない、対立と不信の景色)
・組織開発と利益計画を計画段階で無理に結びつける(形式的な報告:数字の辻褄合わせ、受け身の現場)
 ➩働く従業員の受け身の総量が増える時、継続的な利益は生まれない。
 ➩押し付けの計画、操作はせず、従業員の自発性に基づいた実践の力を育てることが組織開発の基本
  (顧客を見つめ、役立つ行動を増やし、業績の向上を助ける)
 ➩働く組織は、人間の感情で動くから主体的行動は、職務規定と管理スパンだけでは生み出せない。
・トップと役員が組織開発を率先して進めない(部下や現場まかせでは、反感を持たれるだけ)
 ⇒経営にとっての組織開発とは、「会社中心に管理・合理性だけを追求するさせ方」から「顧客中心に創造・自発性・援助を育てる仕事のさせ方」へと組織を開発していくこと。

ゆえに、組織開発は、経営開発(経営を担う役員から自発的に、仕事を通して、組織開発の実践を始めること)から始めなければならない。
説得ではなく、共感を得られるロジックが必要!
社員は、この二十年間、何度も変革というメッセージを聴き、取り組んでも取り組まなくても何も変わらないことを経験しているから、トップの変革メッセージから始めるというやり方ではうまくいかない。

社員参謀 荻阪哲雄



経営決断と組織開発を繋げる「実践のロジック」とは?
・経営成果の絵と、組織開発の実践を、どう描き、繋げるのか? → 役員の一人ひとりが、従業員の“貢献感”を見つめること。働き甲斐の意欲を生み出す。*1
・トップの決断を、組織開発構想に、どのように結びつけるのか?
・組織開発の実践を通して、自分自身をどう見つめるのか?

組織開発の七つの働きかけ(ダイアード)技法:相手の状況とタイミングに合わせて行う
・浄化:相手の初対面の緊張を、解きほぐしてくれる
・傾聴:相手の探求心を受け止め、聴いてくれる
・触媒:相手の考えを深める問いかけを投げかけ、変化を支えてくれる
・称賛:相手の長所を、言葉にして讃えてくれる
・激励:相手の学びを広げて、自身をつけてくれる
・助言:相手の補足点をフィードバックして協働を促す
・抽出:相手の話の本質を掴み、整理して言葉にしてくれる

最も大切な組織開発の考え方は、「アクション・リサーチ」:なぜなら、行動を起こさないと問題は解決しないから。
・仮説を持ち、先に行動を起こす一手を打つ
・その実践結果から、生まれる状況を見る
・その状況を見つめながら、再び、次の最善手を打つ

社員参謀 荻阪哲雄
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第2章 「最大の宿敵」から「最高の戦友」へ

合併後にトップがやったのは、コスト削減、人員整理、構造のスリム化、オペレーションの改善などのフォーマルな仕組みの変革。
今後やるべきは、インフォーマル組織を動かして、合併した会社に方向性を与え、従業員の協働の意欲を高め、業績を向上させること。

目に見えない資本:知識、関係、信頼、評判、文化、共感

具体的なアクションは?
・取締役から組織開発を進め、従業員の仕事のさせ方を変える。
 ➩なぜなら、従業員の仕事のさせ方は、取締役の仕事(本社中心)のやり方から生まれているから。
  これを、「顧客中心」に変える!ことで、組織文化は変わる!
  個別ライン部門で事業計画に基づいて動くだけでは足りない。収益管理だけでは足りない。
 ➩それにより、助け合う組織文化を創造、蓄積していく

組織開発の実践とは、経営者の決断であり覚悟である。
会社の存在意義と未来の目的地を、組織開発を通して、仕事の意志決定基準へ変えるというのが、組織開発の本質である。
そして、この実践を運用するノウハウは、まだない!? ➩ だから、組織開発の軍師を招へいする。

「役員主導の組織開発アプローチ論」の講演を依頼することになる。
講演テーマは、「なぜ、経営施策は浸透しないのか? 役員主導で立ち上げる組織開発アプローチ」

図2 経営施策が浸透していかない企業組織の10の問題
・創るステージ
 壁①策定の問題:ビジョンを創ることが目的化し、形だけのビジョンになっている。
 壁②確信の問題:上司と部下でビジョンを実現していくことを信じられない。
 壁③伝達の問題:当事者でない人(外部業者・スタッフ)がビジョンを創り、語り、行動させようとする。
・語るステージ
 壁④記憶の問題:ビジョンを自分の頭で憶えていない。
 壁⑤仕事の問題:④のため、リーダーが自分自身でビジョンを仕事に変えていけない。
 壁⑥挑戦の問題:形式だけのビジョン運動となり、行動をやめてしまう。
・行うステージ
 壁⑦基準の問題:ビジョン(未来の目的地)を、仕事の「意思決定の基準」に変えることができていない。
 壁⑧援助の問題:上司や同僚との「繋がり」が薄く、ビジョンを「基準にしない」「承認しない」「助けない」となり、経営ビジョンが従業員に届かない。
 壁⑨反省の問題:PDCAを回せと部下に言うが、上司のCができていない
・壁⑩信頼の問題:ものが言えて訊ける(尋ねられる)つながりがない

役員の自分自身の開発が、組織開発の決め手になる。
役員が人間の成長を断念したとき、部下からはその動きがよく見えて、リスクを取って動く行動が減少する。

人間の成長と利益の向上はどうつながるのか?
・働きがいの向上 → 組織結束力の強化 → 顧客への貢献 → 利益の向上 → 従業員に還元

社員参謀 荻阪哲雄


役員の一人ひとりが、従業員の“貢献感”を見つめること。働き甲斐の意欲を生み出す。*1
そのために実践すべき三つのこと(ビジョン・インキュベーション)は、
・存在意義:迷ったときの拠りどころ
・未来の目的地:従業員が目指す北極星
・やらない戦略:上記二つのための資源配分方法

これを、外部業者やスタッフにお絵描きで作らせるのはダメ、役員が時間を作って、自らの意志を込め、トップ・リーダーが決断すべし。
より具体的な内容は、第3章の最後で。

「組織のくせ者(仕事で成果を出すが、組織の成長には興味なし)」を経営として意識しておくこと

壁①~⑤を、半年で実施する。
ビジョン・インキュベーションを伝える時の工夫は、
・考え方の工夫(フォーマル組織)
 トップの話を織り込んだ、役員一同から「新しい組織開発のトップリーダー・メッセージ」を全社へ発信する。これで、各役員自身も新しい組織開発をやらざるをえない状態となる。メッセージの発信前に役員一人ひとりと対話を重ねること。
・運用の工夫(フォーマル組織)
 トップリーダー・メッセージの発信と合わせて、フォーマル組織の各部門の運営会議で、役員や現場リーダーに、このメッセージの話を直接してもらう。
・実践の工夫(インフォーマル組織)
 第一線にいる従業員へ、組織開発室が中心となって「新しい組織開発のトップリーダー・メッセージ」を日常の言葉で、対面で届ける。

この働きかけは、トップダウンでもボトムアップでもない、その両方を結合させる「バインディング(結束)・アプローチ」という。

社員参謀 荻阪哲雄

第3章 本城恵美の真剣勝負

「社員が始める組織開発」から「役員が起こす経営開発」へ

組織開発の担当者(でさえ)、トップリーダー・メッセージを読んで、感想を聞かれるとはじめて内容が頭に入って来る、ことに気づいた。
ということは、従業員はまったく頭に残っていないだろう。
→ライン組織における上司と部下が、新しい組織開発のメッセージを読んで、感じたことを対話するとよい。
 →各事業組織における職場の「不信感からくる意見」を、受け止める必要がある。(インフォーマルの働きかけ)
  それは「その人には、できない理由を聞いて、それに歩み寄る」ことであり、そうする理由は、第一線でお客様と向き合っている社員が利益を生み出しているからである。

第2章の実践すべき三つのこと(ビジョン・インキュベーション)を進める七つの動き
・社長人格で描く(役員が社長になったつもりで、「存在意義」「未来の目的地」「やらないこと」を考え抜く)
・個別アウトプット(役員一人ひとりが自分の意見を持って、役員全体対話に臨む)
・役員対話(組織開発担当取締役との1対対話)→新しい組織開発を「役員の仕事」にする働きかけ
・衆知の結集(コンサル対役員、組織開発担当取締役対部長、組織開発担当対課長以下社員):インフォーマルの働きかけ=トップダウン
 なお、これをきっかけにフォーマルな対話が自発的に生まれるとよい:部長対課長、課長対課員=ボトムアップ
・ビジョン合意の結成
・集団アウトプット
・最終の決断


組織開発担当取締役対部長対話のやりかたの例
利益を生むには、新しい可能性(新しい顧客、新しい商品、新しい提案、部下の新しい行動)を掘り起こす、育てることが必要。
→トップ・ビジョンを「顧客中心」に自分の言葉で語り、実際にやるという文化をつくる、という行動が必要。
 信頼が必要と感じている「上司」が自ら機会を作って会うということが、組織開発の実践である。

ということを伝える。トップの考え、組織開発の経緯を伝えて、組織開発方針の信頼を得る。

顧客へのヒアリング:わが社が選ばれる理由 → 環境に配慮した開発 = 環境経営 だ!
環境経営という顧客の期待を、どのように「存在意義」「未来の目的地」に位置付けるのか?

いまだかつて、役員同士の思考、行動を仕事でつなげようなどということを真剣にやろうとして考えたことはなかった。
役員はそのような思考に慣れておらず、ビジョン・インキュベーションは、きつかったのである。

いままでの行動を変えることになるため、きついのである。

そして、ついに、実践すべき三つのこと(ビジョン・インキュベーション)が決定した。

三つの経営の方向性(ビジョン・インキュベーション)
 ・存在意義:「豊かさ」と「環境」の共生を通して、お客様のお客様に信頼される「ひと」と「ビジネス」を創る。
 ・未来の目的地:三年以内に「環境配慮」と「事業活動」を融合した組織文化を創造して「会社魅力度ナンバーワン」になる。
 ・やらない戦略:不動産事業に手を出さない、軍事材料の要請には応えない、無駄な競争はしない。

社員参謀 荻阪哲雄

第4章 眠れる獅子が目を覚ます時

役員のビジョン・インキュベーションの成果と背景を「フォーマル組織」で展開するとともに、「インフォーマル組織」でも同時展開する。
ひとりの社員として、トップの変化をどう感じたか、何を学んだかをインフォーマルで展開すれば、良い反応が得られそう。

組織開発で学び方を学ぶ実践、すなわち「草の根リーダーシップ」を広めることで、トップへの不信を払拭する。
リーダーとは、働く仲間と共に結果を導く人であり、リーダーシップとは結果を導く働きかけのことである。

バインディング・アプローチの実践開始
・役員のビジョン・インキュベーションの働き、トップの変化を通した学びの動きを、フォーマルとインフォーマル組織の両輪で従業員に広く届ける。
・新しい経営の三つの方向性について、衆知結集の機会をつくっていく。
・バインディング・アプローチを学び、実践で使えるよう各事業所への働きかけの準備をする。
そして、冷めた現場を変える!

役員一同で考えた新しい経営の方向性を、その存在意義、未来の目的地、やらない戦略に整理したが、これについてどう思うかを対話する。
トップと役員も自ら考えたものであることも伝える。

バインディング・アプローチの導入と初期の実践の三つのスタイル
・第一の実践スタイル:バインディング・アプローチ講演で「ツボ」と「コツ」を学ぶ
 「ツボ」は、「定義」である。
 ・「企業理念」は、会社の存在意義 Why
 ・「経営ビジョン」は、「未来の目的地」Where
 ・「やらない戦略」は、ビジョンを実現するために何にリソースを使わないか決めるWhat
・第二の実践スタイル:入門書、応用書の二冊を読み、「所感」を書き、内省する
 「理解」「共感」「納得」「衆智」の実践プロセス
・第三の実践スタイル:個別コンサルを受けて「自分の仕事」へ導入する
 組織とは、自分一人でできないことを、二人以上の人間の可能性を組み合わせて、実現する仕組みと文化である。
 実践者が語るより、他のメンバーが語るほうが、リーダーの言葉が届く場合がある。

社員参謀 荻阪哲雄



図5 バインディング・アプローチ実践図(個人と組織がそれぞれ、以下の六つのサイクルを回し、トップダウンとボトムアップでバインドする)
六つの実践サイクル
①創造:実践のビジョン、すなわち「未来の目的地」をつくる。これからの事業で何が起こるか。
②決断:描いたビジョンを実践するために、「やらない戦略」を決断する。
③衆智:生み出した「実践のビジョン」と「やらない戦略」をたたき台にして、従業員(とくにキーパーソン)の衆智を集めて、決めていく。
④習慣:「実践のビジョン」と「やらない戦略」をビジネス・ユニットにおいて仕事を判断(意思決定)するときの「優先基準」へと変える。
⑤支援:そのあと、実践課題を解決するため、働く組織の中で、仕事を通して「七つの役割」を組み、助け合う。
    ・突破リーダー:ビジョンの実践を決断して、メンバーを励まし、困難から逃げずに「現実を突破していく役割」
    ・作戦リーダー:先々の展開を読み、勝負の厳しさを予見し、「作戦を構築する役割」
    ・継続リーダー:粘り強く仕事の動きを商品・サービスへと仕上げる「継続を促していく役」
    ・共感リーダー:厳しい局面でも人の話をよく聴き、笑顔で接して、「共感の輪を広げる役割」
    ・仲間リーダー: 明るく声をかけて、「仲間を作り、能力を結ぶ役割」
    ・アイデア・リーダー:仕事の各論において「智恵を出す役」
    ・リスクリーダー:常に進捗管理を怠らず、立ちはだかる障害点、危機を素早く察知し、「それに備えるリスク管理の役割」
    ひとり一役ということではない。助け合う組織文化。
⑥反省:ビジネスの結果が出たとき、関わった人たちで実践を振り返り、学び合うという反省をじっくり行う。

社員参謀 荻阪哲雄

第5章 その時、三割のくせ者が動いた

インフォーマル組織で仕込んで、フォーマル組織で刈り取るのだ。
言われて変わりたくない。というくせ者ばかり。

方向性を打ち出した次の一手は、トップが変革ビジョンのメッセージを語るべし。
トップは、会社魅力度ナンバーワンへ変わるためのビジョンを語るべし。
・社員一人ひとりが会社に対する誇りを持てること。→協働へ繋がる。
・事業を通して利益を上げ、従業員の給与を上げる。
・増収増益にこだわり、利益の10%を社員に還元する。

そして、次に備えるのが、「人事登用」である。
経営決断→ビジョンの実践→人事登用を組織開発で示す!
これがなぜ、従業員の心に響くのかといえば、それまでの職業人生で、不運な人事に遭ったり、上司から梯子をはずされたりして、組織や上司に関わってもろくなことがないと自己限定していたからだ。そういうくせ者は自分の仕事に閉じこもっていた。ほんとうは仕事もできて、感性も鋭く、風向きも読めて、動きも速いのにもったいない。
それが、トップの真剣さに驚いているのだ。

メンバー・ポートフォリオの図6

強(ビジョンの実践度)お友達プロフェッショナル
弱(ビジョンの実践度)アマチュアくせ者
低(仕事のパフォーマンス度)高(仕事のパフォーマンス度)

アマチュアからお友達へ
お友達からプロフェッショナルへ

くせ者からプロフェッショナルへ
→組織へのビジョン貢献に興味が無い「くせ者」が、新たな人との出会いを通して、組織で働くすばらしさを知るとき、組織開発の突破口は開かれる。

社員参謀 荻阪哲雄

まとめ(感想)

社員が会社に文句を言うだけでは何も変わらない。
役員が、利益を出せと言うだけでは、意欲も湧かない。
三割のくせ者が変わりながら、未来の目的地へ向かって組織文化を変える実践が必要だった。
社員参謀とは、社員の身分の参謀という意味ではなく、社員のための参謀という意味であると理解したが、合っているだろうか。
そして、この物語の主役である取締役は、コンサルタントである著者のことではないかと思った。
また、この本はあとがきでも書かれているように、組織開発の歴史やこれまでの方法論、課題を扱ったものではなく、新しい組織開発の実践を、
具体的に起こして、かつそれを続けていくリーダーの働きかけ(草の根リーダーシップ)をテーマにされており、分かり易かったと思います。
なお、この物語のような組織開発のための組織を立ち上げている会社は、まだまだ少ないのではないでしょうか。
個人的には、六つの実践サイクルを頭に描きながら、残り少ないサラリーマン人生を過ごそうと思います。
一回読んで、すっかり忘れていましたが、数年ぶりに再読し、いいストーリーだと思いましたので、その物語からノウハウ部分を抽出してみました。

より理解するためには、物語として全体を読むのがいいと思います。章の最後ごとに著者によるノウハウのまとめが整理されていますので、是非手元に置いてバイブルにするのがよいと感じています。

社員参謀 荻阪哲雄

荻阪哲雄さんのプロフィール

http://www.changeartist.jp

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