はじめに
ネットでもよく見かけたので、なんだろうと思っていた本をようやく読む機会を得ました。
まず、タイトルが気になっていました。嫌われたい人などいないという思いがある一方で、
わたしも、かつて会社で憎まれ役になってくれと言われた経験もあり、そのことかなとも
考えていましたので、一般的な社会での人間関係に関する本だろうという想定をしていました。
さて、手にした本をよーく、見てみると、見えにくい文字色で、サブタイトルのようなものが
書いてあったのです。それは、
『自己啓発の源流「アドラー」の教え』でした。
なんだこれは!
表紙をめくり、その裏に書かれていたのは、
『フロイト、ユングと並び「心理学の三大巨頭」と称され、世界的名著「人を動かす」の
著者D・カーネギーなど自己啓発のメンターたちに多大な影響を与えたアルフレッド・アドラー
の思想を一冊に凝縮 !! 悩みを消し去り、幸福に生きるための具体的な「漢方薬」が、
この本にはすべて書かれている』
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むかし、フロイトとユングの講談社文庫は購入して読んだ記憶があるが、アドラーって誰だ?
哲人と青年が登場し、問答をするスタイルで、アドラー心理学について書かれているようです。
第一夜から第五夜までありますので、気になったフレーズなどを抜粋してみます。
第一夜 トラウマを否定せよ
トラウマについて
・トラウマは存在しない
「トラウマがあるからXXXだ」というのは、そう考えたい「目的」があるからだ。
われわれはみな、なにかしらの「目的」に沿って生きている。これが「目的論」である。
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トラウマが存在しないという考えには驚きます。否定しているわけではありません。
人間の防衛本能の奥深さのようなものを感じます。
そう思って生きることができれば、わたしもいくつかのことから救われそうです。
おっと、救われるなんてことをいうと、宗教的でさえあります。
気を付けて洗脳されないように読み進めます。
感情の支配について
・人は怒りを捏造する
あなたは、感情の爆発として大声を出したのではなく、彼を支配したいという「目的」のために
その手段として「怒りという感情を捏造」し、大声を出したに過ぎない。
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なんという新しい視点でしょう。そう考えたら怒りはコントロールできそうな気がしてきます。
・過去に支配されない生き方
「人は感情に支配されない」、「過去にも支配されない」
原因論の住人は、過去に縛られたまま、この先ずっと幸せになれなくなる。
「人は変われる」を前提に考えよ。
これと対極にあるのが、フロイトの「原因論」である。
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原因のひとつがトラウマということですね。
なるほど、フロイトの考え方しか知らなかった私も、それに対抗する考え方を知って、視野は広くなったような気がします。まだ、自分はどちらだとは分からないですが。
・ライフスタイルについて
・人は常に「変わらない」という決心をしている
アドラー心理学では、人生における、思考や気質のことを「ライフスタイル」という。
あなたは、あなたのライフスタイルを自ら選んだのです。
あなたが変われないのは、自らに対して「変わらない」と決心しているからである。そのほうが、楽だから。
「ライフスタイル」を変えるときに、われわれには大きな「勇気」が必要となる。
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おっ、ここで「勇気」と言う言葉が来たあー!
第二夜 すべての悩みは対人関係
自分の短所について
・なぜあなたは自分が嫌いなのか?
それは、あなたが他者から嫌われ、対人関係の中で傷つくことを過剰に恐れているからです。
劣等感が行き過ぎると、劣等コンプレックスになる。
劣等感について
・劣等感は、主観的な思い込み
われわれを苦しめる劣等感は、「客観的な事実」ではなく、「主観的な解釈」である。
高値で取引されるダイヤモンドだって、見方を変えれば、ただの石ころです。
優越コンプレックスについて
・自慢する人は、劣等感を感じている
それは「優越コンプレックス」、あたかも自分が優れているかのように振る舞い、偽りの優越感に浸る。
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テレビのクイズ番組で、高学歴の回答者より早く正解を導き出して、「俺の方が賢いぜ!」と喜んでいる私もそうなのかも知れない。過去の自慢話も。
劣等感そのものを先鋭化した特異な優越感の事例に「不幸自慢」がある。
不幸であるという一点において、人の上に立とうとします。自らの不幸を武器に、相手を支配しようとする。
ひきこもりもそうで、家族への復讐とのこと。
敵と仲間について
・お前の顔を気にしているのはお前だけ
対人関係の軸に「競争」がなければ、他人は仲間にさえなる。
そうすれば、世界の見え方はまったく違ったものになる。
権力争いについて
怒りとはコミュニケーションの一形態であり、怒りを使わないコミュニケーションは可能である。
自分が正しいと思ったら、そこで完結すること。自分が正しいと思って相手を非難しないようにしよう。
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理屈には賛同できるが、実際には「かっとなる」ことをゼロにはできないと思う。
人生のタスクについて
・直面する「人生のタスク」をどう乗り越えるか
どうしてあなたが他者を「敵」だと見なし、「仲間」だと思えないのか。それは、勇気をくじかれたあなたが、
「人生のタスク」から逃げているせいです。
アドラー心理学では、人間の行動面と心理面のあり方について、目標を掲げている。
行動面の目標:「自立すること」、「社会と調和して暮らせること」のふたつ。
心理面の目標:「わたしには能力がある」という意識、「人々はわたしの仲間である」という意識
これらは、「人生のタスク」と向き合うことで達成できる。
人生のタスクとは、「仕事のタスク」「交友のタスク」「愛のタスク」
「仕事のタスク」は、対人関係、ひとりで完結する仕事などありません。
「交友のタスク」は、仕事を離れた友人関係を築くこと。
「愛のタスク」は、恋愛関係と親子関係。このひとといるときわめて自然な状態でいられること。相手を束縛(支配しようと)しない。
・「人生の嘘」から目を逸らすな
アドラーは、さまざまな口実を設けて人生のタスクを回避しようとする事態を「人生の嘘」と呼んだ。
そして、アドラーは「人生の嘘」について、善悪でも道徳でもなく、「勇気」の問題だと言っています。
アドラー心理学は、「勇気の心理学」である。そして「所有の心理学」ではなく、「使用の心理学」である。
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「なにが与えられているかではなく、与えられたものをどう使うか」
この言葉も、考えさせられる言葉です。
若者は、自分の「人生の嘘」について認めますが、「勇気」の問題というなら、それは単なる精神論だと反論します。
さて、次の夜は、どうしたらよいかの具体論に入るようです。
第三夜 他者の課題を切り捨てる
承認欲求について
①承認欲求を否定する
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アドラー心理学の大前提とのことですが、このタイトルも衝撃です。
②「あの人」の期待を満たすために生きてはいけない
承認欲求の多くは、賞罰教育の影響である。我々は他者の欲求を満たすために生きているのではないし、その必要もない。
他者の欲求を満たそうとすると他者の人生を生きていることになってしまう。それでは幸福を実感できないはず。
ではどうしたらいいのか?
次へ進みます。
課題の分離について
①課題の分離とは何か
われわれは「これは誰の課題なのか?」という視点から、自分の課題と他者の課題とを分離していく必要がある。
馬を水辺に連れて行くことはできるが、水を呑ませることは出来ない、ということわざと同じスタンスである。
②他者の課題を切り捨てよ
子どものひきこもりの例
「ここから先は自分の課題ではない」という境界線を知りましょう。
そして他者の課題は切り捨てる。それが人生の荷物を軽くし、人生をシンプルなものにする第一歩である。
嫌われる勇気について
①承認欲求は不自由を強いる
たしかに、他者の期待を満たすように生きることは、楽なものでしょう。
でも、自分で決めようとすれば、迷いがでてくる。
②本当の自由とはなにか
対人関係から解放されることを求めるなら、言えることは「自由とは、他者から嫌われることである。」
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これまた、衝撃です。が、その説明の論理は分かり易い。
できれば承認欲求を満たしたいけど。
でも、すべての人から嫌われないように立ち回る生き方は、不自由きわまりないし、不可能だ。
自由を行使したければコストが伴う。そして、対人関係における自由のコストとは、他者から嫌われることである。
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なるほど。 つまり、「嫌われることを恐れるな」ということかな。
対人関係のカードについて
・対人関係のカードは、「わたし」が握っている
第四夜 世界の中心はどこにあるか
個人心理学について
・個人心理学と全体論
人間をこれ以上分割できない存在だと捉え、「全体としてのわたし」を考えることを「全体論」と呼ぶ。
共同体感覚について
・対人関係のゴールは「共同体感覚」
他者を仲間だと見なし、そこに「自分の居場所がある」と感じられることを、共同体感覚という。
アドラーの言う共同体とは、家庭や学校、職場、地域社会だけでなく、国家、人類、動物、無生物、過去から未来までを含む。
共同体感覚とは、幸福なる対人関係のあり方を考える重要な指標で、その最小単位は「わたしとあなた」である。
ここを起点として、自己への執着を、他者への関心に切り替えていくことで、共同体感覚が理解できるかもしれない。
自己中心的について
・なぜ「わたし」にしか関心がないのか
自己中心的な人:暴君、集団の和を乱す人、「課題の分離」ができず、承認欲求にとらわれている人(は、自分のことしか見ていない)
・あなたは世界の中心ではない
「わたし」は、世界の中心に君臨しているのではない。「わたし」は、人生の主人公でありながら、あくまでも共同体の一員であり、全体の一部である。
各国の世界地図を見れば、それが分かる。
所属感を得るためには、共同体に対して自らが積極的にコミットする必要があり、「人生のタスク」に立ち向かうことです。
「この人はわたしに何を与えてくれるか?」ではなく、「わたしはこの人に何を与えられるか?」を考えなければならない。
複数の共同体について
・より大きな共同体の声を聴け
学校という(小さな)共同体のコモンセンスで物事を判断せず、たとえば「人間社会」という共同体で考えるとよい。
目の前の小さな共同体に固執せず、ほかを捜そう。
横の関係について
・叱ってはいけない、ほめてもいけない
「課題の分離」から「共同体感覚」へ進む方法は、叱らずほめず(上からではなく横の関係で)。
なぜなら、ほめる・叱るというのは、上から目線で、そこには感謝も尊敬も存在しないから。
縦の関係ではなく、横の関係「同じではないけれど対等」で。
勇気づけについて
・「勇気づけ」というアプローチ
「勇気づけ」は、「馬を水辺に連れて行くことはできるが、水を呑ませることは出来ない」というアプローチと同じ。
・自分には価値があると思えるために
横の関係に基づく勇気づけのアプローチは、「ありがとう」と感謝の意を伝えること。他者を評価しないこと。
そして、人は「わたしは共同体にとって有益なのだ」と思えたときにこそ、自らの価値を実感できるし、生きる勇気につながる。
第五夜 「いま、ここ」を真剣に生きる
自意識について
・過剰な自意識が、自分にブレーキをかける
そして無邪気になれない。幸福とは何か?
自己受容について
・自己肯定ではなくて、自己受容。
無邪気になれない理由は、ありのままの自分に自信を持てていないから。
無邪気になるためには、共同体感覚を持てるようになること。
必要になるのは、「自己受容」、「他者信頼」、「他者貢献」である。
自己受容:「わたし」という入れ物は交換できない。与えられたものをどう使うか。
「変えられるもの」に注目する。変えていく「勇気」を持つこと。二―バーの祈り。
他者信頼について
・信用と信頼とはなにが違うのか
他者信頼:「自己への執着」を「他者への関心」に切り替えていくときに欠かせないキーワード
信用は条件付き、信頼は条件を付けない。
他者貢献について
・仕事の本質は、他者への貢献
他者貢献:自己犠牲ではない。
誰かの役に立っていることを実感するためになされること。
・若者は大人より前を歩いている
他者を「敵」だと見なして行う貢献は偽善かもしれないが、「仲間」と見なして行えば貢献感が持てる。
アドラー心理学をほんとうに理解して、生き方まで変わるようになるには、「生きてきた年数の半分」が必要になる。
若い人ほど、早く変われる。
人生の調和について
・ワーカーホリックは人生の嘘
「仕事が忙しいから家庭を顧みる余裕がない」「誰のおかげで飯が食えると思ってるんだ」という人は、定年になって自分が子どもに扶養されるようになったとき、助けてはくれまい。
つまり「行為のレベル」ではなく「存在のレベル」で受け入れられるか、は重要である。
幸福について
・人はいま、この瞬間から幸せになることができる
貢献感が得られていれば幸福で、承認欲求は不要である。
自己実現について
・「特別な存在」でありたい人が進む、ふたつの道
他者の注目を集め、「特別な存在」になることを目的とすれば、「特別によくあろう」または「特別に悪くあろう」とする。
他者の注目を集るために非行などに走るのは「安直な優位性の追求」という。
すなわち、叱るという大人の行為は注目をあつめたことになるので、非行はさらに進むというわけ。
普通であることの勇気
・普通であることの勇気
「普通」であることはよくないのか。「普通であることの勇気」を持とう。「普通」は「無能」ではないのだから。
人生について
・人生とは連続する刹那である
人生は登山のような線ではなく、点の連続。計画的な人生など、それが必要かどうかという以前に、不可能である。
・ダンスするように生きる
ダンスを踊っている「いま、ここ」が充実していればそれでいい。
踊ることそれ自体が目的であって、ダンスによってどこかに到達しようとは誰も思わない。
結果としてどこかに到達することはある。
・「いま、ここ」に強烈なスポットライトを当てよ
たしかに過去は変えられない。でも計画性を否定したら未来も見えない。「いま、ここ」だけを真剣に生きればいい。
人生を物語に見立てれば、ぼんやりと先がみえる。そうするとその物語に沿った生を送ろうとする。人生の嘘です。
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だんだん宗教的になってきたような。。。
・人生最大の嘘
それは、「いま、ここ」を真剣に生きないこと。
・無意味な人生に「意味」を与えよ
人生の意味とは何か? アドラーの答えは「一般的な人生の意味はない」というもの。
自由を選ぼうとしたとき、道に迷う。自由なる人生の大きな指針は「導きの星」すなわち「他者貢献」である。
これを見失わないかぎり、つねに幸福である。
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幸福や自由のためには「他者貢献」という「献金」をしたくなるような教義に応用されそう(;^ω^)。。。
自分が変われば、世界が変わる。他の人が協力的かどうかは関係ない。あなたが始めるべきだ。
おわりに
どうでしたか。なかなか新しい視点がたくさんあり、驚かされましたね。
・トラウマを否定せよ(トラウマは存在しない、人は怒りを捏造する)
・すべての悩みは対人関係(自慢する人は、劣等感を感じている、お前の顔を気にしているのはお前だけ)
・他者の課題を切り捨てる(自由とは他者から嫌われることである)
・あなたは世界の中心ではない(横の関係を築け、勇気づけのアプローチ)
・幸福、自由のためには、共同体感覚を持てるようになること
(必要になるのは、「自己受容」、「他者信頼」、「他者貢献」である。)
「嫌われる勇気」をなぜ勧めているのかという疑問のこたえを知りたくて読み始めたので、第四夜から少し違う話になったように思いました。
そのせいもあって、最後の方は、宗教的な感じもしたのですが、精神科でのカウンセリングを考えると、患者さんへの話しかけとしてはこういう感じになるのかなとも思いました。
わたしも、まだ本書一読したに過ぎないアドラー心理学初心者ですので、別の書を読んで、記事に補足していきたいと思います。
岸見一郎さんのプロフィール
1956年、京都生まれ。京都大学大学院文学研究科博士課程満期退学(西洋古代哲学史専攻)。京都教育大学教育学部、奈良女子大学文学部(哲学・古代ギリシア語)、近大姫路大学看護学部、教育学部(生命倫理)非常勤講師、京都聖カタリナ高校看護専攻科(心理学)非常勤講師を歴任。専門の哲学に並行してアドラー心理学を研究、精力的に執筆・講演活動を行っている。(ネットの紹介文より)
古賀史健さんのプロフィール
ライター。株式会社バトンズ代表。1973年福岡県生まれ。1998年、出版社勤務を経て独立。著書に『嫌われる勇気』(共著・岸見一郎)、『20歳の自分に受けさせたい文章講義』、『古賀史健がまとめた糸井重里のこと。』(共著・糸井重里)などがある。2014年、ビジネス書ライターの地位向上に大きく寄与したとして「ビジネス書大賞・審査員特別賞」受賞。2015年、ライターズ・カンパニーの株式会社バトンズを設立。(ネットの紹介文より)
〆