はじめに
すべての章は、「はたらく」に関する12のテーマを、過去から現在そして未来の姿を示すようになっています。
2017年10月に発行されたこの本は、新型コロナの流行でリモートワークが激増することをまだ知らない著者が書いたものです。その条件で2022年12月現在の私が、この本にどこまで共感できるか、という視点でも読んでみたいと思います。
作品の背景
これからの働き方、これからのオフィスをどうしていけばいいのかを考えるきっかけにしてほしいと思ったから。
作品の評価(というか感想など)
とくに真新しいことは、あまりないが、私なりに新しめの部分を切り取ってみました。
1.「オフィス」から「ワークプレイス」へ
当初のオフィスは、上司に監視され、自由に離席もできないものだったが、次第に改善されてはきた。
オフィスのデスクスペースは減り、コミュニケーションのスペースが増え、日本家屋の縁側のような内部と外部が混じり合う空間の充実が求められていくだろう。
時間と場所からワーカーは開放されていく。
2.「効率」から「創造」へ
会議の短縮、遠隔地とのビデオ会議によるコスト削減は「効率」を追求していたやや過去の話で、コンピュータの登場で「効率」は相当前から改善はしているはずです。
2007年の経産省が発表した「12の知識創造行動」の中でも、『従来のオフィスに存在した会議室や打合せ空間以外にカジュアルで偶発的なコミュニケーション空間の必要性』が説かれた。だが、コロナ後の自分が勤務する会社の状況としては、リモート会議が激増し、会議室という箱はほとんど使われなくなり、経産省の提言と逆行しているのは、皮肉な結果。政府お得意の箱物(会議室)は要らない!?
今後は、個人のパフォーマンス(生産性と創造性)を高める施策を見直すべきである。
3.「みんなにひとつ」から「ひとりにふたつ」へ
自分用のパソコンの数の話。いまはそんな感じですねえ。
4.「指定席」から「自由席」へ
オフィスから指定席が無くなっても、あなたは大丈夫ですか?
実際は、フリーアドレスオフィスは10%程度で、急速に伸びているわけでもないが、未来予想としては、自由席はオフィスの外にまで広がるだろう。
5.「座りなさい」から「立ってなさい」へ
せっかく、人間は立つことが出来るようになり、背骨への負担が少ないS字を手に入れたのに、デスクワークを長時間続けるため、猫背に退化しようとしている。
いずれ、人間の脳とデバイスがつながり、考えがそのまま記録できるようになるし、椅子ももっと人間工学に基づいて作られるだろう。そりゃそうだろう。
6.「多・遠・長」から「少・近・短」へ
会議室の話。
日本人の生産性は世界一低い。25%も会議に費やして、結論が出ないなんて!
タイトルのとおりを目指そう。
7.「ピラミッド」から「フラット」へ
組織とは、①組織目的、②貢献意欲、③情報共有の三要素が揃って成立する。
行き過ぎたフラット化は、若手の昇進意欲が失われ、仕事のモチベーション低下につながる。
それでもフラット化は進み、部門の枠を超えたタスクフォース(プロジェクト)チームが増えている。
8.「灰色」から「薔薇色」へ
今のオフィスは、1990年代に比べれば、各段に色が付いているが、まだ満足はしていないという調査結果が出ているそう。
9.「室内」から「地球」へ
室内環境で使用しているものは、温暖化の原因(ものを作る工場からのCO2排出など)を考えれば、地球環境につながっていることは明白です。
10.「机上」から「屋上」へ
喫煙の話なら、そのとおり。
コミュニケーション空間として大切という考え方も理解できるが、もっといい案があるそうな。職場内をぶらぶらすること。他部署の人ともコミュニケーションが出来るかららしい。とは言っても、みんながぶらぶらすると。。。
11.「キーホルダー」から「カードホルダー」へ
今や、モノ・カネ・情報で、最も守るべきは、「情報」なり。
顔認証システムで、顧客が訪問しやすくする。ゲストカードの発行は煩わしい。
セキュリティも最後は人。みんなで警戒態勢。
12.「ブラック」から「ホワイト」へ
ブラック企業 → 働き方改革 → ホワイト企業
働く時間と場所を自由に選択でき、仕事そのものも自分で創り出せるなら、日本の幸福度ランキングは51位からあがるはず。
感想まとめ3点
1:「効率」から「創造」へ、の予想だけが新型コロナによって(実態は)違ってきている。
2:それ以外の項目には賛同できる。
3:それでも「創造」のためのコミュニケーション空間はあったほうがいいと思う。
参考情報
鯨井康志
岡村製作所 オフィス研究所 WORK MILL fellow