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だから殺せなかった 一本木透 第27回鮎川哲也賞優秀賞受賞作。SO I COULD NOT KILL

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だから殺せなかった 一本木透 第27回鮎川哲也賞優秀賞受賞作。

「おれは首都圏連続殺人事件の真犯人だ」大手新聞社の社会部記者に宛てに一通の手紙が届く。手紙には、首都圏全域を震撼させる無差別連続殺人について、犯人しか知り得ないはずの犯行の様子が記されていた。。。

目次

■プロローグ

◆一本木透のモノローグ

大手の太陽新聞は、ネットなどに押されて、売上が落ちてきていた。
そして、ついに創業以来の営業赤字を記録した。
新聞は今や受け手への「到達率」が最も低い媒体となってしまった。
社内では人件費削減のターゲットとして三百人の記者を減らすということになった。

社会部も、新聞の売りになるような記事を書かないといけない。
社会部部長は、「記者の慟哭」を書け!という指示を出した。
もっと、他人事ではない迫真のレポを書け、ということらしい。

■第一章 家族

◆江原陽一郎のモノローグ

都内私立大学文学部三年生の江原陽一郎。
父は茂、図書館司書。母はむつみ。しあわせだったはずの家族。陽一郎はある日父の日記を読んでしまった。

自分は、実の子ではない。。。!
それ以来、陽一郎の頭には、悪い妄想が憑りつく。
「新聞の不幸の切り抜き」が、どんどん増えて行った。「実の子でも、こんな悲劇だ。おれはまだまし。」

そして、太陽新聞に、「連続通り魔事件」という「不幸」が報じられた。

◆一本木透のモノローグ

一本木は二十数年前、太陽新聞前橋支局の市役所担当記者だった。春には警察担当記者になる予定だった。
彼は優雅な取材が出来なくなるというので、川をテーマとした通年のルポを担当させてもらえることになった。
そこでの取材で知り合った保母の白石琴美さんと仲良くなり、同棲に至った。

彼女の父は家系を絶やしたくなく、娘には婿取りをしてほしいと考えていたが、今はそのことでもめて絶縁状態だった。

春になり一本木は、警察担当となった。
間もなく、県庁の汚職事件の情報を掴んだ県警グループは、家にも帰らずスクープの裏を取った。ついに下っ端から出納長までたどり着いて、明後日の全国版一面を勝ち取った前橋支局員らは涙ぐんだ。

ところが、一本木はその出納長の名前を知らなかった。同僚に聞くとその名前は、白石だという。。。白石琴美。。。

同僚が撮ったスクープ写真の現像と本社への送信を依頼された一本木の手が止まったが、同僚の努力を知る彼は送信を選んだ。

スクープの代償は、彼の未来の「家族」であった。
そして琴美さんも自らの命を絶ったのである。

このことの顛末が、一本木「記者の慟哭」として、連載されて大きな反響を呼んだ。
そして、その反響の中に、六通の一本木記者宛の私信があった。
差出人は「ワクチン」、首都圏三件の連続通り魔事件の犯人からだった。

ここから、犯人と新聞記者一本木透との対決が始まる。
主人公と著者の名前が同じである点は少し気になるが。

自分が実の子ではないと分かった江原陽一郎と、連続殺人犯と対決することになった一本木透。まったく他人の二人の運命が大きく揺さぶられていく。

連続殺人犯の「人間こそが悪のウィルスであり、自分はそれを退治するワクチンである」という正義感にも驚かされる。

一方、新聞記者の一本木にも、真実を伝えるという正義があるが、新聞社も営利企業である。一本木は殺人事件を利用した新聞の拡販に加担していることに葛藤する。

真の家族となりたかった「三人の他人」の辛い人生と、スクープの代償で家族となるはずだった女性を失った男の辛い人生が共鳴し合う。

はたして、この連続殺人事件で二人の男の人生は変わるのか。
このあとの展開は、二人の視点で交互に描かれ、まるでテレビドラマを視聴しているような感じで吸い込まれていく。

■第二章 言葉
 ◆江原陽一郎のモノローグ
 ◆一本木透のモノローグ

■第三章 罪
 ◆江原陽一郎のモノローグ
 ◆一本木透のモノローグ

■第四章 理由
 ◆江原陽一郎のモノローグ
 ◆一本木透のモノローグ

■第五章 真実 
 ◆江原陽一郎のモノローグ
 ◆一本木透のモノローグ

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感想

第五章 真実 江原陽一郎のモノローグで明かされた驚くべき真実について、じっくりと、味わってください。

一本木透さんのプロフィール

1961年東京都生まれ。早稲田大学卒。2017年、劇場型犯罪を一人の新聞記者の視点から描く新人離れした筆致が選考委員から高い評価を得て、『だから殺せなかった』で第27回鮎川哲也賞優秀賞を受賞(本書の紹介文より)


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