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Seven Stories 星が流れた夜の車窓から 文芸春秋が仕掛ける「ななつ星」とのコラボ短編集

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Seven Stories 星が流れた夜の車窓から

井上荒野 恩田陸 川上弘美 桜木紫乃 三浦しおん 糸井重里 小山薫堂 文芸春秋が仕掛ける「ななつ星」とのコラボ短編集

内容紹介、感想

肝心なところは、ぼやかしていますので、ぜひ本を読んでななつ星の夜をまったりお過ごしください。久しぶりに、ほんわかとした気分に浸りました。

さよなら、波留 井上荒野

優しい男の寂しい物語。美人の妻を残して死んでしまった男が亡霊のまま、ななつ星で傷心の旅をする妻に寄り添う。美人の妻を男たちは放ってはおかない。妻に声を掛ける計算高そうな男に死んでしまった夫は心配でならないが、・・・。やさしい妻の振る舞いにあなたの涙腺も緩むだろう。

ムーン・リヴァー 恩田陸

キミコ姉ちゃん、実は育ての親で母の妹だ。「ななつ星」に乗ることを楽しみにしていたキミコ姉ちゃんは、その日が来る前に旅立った。彼女がパンフレットを見て呟いた言葉が気になる俺と兄貴は「ななつ星」に乗り込んだ。ふたりは、なんとかその謎を解こうとする。

夢の旅路 三浦しおん

夫と「ななつ星」に乗るはずだった篤子。夫が急なぎっくり腰。二年前に夫を亡くした私(志摩)がピンチヒッターだ。同行者の名義変更が大変だったとのことで、JR九州も人気のチケットだけに慎重なのだろうか。そして乗客は行儀良く、乗務員の接客も良い。私も定年になったら、応募してみようかと考えた。
煙草を吸う志摩は、親子で乗車していた鶴巻さんと唯一の喫煙友だちの様になり、喫煙可能な停車駅ごとに顔を合わせるが、お互いに立ち入らない。
そして、篤子と志摩の女性同士の不思議な友情の夢に浸って夜も更けてゆく。

帰るところがあるから、旅人になれる 糸井重里

乗換案内のアプリは、目的地を入力しないと始まらない。そんな考えになってしまっている自分に気づく。「ななつ星」の目的地は?
帰るところのない旅は、旅ではなくて、引っ越しか行方不明だ、と著者は言う。
そうかも。思い出せ、遊園地にあった「おさるの電車」を。

旅する日本語 小山薫堂

幾星霜(いくせいそう)とは、苦労を経た上での、長い年月。
老春(老春)とは、高齢者が青年の様に若々しくしていること。
相生(あいおい)とは、夫婦が一緒に長生きすること。
忘憂の物(ぼうゆうのもの)とは、酒の異名。
家苞(いえづと)とは、自分の家へ持って帰るみやげ。
蘇息(そそく)とは、休息すること。また、安心すること。
紐帯(ちゅうたい)とは、人と人を結びつける重要な役割を果たすもの。
この七つの言葉の、なるほど、とよく分かる素敵なエッセイ集。

アクティビティは太極拳 川上弘美

結婚して子供ふたり、男の子の母となっているひな子は、母と「ななつ星」に乗る約束をした。させられた。ひな子はそっけない親子関係で育ったので、母とも旅行で何を話したらいいのか分からなかった。
ところが、新型コロナのために、ななつ星の運行が中止となった。
少し楽しみにしていたひな子は、母から意外な提案を受ける。
「ちかごろはやりの、リモートでいきましょう」 「。。。」
甘く見ていたひな子が、次々と母から繰り出されるハイテクのワザに驚くところは面白い。年寄りだと思ってバカにするんじゃないよ、と怒られている気分だ。
長年話せなかったことが、こんなことでもないと話せないものなんだなぁと思った。

ほら、みて 桜木紫乃

晴美と和幸。夫は定年退職。ななつ星に当選してごきげん。
妻の晴美は、密かにひとり立ちを計画していた。「卒婚」。離婚はしないが、夫であること、妻であることを辞める。らしい。だが、わたしもそんな年代に近づいていてどうも他人事ではない気配も感じる。
ななつ星での夫婦の旅行を楽しみにして参加した夫に対し、いまこそ「卒婚」を言うチャンスだと機会をうかがう妻。
はたして、ななつ星の夜の車窓は、そんなふたりにどのような未来を見せてくれるのだろうか。
気がつけば、おとうさん、おかあさんと言っていたふたりは、名前で呼びあう。
夫が持ち込んだ童話は「ほら、みて」
湖を見ていた少年は、もう日が暮れそうだと気づく。少年はもう一人の自分を妄想してしゃべりながら二人で助け合って森の道を家へと引き返してゆく。
晴美は分からなくなった。ひとりで歩いて行けると信じた自分が。。。ななつ星のラウンジのお酒、飲み過ぎた?

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