『暁天の星』あらすじ・感想

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著者:葉室麟

目次

はじめに

「暁天の星」、それは明け方に輝く明星のこと。本作での意味は、陸奥が下関条約へ望むときの決意から来ています。

「自分は暁に輝く明けの明星として、国家の行く末を照らさねばならない」

暁天の星

陸奥宗光 42歳、明治18年(1885年)

オーストリアのウィーンで法学者のシュタインの個人教授を受けていた。

妻の亮子は、旗本の妾腹の娘で美人である。オペラを鑑賞しながら坂本龍馬のことを懐かしんでいた。

東京に帰った陸奥は、妻との散歩中に、イギリス外務省の通訳であるアーネスト・サトウと遭遇する。

サトウは「英国策論」で、日本の政治体制が天皇を元首とする諸侯連合であり、将軍は諸侯連合の首席にすぎないと書いたらしい。P31  なるほど、西洋人には分かりやすい説明かも知れぬ。

サトウの勧めで、陸奥亮子は鹿鳴館デビューすると、伯爵戸田氏共の夫人、極子とともに「鹿鳴館の華」と呼ばれるのである。

陸奥は、明治21年(1888年)6月、特命全権公使として、アメリカ・ワシントンに赴任した。

妻の亮子、16歳の娘、清子さやこも同伴した。

もちろん、亮子は、ワシントンの社交界で人気を集め、花形になった。

凡人の我々には、想像も及ばない。

のちに、伊藤博文の内閣で外務大臣となった陸奥は、伊藤が「これから国民の大きな欲望を抱えて奔ることになるぞ」と言うのを聞いて

「この国の政治家は常に何かに迎合しようとするのかもしれない。もし、そうだとすると、羅針盤を持たない船のようなもので、どこに行くかは、その時の風向きと船員や乗客の気分次第ということになる」

と思ったという。

なるほど、そう言われれば、現在の政治も同じようなものである。

ポピュリズムはいつもある。

だいぶ、端折ってしまったが、ここらへんで、本作は(未完)となっている。

下関講和条約が始まろうとするところまで書いて、葉室麟さんは逝かれたのである。

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乙女がゆく

タイトルが「竜馬がゆく」ではなくて「乙女がゆく」とはまた・・・

場所は寺田屋、女将はお登勢

二階には、竜馬とお龍

とつぜん、竜馬の三歳年上の姉、乙女が寺田屋にやってきた。

男装の乙女は、一目では竜馬と区別がつかなかった。

身長174センチ、体重112キロで、あだ名は「お仁王」

素性を聞いて、お登勢は乙女を二階に案内した。

ちょうど、竜馬が薩長同盟の締結にちょいと手を貸した頃である。

「長州から見りゃ、わしゃ薩摩側のもんじゃ」

そう言って、竜馬は・・・姉の乙女に、長州の桂小五郎に会ってくれと頼むのだ。

乙女は、桂から薩摩が天下のために働いてくれるなら、長州は滅んでもよいという決意を聞いて

西郷にも会う。

西郷は薩長同盟には、最初は非協力的な態度を示す。

だが、乙女の話に納得した西郷は同盟の話を自分から桂にすると言ってくれた。

その同盟の内容は「幕府と長州が戦端を開けば、薩摩が上方出兵する」などの六か条であった。

この物語の最後は、池田屋に奉行所がきて、自分が楯になって竜馬を逃がすところで終わる。

母の代わりに育てた姉があってこその坂本龍馬であった。

感想

葉室麟さんの本は、初めて読んだのだけれども、とても読みやすい。本作が完結していないのは、なんとも残念ですが、直木賞や司馬遼太郎賞を受賞された作品などは読んでみたい。

物語は、陸奥宗光の外務大臣になるまでの浮き沈みの激しい人生と、鹿鳴館の華と呼ばれた妻の亮子との二人三脚の生涯が描かれている。大変ではあったろうけど、凡庸なわれら読者の人生に比べれば、なんとうらやましいことかと思われる。

書籍情報

 ・形式 単行本
 ・出版社 株式会社PHP研究所
 ・ページ数 272頁
 ・著者 葉室麟
 ・発行 2019年6月5日

著者情報

1951年、福岡県北九州市生まれ。西南学院大学卒業後、地方紙記者などを経て、2005年、「乾山晩愁」で歴史文学賞を受賞してデビュー。2007年、『銀漢の賦』で松本清張賞、12年、『蜩ノ記』で直木賞、16年、『鬼神の如く 黒田叛臣伝』で司馬遼太郎賞を受賞。
その他の作品に、『秋月記』『花や散るらん』『橘花抄』『星火瞬く』『無双の花』『散り椿』『霖雨』『春風伝』『孤篷のひと』『墨龍賦』『大獄 西郷青嵐賦』『天翔る』など。(本書の著者紹介より)

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