MENU
ホーム » 書評 » SF » 『どうせ世界は終わるけど』 結城真一郎 あらすじと感想
この記事の目次

『どうせ世界は終わるけど』 結城真一郎 あらすじと感想

  • URLをコピーしました!

当サイトはアフィリエイト広告を利用しています。

目次

はじめに

なんで私を産んだの? あんたたちは死んでるだろうけど、こっちは生きてるかもしれないんだよ?

この小説は、100年後に人類が滅亡すると分かった世界を描く。どうせ死んでるから関係ないと考えるのか?

あるいは、自分の子供たちはまだ生きているからなんとかしなくちゃと考えるのか、人生をどのように生きたいのかを問われます。

あらすじ・感想

第一話 たとえ儚い希望でも

 直径22キロの小惑星・ホープが地球のアメリカ西海岸付近に迫っていることが分かった。ただし、100年と93日後だ。各国は連携し、惑星の破壊または軌道の変更を検討中で、さらに衝突地点からみて地球の裏側の中央アジアに巨大シェルターを作る計画まで進めているらしい。

 この状況で高校生の青春物語。わたしこと金井希望と鏑木悠馬が、相思なのにお互いに告白できないので、主人公である金井希望の友人の吉岡日向が仲を取り持ってくれた。

 高校を卒業して、希望は就職し、日向は大学に進学した。のだが、悲しい事件が待っていた。

第二話 ヒーローとやらになれるなら

 村井賢太郎は、名を残したかった。就職面接は失敗。だが、あと100年で地球が滅ぶなら、名を残したところで、数十年で誰も居なくなるのであまり意味がない。

 諏訪部芹奈(姉2年上)は控えめで仕事もできる、優奈(妹2年下)は賢太郎にタメ口だ。

 企業の株式会社ミライヨの集団説明会で諏訪部優奈に再会する。そして、「村井くんは、私にとってヒーローなんだからさ」と言われるが、賢太郎にはその意味が分からなかった。

 そして、話していたのは優奈ではなく、姉の芹奈だよ、と言われてまた驚いた。


さて、彼はなぜヒーローなのか。

大学を卒業し、就職も勝ち取った芹奈は、100年後の地球滅亡を知り、何のために生きるのか分からなくなったのだが、同時に「地球を救う!」という存在意義、ミッションを見出した。

第三話 友よ逃げるぞどこまでも

 男35歳は、彼女が32歳のとき、結婚の準備を進めていたが、彼女から別れ話を切り出された。弟が殺人事件を起こしたせいで、彼女から別れ話を切り出され、世捨て人となった

 その41歳のおっさんと脱走した受刑者の男・長瀬北斗が偶然出会い、共に暮らしたのは東京から1500キロもある南海の小島、通称ドワフ島。

 人類滅亡まであと88年となった。
 男ふたりが釣り糸を垂れているが、今夜のおかずは釣れそうにない。

 無人島でいっしょに暮らしていたふたりは、隣の島から出ているフェリーで内地へ行き、食料などを買い込んだ。

 たまたまおっさんは、数日前のラジオで殺人犯・長瀬北斗のことを聞いてしまった。内地の交番横の掲示板に貼ってあった指名手配書を見つめていた。いっしょに暮らしている男だと気づいた。懸賞金200万円がほしくなった。

このふたりには、以外な関係があったし、長瀬北斗がなぜ刑期満了前日に脱走したのかが語られる。

第四話 オトナと子供の真ん中で

 六年一組、卒業制作の話し合いで、学級委員の高坂さんが意見を聞くと、堀内君から「タイムカプセル」がいいという意見が出て、みんなが賛同した。だが、いつ開封するかが決まらない。

 前委員長の山路芽衣が手を挙げた。「80年後の人類滅亡の前日でどう?頑張ったけど無駄だったねと慰めあおう。92歳だから死んでる人もいるだろうけど、明日死ぬっていう日に集まれば恐怖も和らぐよ」 

 先生や同級生は山路芽衣をたしなめた「いい加減にしなさい!」。

 蹴斗は、自分の親がサッカー選手になってくれと言うのを止めてほしかった。
 そして、山路芽衣にそそのかされて、東京へいっしょに家出する。

 その途中で芽衣が言う「たしかに、大人になると世界は広がるんだと思う。電車だけじゃなくて、飛行機にも乗って、外国にだって行けちゃうんだと思う。でも、そうやって世界が広がると同時に、どんどん当たり前が増えていく気がするんだ。いろんなことが足り前になっていって、どんどん世界はつまらなくなるんじゃないかなって」

 たしかにそうだと思うが、中学生になったばかりの子がこんなこと思うのかという気がする。

 そして、芽衣は目的地の三鷹にある国立天文台へ到着した。

 職員に地球に隕石がぶつかるのはほんとうなのかを聞いた。これが芽衣が東京へ来た理由だった。
 自分の目と耳で確かめたかったのだ。

 さて、東京への冒険は、未成年者の男女が二人でビジネスホテルに宿泊しようとした時点で怪しまれ警察に通報されて終了となった。両親に怒られた芽衣は言う(考えただけかな)
「なんで私を産んだの? あんたたちは死んでるだろうけど、こっちは生きてるかもしれないんだよ?」

 一方、蹴斗のほうはちがった。サッカーの試合で残り二分、負けているが逆転できない点差でもないとき、監督は控えの選手に出場を命じることはあってもいいと考えたのである。

 ここからは感想だが、逆転できないと決まったわけではないし、体力(寿命)の残っている控えの選手(芽衣や蹴斗)が逆転のゴール(地球を救う)を決めてくれるかも知れないし、それは体力(寿命)の残っている控えの選手にしかできないことだ、と私も思った。

第五話 極秘任務を遂げるまで

佐伯は重機オペレータ、その操作技術は神業だった。そして、離婚して定期的に娘の愛莉と会っている。

今から9年後、各国は連合して、隕石ホープへ核爆弾で総攻撃をかける計画が進んでいる。
これで軌道がずれるか、スピードに変化が出れば地球とは衝突しないのだ。

そうだ、核爆弾は、こういう時に使えばいいのだ。

娘は、パパが残してきた小学校の文集を読んでいた。パパの将来の夢は宇宙飛行士。その翌年に隕石ホープのことが発表されたのだ。娘は離婚したパパを奮起させるために、一芝居打っていたのだ。そのことを気づかされたのは、娘がパパのことを学校で作文に書いて自慢すると言い、やめさせようと元妻に電話したときだった。そんな時代遅れの宿題が出るはずないでしょ。いろんな家庭環境の子がいることは学校側も分かっているのだから。たしかにそうだ。

娘の期待にあらためて気づいたパパは、宇宙飛行士募集要項を確認し、かなり条件が緩和されていることを知る。今から飛び立つのは宇宙飛行士ではなく、命も惜しまない宇宙作業員だからである。

さて、パパはどうしたのか。

第六話 どうせ世界は終わるけど

隕石ホープの件が世に知られて、32年が経過した。
山路芽衣は24歳、小学校の教諭になった。
クラスの子みっくん(
鏑木未来)が、気象予報士になるという夢を馬鹿にされ、不登校になっていた。

みっくんのパパは医者でバツイチ。あるとき今のママと再婚した。今のママは、実の子ではないみっくんにどう接したらよいか悩んでいたし、隕石を理由にもう人生どうでもいいと思って生きてきたので、義理の息子のことも諦めかけていた。


不登校になってから毎日どこかへ出かけるみっくんを尾行した。そして喧嘩したはずの萩原くんと公園で落合い、海岸へ向かった。そこにいた釣り男と何か話していた。

気が付くとみっくんと萩原くんは家へ帰って行ったので、今のママはその釣り男に話を聞いたが、詳しいことは教えて貰えなかった。でも釣り男はこう言った「どうせ世界は終わるから、好きに生きた方がいい。」って言うけど「もし、滅びないなら、好きなように生きちゃダメなの?」と。今のママは何も言い返せなかった。

その晩、パパの帰りが遅い夕食時にご法度のテレビをふたりで見た。明日に迫ったロケット打ち上げのニュースで持ち切り。そして今のママは気づいてしまった。みっくんの目的。

このあと、継母と義理の息子がどうなったか、そして第一話も回収される。

広告

書籍情報

・形式 単行本(ソフトカバー)
・出版社 株式会社小学館
・ページ数 336頁
・著者 結城真一郎
・初版発行 2025年6月2日
・分類 近未来小説、終末小説

著者情報

1991年神奈川県生まれ。東京大学法学部卒業。
2018年、『名もなき星の哀歌』で第5回新潮ミステリー大賞を受賞しデビュー。2021年、「#拡散希望」で第74回日本推理作家協会賞〈短編部門〉を受賞。同作を収録した短編集『#真相をお話しします』がベストセラーに。
他の著書に『プロジェクト・インソムニア』『救国ゲーム』『難問の多い料理店』がある。
(本書およびネットの情報から)

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
目次