『残暑のゆくえ』 小暮夕紀子

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はじめに

この物語は「タイガー理髪店心中」に収録されている第二話「残暑のゆくえ」です。

第一話の「タイガー理髪店心中」は、こちら👇

あらすじ・感想


七十五歳の日出代さんは、日の出食堂を営んでいる。

旦那さんは、満州から引き揚げた過去を持つ九十九歳の須賀夫さん。
須賀夫さんの役割は、花の手入れと日の出食堂を飲み込んでいる古いアパートの管理人だか、ほとんど入居者はいない。

再婚同士の二人が、過去の壮絶な思い出を互いに秘めて、楽しく生きようとしている。

だが、その思い出と老いは、容赦なくふたりそれぞれに押し寄せる。

終盤では、その内容が詳細に明かされる展開が待っている。
それでも、なんとか、なんとか、生きている人間であり、その物語は、同じように辛い思い出を抱えて生きている人たちに、少しの力を与えてくれるに違いないと思った。

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ネタバレ

日出代さんは、母に捨てられた。
捨てられる前に、自殺を指示された悲しい過去がある。
家の近くの暗いトンネルを通って買い出しに行くたびに、それを思い出していた。

須賀夫さんは、満州から引き揚げるとき、足手まといになる怪我人や子供も殺す担当だった。
夜中に夢を見た須賀夫さんに、日出代さんは何度も敵兵と間違われて殴られていた。

ふたりは、バツイチになったあと、勤務先へ向かう電車賃を浮かすため線路を歩いていてすれ違い、出会ったのだ。

物語の最後に、近くに住んでいた蝋燭屋の息子から、子どものころ、自分の父が人殺しだと言われて辛い思いをしたが、本当の犯人は須賀夫だと日出代に言いにくるシーンは、辛いものがあった。

男同士だった須賀夫さんと蠟燭屋のふたりは、話さないことでお互いに痛みを分かち合って生きてきたのだが、身内にしてみれば、大変なことだったと思う。

書籍情報

・形式 単行本(ハードカバー)
・出版社 朝日新聞社
・ページ数 216頁
・著者 小暮夕紀子
・初版発行 2020年1月30日
・分類 文芸作品

著者情報

1960年 岡山県生まれ。
岡山大学法文学部卒業。
2018年『タイガー理髪店心中』で、第四回林芙美子文学賞を受賞しデビュー。
目下の家族は夫一人と猫九匹。
(本書の情報から) 〆

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