江國香織 『ぬるい眠り』 感想・考察・魅力

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目次

はじめに

この記事では、江國香織の小説『ぬるい眠り』について、各短編のあらすじと読後の考察をまとめています。

江國香織さんの経歴を見ると、紫式部文学賞(『きらきらひかる』)、山本周五郎賞(『泳ぐのに、安全でも適切でもありません』)、直木賞(『号泣する準備はできていた』)など、主要文学賞を幅広く受賞されています。

各短編のあらすじと感想

ラブ・ミー・テンダー

70代夫婦。認知症の母が愛するエルビスプレスリーになりきる心優しい夫と娘のお話

ぬるい眠り

元カレの耕介さんが自費出版した2冊の詩集は売れない。耕介さんには奥さんがいた。奥さんが留守にしていた半年だけ同棲し、奥さんは帰ってきたので、雛子は耕介さんと別れ、高校生と付き合い始めた。雛子にプルキニエ現象が起こり始めた。一般的には、明るさの変化に応じて同じ対象の色が異なって見える現象を言うが、雛子の場合は同棲していた耕介さんの姿が見えるのだ。雛子は高校生と付き合いながら、まとわりつく耕介さんの想いでに苦しめられて・・・。 (男の人がしている結婚指輪に対する独身女性の思いが書いてあった。ふーん)

放物線

かんちゃん、わたし道子、清水さん、光一朗、大学を卒業して5年。「男のくせによく喋るな。朝から天ぷらを食べてきたのか」という台詞に感心。時代背景を映した前半のセリフと後半の突っ込み。これは今度使おうと思った。飲み屋で久しぶりに会話して、それぞれの少しの変化、進歩?を確認した同級会みたいなもの。また会おうと別れた。放物線といえば、中村雅俊の「ただお前がいい」を思い出す。

災難の顛末

原稿を書き上げて、酒を飲み、翌日空腹で目が覚めるまで寝て起きると、自分の右足に驚くべき異変が起きていた。ふくらはぎが大きく腫れあがっているのである。そこにあったのは、二重丸の斑点。しかも太腿、腕、お腹にも。その出版社の私の担当は、一條女史。二人は境遇が似ている。恋人一人と猫一匹。そして家が近い。今日子の恋人は敦也。それにしても小説というやつには、二種類ある。最初から主人公の名前出すやつと、途中までずっと私でいくやつ。これは14ページくらい読んでようやくフルネームが分かった。主人公の私は、真下今日子。ノミに噛まれたせいで、足や腕が大きく赤く腫れ、仕事や恋に支障をきたしている今日子。そのことがきっかけで好きだと思っていた猫や一條さんのことが、そうでもなかったかも、と考えるようになる。人と動物の関係って、その程度のものなのか。それよりも、男のほうの想像力の無さ、身勝手さに、読者の私の方がウンザリしたのかも知れない結末だ。

とろとろ

わたし(美代)は、信二とのとろとろな甘い関係が続くと思っていた。ところが、当の美代という女にはなんと三人以上もの浮気相手がいた。一部紹介すると、

1:橋本さん 読書家 一緒に旅行する仲
2:葛原さん 編集部の先輩で妻子持ち たまに夜を過ごす仲
3:河野さん 泊まり出張に一緒に行く中

友人に聞かれて、「どうって?別に。」と美代は考えている。美代は、ときには、行きずりの大学生にナンパされて寝た。それでも、信二とは、まだとろとろらしい。(信二、目を覚ませ!・・・と声を掛けたくなる読者)
新しいしりとりの話(アイデア)は、面白いと思った。終わらないしりとり。んで終わったら、その前の文字で続けるというもの。なるほど、と思った。昔からあるのかな。

夜と妻と洗剤

妻が、僕と別れたいと言った。妻が言う。「気が付かないふりをして暮らすことはできるわ」僕にはさっぱり分からない。いつものことだ。ここには訳の分からないことを突然言い出す妻の操縦法が書いてある。

清水夫妻

わたしと武信は仲のいい元カレと元カノで、お蕎麦屋で清水夫妻に出会う。清水夫妻は、アラフォー世代で、遺産を相続し優雅に暮らしていた。拾った猫を引き取ってもらってから、わたしと清水夫妻との交流が始まった。彼らは約束の時間に訪問しても不在なことがある。なんでも葬式に出席するのが趣味らしい。いつのまにか主人公も出席を勧められ、次第に虜になっていく。ついには恋愛より優先度が高くなって・・・。

ケイトウの赤、やなぎの緑

一卵性姉弟。姉のちなみと弟の占部くん。将来の活躍を約束されたはずの二人だったが、姉は2回結婚し、弟はバイオリニストになるため海外留学後ゲイとなって帰国した。人生は混乱するものだ。弟に連れて行かれたサロンでちなみの人生の混乱は始まった。そこに集う人々には、世間一般の常識が通用しない。サロンは笑子という女と医者でゲイの夫・睦月が暮らす家が溜まり場になって、ちなみがあやしいサロンと呼んでいるものだ。その家の庭には年中雑草がはびこっている。サロンに集う人々に似ている。秋には鶏頭の花が咲き、早春にはレンギョウや柳がきれいだ。みんなのややこしい関係での会話でも聞いてみる?

奇妙な場所

三人の女性。邦枝69、和子52、美々子50。中年女性の知人同士とも思えるが、実は親子!ありえるのだ。17歳で和子が生まれ、19歳で美々子が生まれたなら。「三人はおなじような年恰好に見えた」と書いてある!三人は世の中を「奇妙な場所」だと考えていた。実際は、この三人のこのあとの行動の方がよっぽど奇妙なのである。

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考察・総評

この小説は、2007年に刊行されていますが、江國香織さんが20代前半に書かれた作品群だそうです。テレビで紹介されるまでは知らなかった作家さんです。凪良ゆうさんが勧められていたので読んでみようと思ったわけですが、9つから成る短編集で、ちょっとした時間の合間に読めてしまいます。

著者あとがきでも書かれていますが、『ケイトウの赤、やなぎの緑』は、『きらきらひかる』の十年後を描いているとのことで、個人的には『きらきらひかる』を読んでみたくなりました。

この小説は、心の微細な変化を読むのが好きな人、恋愛小説が好きだが、甘さより“余韻”を求める人、日常の中の違和感や孤独を描く文学が好きな人に向いているとのこと。特に『きらきらひかる』が好きな人は続編が読めると言う楽しみもあります。今回の紹介があなたの読書体験の参考になれば嬉しいです。

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