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シェイクスピアの四大悲劇のような惨劇が起きてしまった!『ハムレット殺人事件 芦原すなお』

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ハムレットの公演をする予定だった出演者たちが、劇中でたくさん殺されて死んだように、公演の前日の稽古で、たくさん死んでしまうというまるでハムレットの見立て殺人のような不可解な事件が発生した。

私立探偵のふーちゃんこと山浦歩と同業の笹野女史が、警視庁の遠藤警部から情報を得ながら事件の真相を探り出す!


物語は、ふーちゃんこと山浦歩と同業の私立探偵・笹野女史の語りの章が交互に配置されている。

【登場人物相関図】

■ハムレット原作



■ハムレット公演
 【ささ疾く尼寺に行くがよい】のところにある「人物相関図」を参照ください。



■その他
 ・山浦歩 ふーちゃん 私立探偵 54歳 (元高校の英語教師)私立大学文学部 演劇部 昔、夏日薫に請われてハムレット役を演じた。亡くなった妻から電話があるという妄想あり。
 ・流子 山浦歩の妻 交通事故死 学生時代、オフィーリアを演じた。
 ・医学部の友人 学生時代、ギルデンスターンを演じた。
 ・笹野里子 詳細は第2章の冒頭で。

【あらすじ(感想含む)】

目次

【天地のあわい、いかなる思惟も及ばぬもの】5

ふーちゃんのターン。

主人公の名前は、山浦歩、54歳。
なにかのトラウマか、いつも長い長い城壁の上の通路を走り彷徨っている夢を見る。
そして追いかけていた姿が見えてふり向いたところで毎回夢が冷める。
その顔には、見覚えがある。

彼が私立探偵になったいきさつ、結婚、妻の交通事故死が紹介される。
その人生と並行して、彼は演劇と出会った。

ある日、チラシに「ハムレット」の講演が載っていた。
女優は、夏日薫。彼が学生のころいっしょに「ハムレット」を演じた仲間だった。
その恋していた女性の演劇を見ようとチケットを入手したが、芝居「ハムレット」の惨劇が実際に起こってしまったのである。

【言葉、ことば、コトバ】28

笹野女史のターン。
笹野里子、45歳、独身、未亡人、私立探偵
どうやら、ふーちゃんに好意を抱いている。

そのふーちゃんから、事件解決のために協力してほしいと電話があった。
それは、笹野さんの知り合いの遠藤警部の協力を依頼したいらしい。
そして、それはふーちゃんの精神の闇の問題を解決する可能性もあるという。
遠藤警部は、笹野さんにぞっこんで、ある程度のお願いは聞いてくれるという。
まったく都合のいい設定だが、笹野女史と遠藤警部のやりとりは面白く、暗めのふーちゃん(54歳だけど)の雰囲気がこの小説を包み込んでしまわないよう、明るいアクセントになっている。

とりあえず、笹野女史は二週間前の新聞を読んで、事件の概要を把握しようと考えた。
『演劇「ハムレット」公演の練習中に、五人が死亡する事件が発生した。・・・』

笹野さんは、さっそく遠藤警部を呼び出して、笹野とふーちゃんが捜査協力できるように取り計らった。

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【そも夢こそが影にすぎぬ】59

ふーちゃんのターン
まず、遠藤警部にお願いしたことは、事件現場への立ち入りだった。
不承不承了解した遠藤警部。

そしてまず、警察の調査状況を聞き出した。
その話しから、ふーちゃんは、殺人が行われた順番や状況を推理し始めた。
また、殺された五人の素性を遠藤警部から聞き出した。

ふーちゃんは、五人の死に方を聞いて、「演劇のハムレットでの死に方との共通点」に気づいた。

【丁抹は監獄なのじゃ】91

笹野さんのターン。
『・・・今回の事件はこの屋敷という閉じられた舞台で起きた悪夢のような殺人劇だという気がする。』
『根気よくピースの形を見極めて行かないといけない。
ピースの形を決定するのは、人間関係の力学
他者に対する位置、感情をひとつひとつ決定していけば、絵柄は浮かび上がってくる』とは、ふーちゃんの言葉。

そして、鍬田皓太郎や秋留悠徒、奥村精三、徳里堅(たまに徳利となっている箇所があるが、誤植だろうか)の素性を遠藤警部から聞いたのち、笹野さんとふ-ちゃんはこれらの俳優たちについて聞き込みの分担を決めた。

この屋敷を去るまえに、屋敷の検分を行った。

  • 夏日薫が死んでいた部屋のテーブルクロスが、部屋の雰囲気にそぐわない。
  • 台所の大きな冷蔵庫の中のものの入れ方がおかしい。冷凍室に入れるべきものが冷蔵室に入っているものがあった。

偶然だろうか?
偶然じゃないとしたら・・・。

【悲しみの連連と】124

ふーちゃんのターン
インフルエンザに罹患して外出も出来なくなったふーちゃんは、自分が調査担当となった夏日薫が出演した演劇のDVDを観ることにした。

現実世界の彼女の来し方を調べるのも有効だが、演技している彼女を見た方が、人格の把握には有効だと考えたのである。そうかな。。。

その一冊目は、「背恋記」という。
原作は、フランスの小説「アドルフ」
日本語の、アドルフは阿藤留夫(あとう とめお)
ふーん、と思って読んでいくと、「アドルフと読めなくもない」と書かれていて、なるほどと思った。
そうか、外国の人物名を日本名にするときの、ひとつの面白いやり方だと思った。

そして、エレノールは、「ゑりの」だという。
” 襟野織瑠 ”ではないのか! ん~、やはり「ゑりの」がよさそうだ。

とまあ、こんな具合に、「マノン・レスコー」「メディア」「マクベス」と立て続けに、夏日薫が出演した舞台のDVDを鑑賞して、何かを得たようだった。

【ささ疾く尼寺に行くがよい】157

笹野女史のターン
一方、笹野女史の方は、自分が私立探偵になったいきさつを語り、自分が調査担当となった鍬田皓太郎については、亡き夫が残してくれた資料を調べてみることにした。

それから、芸能プロを訪問して、鍬田や秋留のことを聞き出した。

この辺で、聞き込みで分かった素性を相関図に書き込んでみたのがこれ。

【然あらばあれ】192

ふーちゃんのターン
山浦歩は、笹野さんから調査結果を聞いた。
その収穫をもとにして、残りのピースとやらを探すらしい。

まずは、夏日薫を解剖した大学の先生に聞き込みである。
それから、いろいろな個人情報をベラベラしゃべっていた奥村精三について、彼が所属していた前のプロダクションに聞き込み行ったら、鍬田皓太郎のこともいろいろ分かった。
三人の愛人・・・

また、演出家の棚下円居(たなしたまどい)を訪ねた。
夏日薫の演出を熱く語るのであった。

つぎは、夏日薫の女性マネージャーであった本願広海(ほんがんひろみ)さんを訪ねた。
彼女は、山浦歩が来るのをずっと待っていたと言う。
その理由が、なかなか嘘くさいが、まあ小説ということで、呑み込んでおこう。

事件の発見者である本願さんからは、遺体発見時の様子を聞くことができた。
夏日薫の朝の習慣から、彼女が飲むワイングラスには誰でも毒を入れることはできたという。

加えて、一年間失踪したことがあった件についても聞いたが、詳しいことは分からなかった。
そこで、山浦歩は、本願さんに自分の推理を聞いてみた。
「夏日薫さんと亜美ゆんさんは似ていませんか。」

そのつぎは、入院していた亜美ゆんに会った。

これで、すべてのピースは揃った、そうです。
私にはさっぱり分かりませんが。。。

【事の次第、細大漏らさず伝えてくれい】234

笹野さんのターン
山浦歩(ふーちゃん)は、最後に証拠品を見せてほしいからと、笹野女史に協力を要請してきた。

笹野女史は、遠藤警部に連絡して、証拠閲覧の手続きを進めた。
最後に亜美ゆんが着ていたものをじっくり観察して、ついに真相が分かったらしい。

ふーちゃんは、その真相を文章にしてまとめるという。

三日後に、夏日邸に集合した警部と笹野女史に十八ページにわたる、ハムレットではなくて事件の台本のようなものを遠藤警部と笹野女史に渡した。

その台本に、事件のリアルな立ち居振る舞いが書かれていると言う。
内容は、ふーちゃんが書いた今回の「ハムレット殺人事件」の戯曲だった。

ついに真相は明らかになった。
あなたは、きっとこの戯曲風に書かれた謎解きの答えを読んでみたいと思うだろう。
(戯曲の台本って、こうやって書くんだ。。。)

芦原(あしはら)さんのプロフィール

1949年香川県観音寺市生まれ。早稲田大学大学院中退。86年『スサノオ自伝』でデビュー。91年刊行の『青春デンデケデケデケ』が第27回文藝賞ならびに第105回直木賞を受賞し、翌92年には大林宣彦監督により映画化された。(ネットの紹介文より)


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