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『許されようとは思いません』 芦沢央 ややネタバレ、あらすじと感想

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あらすじ と やや ネタバレ と 感想

ほんとうに、シャレにならない展開が続く。続きを読まないと眠れない話が連続して、もう一冊読んでしまった。。。

目次

許されようとは思いません

諒一と水絵、十八年前まで祖母が生きていた檜垣村へ祖父母の遺骨を持って向かう。
二人は付き合って四年経つ。諒は祖母が殺人犯であることを打ち明けても、彼女は関係ないといい、結婚を望んでいたが、諒自身がそのことを気にしていた。

村へ向かう道中、諒一は祖母が祖父を殺したことで、村から村八分、村十分の仕打ち受けていたことを水絵に話すが、それでも結婚願望はあるらしく水絵は結婚というものが分かっていないようだと感じていた。

なぜ、そんな村の墓にお骨を持って行くのか。諒の甘さが気に掛かる老年読者の我。

案の定、行く手を阻むことがいくつも重なる。
電車に乗るなり切れたデイバッグの肩紐、到着した駅に迎えにくるはずの母が来ない。乗ったバスではねちねちとした視線を浴びせられる。
そのうち母から電話があって、土砂崩れで迎えに行けなくなったという。
そして、ようやく着いた寺の門は閉ざされて開かない。寺には連絡してあったはずだが、まるで村全体から拒絶されているかのようで、背筋が寒くなるとはこのことである。わたしなら、さっさと帰るところだ。

どうして寺の扉は閉ざされていたのか、村の意志か、祖母の意志か、その両方か。
このあと、何事もなかったかのように事態は進展するが。

嫁ぐとは、結婚するとはそういうことなのか、何も分かっていなかったのは男のほう。
男子諸君!女性の覚悟に思い至るべし。そう、わたしも頭が上がらない。
結末は、読んでのお楽しみ。

!(^^)!

目撃者はいなかった

仕事上のミスは誰にでもある。だからミスに気づいたら、できるだけ早く訂正すべきである。
この男はミスで営業成績が伸びたと勘違いされて、上司に褒められてしまった。
名誉を手放せずに訂正をしなかったために、とんでもないことに巻き込まれていく。

ミスを隠すために隠蔽工作をするが、ある交通事故を目撃してしまう。
後日新聞を見ると、信号無視をしたはずの車の運転手が被害者になっていた。
でも目撃したことを証言すれば、隠蔽工作が明るみになってしまう。

見なかったことにしようとした男に、一人の女が訪ねてきた。
事故で死んだ男の妻である。女性の執念は侮れない。いろいろ聞き込んでついに目撃者の周辺の男までたどり着いたのだ。
うっかり口を滑らせた男に、女は証言を求めるが、男にはそれができない事情があった。
結局、男は証言を断った。会社へ行くという女に、それこそ不利な証言をすると脅したまでは良かった。

事故があった同じ日、近くのマンションで不審火があった。
突然警察が来た。そのマンションの近くであなたが煙草を吸っていたという目撃者がいるのです。
詳しくは署で聞きましょう。

男には、その女の顔が浮かんでいた。

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ありがとう、ばあば

お婆ちゃんと孫娘のお話。
孫娘が可愛くて仕方がないお婆ちゃんは、孫娘の杏ちゃんを子役としてデビューさせた。母である娘や、夫の父母反対も押し切って。

杏は自分の意見を言わない九歳の子に育っていた。学校の先生がほとんど学校に来ないことや級友たちとのコミュニケーションがうまく行ってないことで電話を掛けてくる。
そして、世話をしていた学校の金魚が死んだとき、それをトイレに流して他の子と問題になったという。まだ、人や動物の死に立ち会ったこともなく、埋葬するという知識がなかった。
お婆ちゃんは杏の意見は聞かないで、クリスマス会などの行事を全て断っていた。

母である娘があまり介入しないのは気になったが、お婆ちゃんが介入させないと言った方が正解なのかもしれない。

物語は、お婆ちゃんの視点で展開される。可愛い孫娘は、CM撮りの仕事もこなし、スポンサーにも気に入られるようになってきた。お婆ちゃんには、聞き分けのいい孫娘の杏だ。

杏はドラマで殺された父親から虐待を受けていた役を演じるらしいが、杏にはそんな経験はない。
お婆ちゃんは嬉しくて、「杏ちゃんの(役作りの)力になれるのなら死んだっていいくらい」と言った。

雪が舞うドラマの撮影現場からホテルに戻った、マネージャーのお婆ちゃんと杏ちゃんは風呂に入ったが、お婆ちゃんはのぼせてしまった。
周りに誰もいないホテルの部屋に戻って、お婆ちゃんが雪がちらつく寒いベランダに出ると、「ガチャン」

後ろで窓が閉まる音がした。

姉のように

妻:主人公 28歳 女性

娘:2歳

妻:主人公の姉 34歳

息子:4歳

夫の兄夫婦とその息子

どうして、人生は悪い方に、転がるんやろ、と思わせられる物語である。
こういうとき、どうすればいいのか。読者の私にも見当がつかない。不運なだけ?そんな。。。

主人公の女性も姉も結婚して、子どもがいた。

あるとき、姉が事件を起こして逮捕され、前科者となった。
主人公の女性の夫や、ママ友の態度が変わり始める。一見なんでもないように接してはくれるが、ふとしたことでドキドキするようになっている。

どんな親友といえども、肉親のことは肉親にしか語れなかった。
でも、小さい頃、姉は優しくて頼りがいがあり、姉のようになりたいと思っていた。
姉の真似をしていれば、同じような母親になれるはずだった。間違いないはずだった。

まわりのママ友らから、自分が姉のようなことをするんじゃないかと疑われている気がして、実家の母に泣きついた。

義父母ともやや疎遠になっていたとき、義兄の家庭に遊びに行った。
彼らの子どもと公園に行ったとき、悲劇と誤解が重なった。
滑り台で、義兄の子が女の子の体に当たって落下し鎖骨骨折した。
その子は、おばちゃんが押した、と証言し、あんたも姉と同じやねと罵られた。

毎日ぐずる娘に手を焼いて、児童館通いをするようになった。
ある日、ぐずって帰ろうとしない、お腹も空いていた。階段を登ったところに食堂があるはずだった。
その階段でウトウトしたのがいけなかったのか。
今度は、自分が加害者になった。

巧妙に配置された二つの事件記事。途中で感じた違和感の謎が解ける瞬間が気持ちいい。
(ミステリーとして)
物語としては、悲しい。みんなよく知っている日本の社会の矛盾にも言及。保育園が先か就職していることが先かの問題で、デッドロック状態(就活先では、保育園に預けてから来てくださいと言われ、保育園では働いている方が優先ですと言われるの)である。

絵の中の男

朝宮二月:画家、女性
呪いの絵(百号、燃え盛る炎の中心で苦悶の叫びを上げている幼子、首から大量の血を噴き出している男、その二人の前で呆然と立ち尽くす生皮を剥がれた女 の絵)

ある人物が、画家の朝宮二月が描いたという「呪いの絵」を鑑定に持ってきたが、贋作のようだ。
鑑定士(の女)は、持ってきた人物にその理由を説明する。

画家の朝宮二月女史が「呪いの絵」のモチーフになった事件を語っていた。
朝宮二月先生の息子が、サプライズで母の誕生日を祝う準備をするため、家政婦だった鑑定士の女と朝宮二月先生に外出するよう頼んだ。

だが、用事を済ませて家にかえると、家は炎に包まれており、先生の息子は目の前で焼け死んだのである。その後、ご主人様は、当時家政婦だった鑑定士の女に、「お前が猛と留守番をしていれば、・・・」と罵った。

朝宮二月先生は、息子の死をモチーフに書いた絵は高額で売れたのだが、三ヵ月ほどすると、また売れなくなった。それは二月先生の心が浄化された証でもあった。

その様子を見たご主人様は、「お前はもう猛のことは忘れたのか!」と怒り狂い、刃物で草間の朝宮二月先生に襲い掛かったところに、家政婦だった鑑定士の女が遭遇した。

結果として、ご主人様は首から血飛沫を放って絶命したのである。

だが、この経緯は正しくなかった。
家政婦だった鑑定士の女の、推理が冴える。

このように解釈することもできる、ということでも、ここまで読まされたら、もうそうだとしか思えない。日本警察の捜査能力を超えている。

芦沢央さんのプロフィール

1984(昭和59)年、東京生れ。千葉大学文学部卒業。2012(平成24)年、「罪の余白」で第3回野性時代フロンティア文学賞を受賞しデビュー。2016年刊『許されようとは思いません』が第38回吉川英治文学新人賞候補に、2018年刊『火のないところに煙は』が第32回山本周五郎賞候補となり、第7回静岡書店大賞を受賞、さらに、第16回本屋大賞にノミネートされる。2020年刊『汚れた手をそこで拭かない』が第164回直木賞候補、第42回吉川英治文学新人賞候補となった。ほかの著書に『悪いものが、来ませんように』『今だけのあの子』『いつかの人質』『貘の耳たぶ』『僕の神さま』などがある。(WEB上の紹介文より)

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