『大義』 今野敏 あらすじ 感想
はじめに
みなとみらい署の「刑事組対課暴力犯対策係」の刑事たちの、暴力団とは距離を置きながら関わり合い、一般市民を巻き込まないという信念で行動する物語が七つ描かれる。
登場人物
横浜みなとみらい署刑事組対課暴力犯対策係をバディで括ってみると、
諸橋夏男 係長 警部 通称「ハマの用心棒」
城島勇一 係長補佐 警部補
浜崎吾郎 ベテラン巡査部長 見た目は暴力団
日下部亮 係で一番の若手だが血の気が多い
倉持忠 三十代半ばの巡査部長 見た目は童顔だが柔術の達人
八雲立夫 巡査長 出世興味なし冷静 IT担当
あらすじ
第一話 タマ取り 5
神野義治 神風会組長 通称常磐町のとっつあん
代貸 岩倉真吾 子分一人 指定団体ではない
みなとみらい署の倉持がさる情報源から、神風会組長・神野義治の命が狙われているとういうタレコミを得た。
ネットの書き込みに、本牧のタツという人物が、「神野の玉(タマ)を取る!」と書き込んでいたらしいが、情報はすでに削除されている。
諸橋、城島、浜崎の三人が、とっつあんの家に向った。
・・・
話のオチは・・・(;^ω^)
第二話 謹慎 43
諸橋と城島が、伊勢佐木署の管内でチンピラ五人をボコボコにして?五人がのされている現場に倉持と八雲が駆け付けた。
そのあと、また同じようなことが起こった。
今度こそ、みなとみらい署の管内で、キャバクラの前だ。三人の男がのされて、諸橋と城島の身柄は県警本部に拘束された!三人の身柄はなぜかちょうど居合わせた?県警本部組対四課の土門と下沢が持っていった。
県警本部警務部監察官室・笹本康平警視の登場となり、浜崎に近づいてくる。
諸橋は、相声会の高井が、企業のM&Aに絡む恐喝に関与しているとの情報があり、その調査をしていたらしい。
相声会側は、一方的に暴力を振るわれたと、諸橋と城島を提訴し、諸橋と城島は謹慎となったが、ほんとうに彼らは三人に暴力を振るったのか・・・。
第三話 やせ我慢 79
稲村力男が出所した。
城島へのお礼参りを息巻いていたという。
だが、城島は気にもしていない風だ。
感心している日下部に浜崎がランチに誘った。
「ほんとうは、城島は気が弱いんだよ・・・」 !?
第四話 内通 115
覚せい剤の売人・川森元 三十二歳を県警本部と協力して張り込んだ。
車に戻ってきた川森と車を調べたが何も出ない。
県警本部の係長は、みなとみらい署の椅子を蹴った。
その結果、所轄から情報が洩れていると疑われて、笹本監察官がやってきて、一人ずつ聴取するという。
本部の不手際を所轄のせいにしたいようだ。
笹本監察官の狙いは、やはり諸橋係長を処分したいのか・・・。
第五話 大義 153
笹本康平監察官は、佐藤実本部長室に呼び出された。
なぜ、「ハマの用心棒」こと、諸橋はヤクザの神風会だけ特別扱いするのか調べろ!
と本部長が言う。笹本は逆らうことはできない。
そして、みなとみらい署管内で、ヤクザ同士の抗争が始まった。
笹本は本部長から頼まれた調査には、ちょうどいいチャンスだと思った。
被害者
坂東連合相声会 ― 田家川組 ― 真木瀬組 石本和馬 25歳
加害者(関西系)
直参・茨谷興吉 ― 舎弟・名田康一 ― 兼高博 28歳
やられた方のヤクザは、病院へ。
だが、笹本が諸橋から聞いたところでは、仕返しの「大義」のための入院で会って、大した怪我はしていないという。
笹本は、諸橋と城島に張り付いた。というか、迷惑がられつつも行動を共にした。
・・・
笹本は、少しだけ、諸橋と城島のことが理解できたような気がした。
だが、そんな説明で、現場にも行かない本部長が納得してくれるとは思えなかったが・・・。
第六話 表裏 189
諸橋と城島は、企業恐喝などの疑いで、五十田というヤクザについて、神風会に聞き込みに行くと、増井というフリーライターが先客で居た。
彼は、神風会から話を聞けないと分かると、諸橋と城島につきまとうようになり、とうとう諸橋と城島がターゲットにしていた五十田とつるむようになった。
ヤクザと仲良くなっても、あとで痛い目に合うからよせと諸橋と城島からの忠告も無視していたが、ある日、諸橋の携帯に増井から助けてくれと連絡が入った・・・。
第七話 心技体 229
となりの管轄にできた新しい暴力団事務所のガサ入れに、みなとみらい署の組対課暴力犯対策係も応援することになった。
そのとき、見かけが弱そうな倉持刑事に、ガサ入れ前の暴力団事務所のチンピラが、舐めた態度取っていたのであるが、本部の笹原係長にそれを見られていた。
後日、報復が始まりそうだということで、ちょっかいを出してきた関西系の多嘉井組の事務所と久仁枝組の事務所の双方を監視していると、久仁枝組の数人が飛び出して行った。
街中で見つけた多嘉井組の若い連中に報復を仕掛け行ったらしい。
諸橋係長は、本部の笹原係長に連絡して、現場への応援を依頼した。
じきに、両係長らは現着し、喧嘩がいまにも始まりそうな状況だ。
諸橋係長は、こともあろうに、ひ弱に見える倉持刑事に喧嘩を終息させよと命じた。
それを聞いた、本部の笹原係長は「あいつで大丈夫か!」と心配するが・・・。
感想
みなとみらい署 暴対係の警察官の大変さが良く分かる。
だが、現実の警察組織は、ほんとうに一般市民を守ってくれているのだろうか。
保身や自身の出世しか考えていないように見える警察組織において、こんな警察署があったらなと思わせる「ハマの用心棒」とその仲間たちの行動には、応援したくなるものがあり、中編シリーズも読んでみようかなと思わせるのである。
刑事ドラマは、ミステリー・謎解きとは違い、人間そのものが前面に押し出されて絵がかれる点が大きく違うように感じるので、好みは別れるところだが、太陽にほえろを見て育ち、西村京太郎も30冊くらいは読んでいる私にとって、今野敏も少し気になっているところである。
今野敏さんのプロフィール
1955年北海道生まれ。78年「怪物が街にやってくる」で第4回問題小説新人賞を受賞。2006年『隠蔽捜査』で第27回吉川英治文学新人賞、08年『果断 隠蔽捜査2』で第21回山本周五郎賞、第61回日本推理作家協会賞をダブル受賞。17年「隠蔽捜査」シリーズで第2回吉川英治文庫賞を受賞。(本書の紹介文より)
〆