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『カインは言わなかった』 芦沢央 長編ミステリー

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『カインは言わなかった』 芦沢央 あらすじ 感想

目次

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P8  第一章 降板
P64  第二章 絵の中の嵐
P141 第三章 一日前
P202 第四章 群舞
P263 第五章 その前の世界
P336 エピローグ
P356 主要参考文献

登場人物


藤谷誠 兄 現HHカンパニーダンサー 舞台芸術「カイン」の主役
藤谷豪 弟 画家 父に似て長身のイケメン
その母 金沢生まれ
その父1 フランス人
その父2 日本人かな
嶋貫あゆ子 誠の恋人
皆元有美みなもとゆみ 豪の恋人
望月澪 豪の絵のヌードモデル
古永 誠の同級生で弁護士

誉田規一ほんだきいち 舞台芸術集団「HHカンパニー」主宰
その妻 栗田朋子

尾上和馬 現HHカンパニーダンサー
江澤智輝 元HHカンパニーダンサー (誉田規一の)被害者の会主宰
宮木 元HHカンパニー (誉田規一の)被害者の会

松浦久文
その妻 和香子 (誉田規一の)被害者の会
その娘 穂乃果 元HHカンパニー元ダンサー

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あらすじ


公演直前に姿を消したダンサーの藤谷誠。

子どものころ、藤谷誠の美しき画家の弟・豪を見殺しにしそうになった事件。

失踪した藤谷誠の代役として主役「カイン」に選ばれた尾上和馬は、なんとシェアハウスでの藤谷誠のルームメイト。

  1. 主役の藤谷誠は、なぜ失踪したのか。
  2. 代役は、なぜ尾上和馬なのか。
  3. なぜ、舞台監督の誉田は、尾上和馬からスマホを取り上げたのか。

HH(ダブルH)カンパニーは、「世界の誉田(ほんだ)」と呼ばれるカリスマ芸術監督が率いるダンスカンパニー。

今回の公演の主役は、カイン。

旧約聖書において、弟のアベルを殺害し、「人類最初の殺人者」となった男である。

[登場人物] の章(上)に書いた人物たちの、それぞれの目線が何回も入れ替わり物語は進んで行く。

・・・

そして、「まさか、今から事件が起こる!」

と期待したとき、もうそこには死体があった。

そのとき、凄まじいスピードですべての物語がつながってしまう。

読者は、事件の全容を理解するのである。

感想

舞台芸術界でのダンサーたちの嫉妬や野心も描かれており、舞台監督の指導の凄まじさに驚く。この世界に労働基準法は無関係なのか。誰も逆らえない誉田の指導法がいくつもの犯罪の火種を振りまいているように見える。

「芦沢央が放つ、脳天を直撃する傑作長編ミステリー」と紹介されているが、探偵または探偵役が謎解きをするわけではなく、現在の状況 → 犯罪が起こるまでの物語 → 事件 → 事件直後の物語 → 「それは、絶対誰にも話すな」 → カインは言わなかった → 公演 → 犯人逮捕 → 犯人逮捕後の物語 といった流れの中で語られ、真相が読者の前に明らかになる。

このため、探偵が謎を解いたというスカッと感は無いが、あらすじであげた三つの謎は全て解決する。

ただ、なぜ被害者は殺されなければならなかったのか、誉田(ほんだ)は本当に才能ある監督だったのか?
一応、答えは書いてある(と思う)が、この辺の解釈はやや難解であると思う。

最後に、バレエ評論家による公演「カイン」についての評論文で締めくくるという小説全体の演出はとてもいいと思うが、なぜ評論家が、主役でない男について語たることが出来たのか、という謎が(私の中で)派生してしまった。

芦沢央さんのプロフィール

1984年東京都生まれ。2012年『罪の余白』で第三回野生時代フロンティア文学賞を受賞しデビュ―。2017年『許されようとは思いません』が第三十八回吉川英治文学新人賞候補。2018年『ただ、運が悪かっただけ』、2019年『埋め合わせ』がそれぞれ日本推理作家協会賞短編部門候補に。2018年『火のないところに煙は』で第七回静岡書店大賞受賞、2019年本屋大賞、第三十二回山本周五郎賞ノミネート。他の著書に『悪いものが、来ませんように』『今だけのあの子』『いつかの人質』『雨利終活写真館』『獏の耳たぶ』『バック・ステージ』(本書の紹介文より) 〆

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