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『お探し物は図書館まで』 What you are looking for in the library

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『お探し物は図書館まで』 青山美智子 あらすじ 感想

目次

はじめに

この小説は、ある小学校に併設されたコミュニティハウス内の図書室に居る不思議な司書の小町さゆりさんが悩める五人の人生に光を当てる清々しい癒しの五つの物語である。

あらすじ 感想

一章 朋香 二十一歳 婦人服販売員

藤木朋香 21歳 東京で就職 総合スーパーエデン勤務 羽鳥区
沙耶 21歳 朋香の友人 彼氏は医者
沼内さん 55歳 朋香の勤務先のパートリーダー
桐山君 眼鏡売り場の男の子 25歳
小町さゆり 47歳 司書
森永のぞみ 20代 司書見習い

藤木朋香は、田舎が不便だからという理由で東京に就職した。
このままでいいのだろうか。
でも、不便な田舎には戻りたくなかった。
そして、転職するパワーもなかった。
このまま働くと、社員の朋香は35歳くらいで部門チーフとなるが、パートさんをまとめるのは大変そうなので気が進まない。

転職するにしても、転職サイトのスキル欄にExcelくらいは書きたいと思った。
桐山君との雑談で、区がやっている無料のパソコン教室を教えてもらい登録した。
パソコン教室をやっているコミュニティハウスとやらに行ってみると、男性だと思い込んでいた講師は女性だった。

そして、講師の先生は、本で勉強するのなら、コミュニティハウス内の図書室を利用すればいいよと教えてくれたのである。
さっそく、図書室に行き、司書の「小町さゆり」さんに、希望する本や転職したいことなどを伝えて、リストを印刷してもらった。

すると、パソコン関係の本に混ざって『ぐりとぐら』という文字が印刷されていた。

数日前、総合スーパーエデンで、朋香が接客したご婦人がクレームを付けてきた。
あとから出社した上司の男性は「それくらい、うまく対応してよ」と言うので泣きたくなった。
再度やってきたそのご婦人の前に立ちはだかったのは、思いがけずもパートリーダーの沼田さん55歳だった。

彼女は、クレームを付けてきたご婦人を納得させたばかりか、その服に似合うスカーフまでも買わせてしまったのである。

朋香は自分が社員なので、どこかでパートさんを馬鹿にしていたことに気づく。
そして、つまらない仕事だから辞めようと考えていた婦人服売り場の仕事すら出来ていなかった自分に気づいた。

朋香は、部屋を片付け、「ぐりとぐら」が作ったカステラを自分で作ってみることにした。

このあとの、パートの沼田さんとの会話や桐山君、そして司書の小町さんらの言葉が朋香には刺さるのである。

まあ、ハッピーエンドやな。

二章 諒 三十五歳 家具メーカー経理部

海老川さん アンティークショップ「煙木屋(えんもくや)」の店主
浦瀬諒 35歳 主人公 タイトルのとおり
比奈ちゃん 25歳 諒の恋人 いいなあ
貴美子さん 35歳 比奈の姉 独身 大阪のテレビ局勤務
恵梨香さん 32歳 比奈の姉 プラハ在住 チェコスロバキア人と結婚
田淵さん 経理部 部長
吉高さん 経理部 二十代女性
那須田さん 煙木屋の元常連の人

諒は高校生の時、まっすぐ家に帰りたくなかった日、ひとつ前の駅で降りて、「煙木屋」という骨董屋へ行った。
それから、そこに通うようになり、いろいろ勉強した。

だが、今はその店はもう無い。
だから、自分がアンティークショップをやりたいと思っているが、まだ資金が足りない。

今日は有休で、諒は比奈とコミュニティハウスの「鉱物と遊ぶ」という講習会に参加した。

(おや、第1章でもコミュニティハウスが出てきたな。ひょっとして繋がってる???)

ついでに諒は、図書室に寄って、起業や会社を辞める本を探した。
見つからないので、奥にいた司書の小町さんに聞いたら、手渡されたリストには、それらしい本のほかに『英国王立園芸協会と楽しむ 植物のふしぎ』という、間違ったのかな、と思うようなタイトルの本もあったが、全部借りた。

諒は会社で嫌なことがあって、うっかり恋人の比奈ちゃんにあたってしまって後悔した翌日、司書の小町さんがコミュニティハウス通信で紹介していた『猫ばかりを集めた書店』のある三軒茶屋に足を伸ばした。(小町さんに導かれているよ~♪)

そして、店主の安原さんに、骨董屋を開きたいことなどの悩みをじっくり相談した。
安原さんは、「大事なのは、運命のタイミングを逃さないってことじゃないかな」と言う。

そして、比奈ちゃんに先日の態度を謝って、自分の夢を話した時、おそらく彼はタイミングを逃さなかった、ということだろうと思った。僕がそう思った続きの話は省略、あしからず・・・。

三章 夏美 四十歳 元雑誌編集者

崎谷夏美 同上
崎谷修二 夫 イベント会社勤務
双葉 子

夏美は37歳のとき妊娠。万有社という出版社の編集部だったが、出産から復帰すると資料部への異動を告げられ、頑張って復帰した夏美はやる気を失った。

だが、子育てと資料部との両立さえ難しいことが分かってきて、娘の双葉ちゃんと過ごせる場所がないかと考えていたら、いつだったか、園長先生がコミュニティハウスの図書室のキッズスペースの話をしていたのを思い出した。

(夏美さんもまた、あの司書さんに出会って、魔法を掛けられるのだな、と思った。)
「何をお探し?」

その決め台詞を聞いて、読者の私も、フフフと思ってしまう。
さあ、どんな魔法かな?

お探し物は、モヤモヤの解決手段? 育児に必要な「余裕」とは? 
そして、お薦めされた本の1つに『月のとびら』(著者:石井ゆかり)があった。

ある日、自分が担当していたみづえ先生に会える機会が舞い込んだ。
だが、「育児あるある」が発生。子どもが幼稚園で発熱との連絡があり、先生には会えなかった。
夫も忙しいが、「なんで女ばっかり・・・」と幼稚園の先生の前で愚痴が出て驚かれた。

そんなとき、みづえ先生が会社に会いに来てくれた。
ランチをいっしょに食べて、お話をして泣いて、先生の言葉を聞いたら落ち着いた。

そうなると、不思議なことに、今日は子供がすっと寝てくれて、『月のとびら』を読む時間ができた。

こんなことが書いてあった。

「心の中の二つの目。ひとつは、理性的に論理的に眺める太陽の目。もうひとつは、感情や直感でそれを捉える月の目」
「私たちは、どんなに努力しても、思い通りにはできないことに囲まれて生きています」
不思議だけど、本を読んでいると時々、こんなふうに現実とのシンクロが起こる

―そうだ、そのシンクロは私も良くあります。

夏美さんは、借りた本を返しにいきます。
司書の小町さんにお礼を言うと、
「どんな本もそうだけど、書物そのものに力があるというよりは、あなたがそういう読み方をしたっていう、そこに価値があるんだよ。」

―どうも、わたしの頭のなかでは、小町さんの姿は、安藤なつさんになっているようだ。

やがて、被害者意識から脱却し、行動した夏美さんには、あたらしい展開が待っていました。
略・・・

四章 浩弥 三十歳 ニート

菅田浩弥はニート、母さんは近所の小学校に併設されているコミュニティハウスでの野菜即売会で野菜を買って来たり、習い事をしたりしている。

浩弥は、追加の買い物を頼まれてコミュニティハウスへ行き、藤子不二雄の「21エモン」に登場するモンガ-を見つけた。
聞けば、図書室の小町さゆりさんが作ったと聞き、さっそく顔を見に行った。

浩弥がレファレンスされた本は『ビジュアル 進化の記録 ダーウィンたちの見た世界』だ。

同窓会へ行って、立派になった同級生らとは、話が合わないので、会食は欠席した。

そして、『ビジュアル 進化の記録 ダーウィンたちの見た世界』を読むために、コミュニティハウス内の図書室へ通うのだった。
その図鑑を見ていて、好きだったイラストを描いてみたら、のぞみちゃんがそのグロテスクな画風をとても気に入ったのだ。

ある日、出来の良い兄が海外から東京に帰ってくるという。母は大喜び。自動的に浩弥の居場所がなくなる・・・。

ダーウィンの本を読んでいると、ウォレスという人物がよく登場する。本当はウォレスが先に「種の起源」を発表しようとしているのを知って、ダーウィンが出し抜いたようだ。と理解しようとしたら、小町さんは、実際のところどうだったなんて本人にしかわからないよ、と忠告された。

コミュニティハウス内の掃除のおばさんが急に辞めることになり、浩弥がピンチヒッターになることが決まった。コミュニティハウスにはいろんな人がやってくるのである。

浩弥は、ついに自分の居場所と目標らしきものを見つけたようだ。

五章 正雄 六十五歳 定年退職

九月で定年を迎えた権野正雄さんは、さて、これから何をすればいいのか、と思った。
でも、思っていたより年寄りじゃない自分に驚く。

でも、趣味は無い・・・。

妻はコミュニティハウスでパソコンの講師。そこで囲碁の教室のチラシを取ってきてくれた。
矢北先生に囲碁を習いながらも、先生の熟年離婚の話を長々と聞かされ、囲碁のルールが頭に残っていない。帰り際に図書室があるのに気づいて、囲碁の本でも借りようかと思った。

大きい女性がいた。もちろん、小町さんである。
定年退職したおじさんも気おくれするような、いや観音様のような表情である。

さて、観音様が薦めてくれたのは、囲碁の入門書のほかに「げんげと蛙」という草野心平さんの詩集のようだった。もらったフェルトの付録はカニだった。

気に入った詩を書き写してあつめると詞華集(アンソロジー)になるという。

妻の愛媛の親戚から大量のみかんが届いたので、管理人さんにお裾分けとして持って行くと、立ち入り禁止の管理人室に招いてくれて、少し話をした。

「社会ってなんでしょうね。権野さんにとって会社が社会ですか」

娘の千恵が働く本屋に行き、休憩時間にランチをしながら話した。
千恵のバッグに小町さんからもらったカニが付いていた。
わたしはこれまでずっと、前へ前へと歩いてきた。人生は縦に伸びているものだと思っていた。
横歩きの景色には何が見えるだろう。

このあと正雄さんは、奥さんとピクニックに行くのだ。(あ、だいぶ省略したかも・・・)

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青山美智子さんのプロフィール

1970年生まれ、愛知県出身。横浜市在住。大学卒業後、シドニーの日系新聞社で記者として勤務。2年間のオーストラリア生活ののち帰国、上京。出版社で雑誌編集者を経て執筆活動に入る。第28回パレットノベル大賞佳作受賞。デビュー作『木曜日にはココアを』が第1回宮崎本大賞を受賞。同作と2作目『猫のお告げは樹の下で』が未来屋小説大賞入賞。他の著書に『鎌倉うずまき案内書』『ただいま神様当番』。(本書の紹介文より)


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