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この記事の目次

人間は価値を生むための装置でもないし、競争で勝つための機械でもないんですよ。

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令和元年の人生ゲーム』 麻布競馬場

はじめに

私も、第三話の沼田君のようになりたいと思うのである。そのセリフが『脇谷くん、人間は価値を生むための装置でもないし、競争で勝つための機械でもないんですよ。』このあとのセリフもいい。

さて、物語は、令和の若者たちの青春の苦悩が描かれているのだが、昭和派のわたしとは、かなり考え方も違うのである。とはいえ、わたしも脳みそが昭和のままであるはずもなく、平成も令和も経験して進化し、スマホも一応使いこなしている…。

目次

あらすじ・感想

第一話 平成28年(2016年)

徳島の高校を卒業し、慶応義塾大学商学部に入学した主人公が、ビジコン運営サークル「イグナイト」で自分探しをする話。

主人公 一年生 商学部 男
吉原  二年生 法学部 イグナイト代表 元現役高校生起業家
沼田  二年生 経済学部 フチなしメガネ 代表になるはずだった男
平井  二年生 文学部
村松  一年生 主人公の友人
宇治田 人材系最大手企業パーソンズ社長 伝説の起業家 40代半ば

第二話 平成31年(令和元年 2019年)


早稲田大学経済学部を卒業し、大手町にある人材系最大手企業のパーソンズに入社した女性は、商社マンの父と実家が土地持ちの母との間に生まれ、何不自由なく育つが、この実家の居心地が良くないらしい。

彼女は、営業本部バイト営業部配属となり、担当は五反田のバイトの求人広告獲得となった。
会社では同期100人中6人が、二ヶ月で退職していたが、ノルマ管理の厳しい浜口課長のやり方が自分には合っていて居心地はいい。

ただ、そのやり方は、時代錯誤的であることも気づいている主人公は、友人の由衣夏との関係や過保護な母との関係について考えて、ついに一人暮らしを決意するのである。それをランニングで例えている。
また、親しい人のもとから去るのが平気なのかと、由衣夏のことを思い出していた。

浜口課長 営業部2課の女ボス
由衣夏 主人公の同期 ハイキャリア営業部 青山学院大学卒 地方出身
小林 主人公と同じ部署に配属されるも、コンサルに転職
栗林 由衣夏と同じ部署に配属されるも、残業も多いが、同期とよく飲む
主人公 パーソンズ新入社員
沼田くん 経営企画室の研修で・・・
前橋さん お茶の水女子大卒 経営企画室の研修で沼田くんに起業アイデアを酷評される
英梨ちゃん 内定同期 外資系の投資銀行へ入社

第三話 令和4年(2022年)

社会人7年目を迎えた僕、が主人公。

主人公は、会社の仕事で、大学生向け大型シェアハウスの学生の指導係(チューター)を任されている。

シェアハウスの椎名さんという女の子を中心に、地域猫を世話しようという話が盛り上がり始めた。

主人公がゼミの1年後輩の冴子と離婚したころ、腐れ縁の長谷川が結婚することになり、疎遠になっていた仲が復活した。

だが、長谷川と疎遠になったのは、自分が冴子と付き合うようになったのが原因で、今は長谷川を取られたような気分になっている身勝手な自分がいた。

『Z世代に関する解説本より「頑張っても必ずしも報われない社会で疲弊するより、日々に小さな幸せを見つけるほうがいい」』 (えっ?)

地域猫の保護活動は、市会議員も巻き込んで盛り上がりを見せたが、この活動をよく思っていない人々の苦情が市役所に殺到して、活動は暗礁に乗り上げた。リーダーの椎名さんは落ち込み、正しいことをして安心を得たかっただけのシェアハウスの仲間たちは、シロクマになる活動に移行しはじめた。(?)

(中略)わけあって、主人公と沼田くんと脇谷の三人は、椎名さんの山中湖の別荘で、二泊三日。
そこで、主人公は物思いに耽る。『―――世の中には、誰かを置いて去っていった側と、置いていかれた側があって、多くの場合、僕たちは人生の時々によってその両方を、加害者と被害者を兼ねることになる。僕がある時点では冴子のために長谷川を置いて去っていった一方で、その冴子に置いていかれて、今度は長谷川に置いてかれようとしているように。』

『人生とは、次々と出くわす交差点をすり抜けて誰かを置き去りにしながら走ってゆく行為の連続なのかもしれない。』

第四話 令和5年(2023年)

2023年4月、主人公は高円寺にある老舗銭湯「杉の湯の未来を考える会」に加わった。
2022年、明治大学卒業、千駄ヶ谷のPR会社勤務開始。
杉の湯:乃木寛人34歳の曾祖父が創業。創業90年。
乃木寛人の参謀が、沼田である。

上記の4人は、オウンドメディア(自社運営メディア)を立ち上げることになった。

いろんな人の意見を聞くと、老人にとっては昔ながらの静かな銭湯が良く、うるさいイベント施設のようにしないでほしいと思っていることが分かった。

寛人さんは、まわりの人たちの意見を聞きつつも、銭湯を新しく変えたいようだ。
ただ、自分で考えずに、人の意見ばかり聞いている。
沼田は、それを分かっていて寛人さんを支えようとしている。

『DXだとか何とか言って、老人を平気で置き去りにする風潮には、もうウンザリです。』と、人気Youtuberの湯狂老人卍がネットで意見を言う。

こうして、寛人さんは、公然といろんな人に非難されるようになっていった。

寛人は、2号店を豊洲にオープンするという。サウナ、コミュニティスペース、マルシェ、DJイベント、子供向けワークショップ、クラフトビール風呂 などをやろうと言う。
そして、とうとう常連客の年寄が多い高円寺店を閉めようと話をする。

主人公は、そのことで、切り捨てられる人に考えが及ぶ。
切り捨てられる人とは、寛人さんを信じてついてきた考える会メンバーと「杉の湯」を何十年も支えてきた常連客たち。

主人公は、これからどうするのか悩み続ける。

著者プロフィール

1991年生まれ。慶応義塾大学卒。2021年からTwitterに投稿していた小説が「タワマン文学」として話題になる。
2022年、ショートストーリー集『この部屋から東京タワーは永遠に見えない』でデビュー。(本書の情報より)

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心に残る名言

あらすじの中で書いたので、そちらをどうぞ。

書籍・著者情報

・形式  単行本・四六判(寸法:‎13.1x18.9cm)
・出版社 株式会社文藝春秋
・頁数  208頁
・著者  麻布競馬場
・発行  2024年2月25日


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