第一章
秋津俊介は、大手飲料企業の株式会社シェリダンに揚水制限を相談するが、営利企業であるシェリダンは事業と渇水の因果関係は証明できないので、揚水制限はしないという。
第二章
秋津の妻がブログを立ち上げ現在の状況を広く世間にアピールした。すると、悪い噂の現市長に対抗して市長選に立候補するという門倉達哉という男と共闘することになる。
そんなとき、地元の銭湯で林業会社の経営者の功刀清次郎(くぬぎせいじろう)が地元民に語った内容が気になった。地元民は大企業の飲料水企業に取り込まれていた。
功刀清次郎氏は、林業の衰退を以下のように嘆いている。
林業の衰退
- 伐採した木々は山から搬出するきまりだが、放置して「放置間伐」となっている。大企業はこれを「水源涵養林」と呼んでECO企業をアピールする
- 広葉樹でもない木を「放置間伐」すると水は地下に貯まらず、雨が降っただけ斜面を流れ、そのうち木の根っこが露出して地盤が緩み、TVで放映されている土砂崩れの原因となる
- 木材に適する杉やヒノキを育てるのに五十年ほどかかるが、木材輸入が自由化され外材が使われるようになると国産の木材の需要が下がり売れないため高い相続税を払って相続しても使い道がなく管理の手間や固定資産税がかかるだけなので、大企業や外国企業に売ってしまう(外国企業が日本土地を買える日本の制度が悪い。全部買われたらもう日本ではなくなる!?)
- 国の助成金の制度も悪い、植林しただけで助成金はもらえるから、あとはほったらかしになる
- きちんと水源涵養せずに地下水ばかり汲み上げると地盤沈下が起こる
第三章
秋津らは、ひとまず簡易水道を設置して生活水を確保した。
大企業と癒着した現職市長に門倉は勝てるのか。
地縁の強固な現職市長の牙城を崩す夢は叶わなかった。
門倉にも不信感を抱き始めていた秋津は複雑な心境である。
その日の夕方、八ヶ岳市の広域で断水事故が発生した。秋津たちの皮肉な運命が待ち受けていた。
市長が動いた。市長は水企業各社と話し合い、当面の取水制限を約束させた。するとたちまち水源が回復し、簡易水道の水がでたばかりか、ビレッジの井戸水まで復活したのである。
これでは、さすがに水企業も因果関係を否定できなくなり、今後も一定量以上の揚水を認めない取水制限に応じざるをえなくなった。
結局、日本人は事が大きくならないと動かないし、動けないのだ。今回のような雨降って地固まるようなストーリー展開になることは少ないのではないか。
とにかく、外国人に山や土地が買われるのは阻止できないのか。日本の政治家は何をしているのか。こんな国はほかにはないと言われている。お人よしもいいところだ。
そんな危機感を共有するため、本書の参考文献をリストアップしておきます。是非読んでみてください。
参考文献
人間関係
夫:秋津俊介 飲食店「森のレストラン」経営 八ヶ岳南麓 標高1,200メートル
妻:秋津真琴 飲食店「森のレストラン」経営
子:翔太
夫婦はともに調理師免許を持つ
松井貴教 東京時代の友人 弁護士 妻は交通事故で他界
松井美由紀 娘 7歳
隈井和久 ログハウスオーナーのひとり 45歳 ジャムを製造
篠田清子 ログハウスオーナーのひとり 60代
篠田圭一 清子の息子 28歳 飲料水企業のシェリダン勤務
島本庄一 ペンネームは御厨京太郎のミステリ小説家
ダグラス・マッケンジー ドッグトレーナー
理沙子・マッケンジー ダグラスの妻 山岳写真家
不動産管理会社:八ヶ岳ホームズ
木内瑞恵 社長
千崎敏哉ちざきとしや
フクモト設備
福本泰
山梨日報八ヶ岳支局
樫尾憲太郎 記者
門倉達哉 市長選に立候補
門倉美和子 妻
書籍情報
・形式 単行本
・出版社 株式会社 光文社
・ページ数 300頁
・著者 樋口明雄
・発行 2019年11月30日
・分類 社会派小説
著者情報
1960年山口県生まれ。雑誌記者などを経て作家デビュー。南アルプス山麓に居を構え、執筆の日々を送っている。2008年、『約束の地』で第27回日本冒険小説協会大賞と、第12回大藪春彦賞をダブル受賞。主な著書に『ドッグテールズ』『許されざるもの』『ドッグ・ラン!』『風に吹かれて』『ダークリバー』。『天空の犬』に始まる山岳小説の人気シリーズ「南アルプス山岳救助隊K-9」などがある(ネットの情報から)
〆