猫はわかっている 村山由佳 有栖川有栖 阿部智里 長岡弘樹 カツセマサヒコ 嶋津輝 望月麻衣 人気作家7人が猫への愛をこめて贈る、謎と企みに満ちた作品集
猫は何でもわかっている。たぶん。きっと・・・・・・。(裏表紙より)
内容紹介
世界を取り戻す 村山由佳
北川九美 暮らしの情報誌副編集長で離れに住む。家族構成は、夫、長男高二で吹奏楽部、長女小五。
九美はとても忙しい日々を送っている。
加えて、思春期の娘の対応、吹奏楽部で副部長候補になり、部活や進学のことで悩み多き長男の対応。
そんなある日、自宅近くの動物病院での取材の仕事があり、偶然急患で運び込まれた老描と遭遇する。
かつて飼っていた猫の死に際を看取れなかった心残りから、飼い主が引き取りに来ないその余命数日のその老猫を
強引に引き取ってしまう。
もっと忙しくなり、度の合わない眼鏡の買い替えにも行けず、そのことが原因で、とうとう仕事で大きな失敗をしてしまうが。。。
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女か猫か 有栖川有栖
女性三人のロックバンドと一人の男性作詞家。四人はうまくやっていたのだが、ある実験をしてから関係が
おかしくなっている、と相談を受けた。
相談を受けたのは、英都大学推理小説研究会の江神と僕、有栖川有栖だ。
女性三人のひとり、小峰美音子の棲む小峰邸は昭和初期に建てられ、三百坪もある敷地には問題の離れがあった。
ロックバンドのミーティングでその離れが何やら「いわくつき」である話に興味を持った男性作詞家の三津木がその離れ
で一晩泊ってみることになった。
大学生らしい悪ふざけであったが、封印したはずのその離れで一晩過ごした三津木の頬には、引っかかれた傷跡が
ついていた。
女性三人とも三津木に好意を持っており、誰かが夜中に抜け駆けしたのではないかとの疑心暗鬼に陥っているらしい。
とまあ、この謎を解決して、彼女らの乱れかけたチームワークを取り戻してほしいというわけ。
推理小説研究会の江神の推理が冴える!
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50万の猫と7センチ 阿部智里
或る一家が、野良猫を飼い始めた。ニャアと名付けた。
耳に切れ込みがあったので、地域猫だと思い、餌を与えるようになった。
ある日、ニャアのお腹が大きいことに気づいた。アレ?不妊治療済だよね?
そして、かなり慣れてきて、そろそろ家の中で飼おうと考えていたころに、その事件は発生する。
実家の庭にいたニャアは、三匹の野犬に襲われ、お腹を食いちぎられたのである!
ニャアにメロメロだった父は、必死で車を運転し、動物病院へ急いだ。
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双胎の爪 長岡弘樹
私は、双子の父。陸也と海斗の。陸也の耳は私の耳たぶの形と随分ちがう。
土曜日の午後、公園でその親子は、二匹の生まれたての子猫を発見する。
近づこうとする子供たちを制していると、黒いカラスが黒い方の一匹を加えて飛び去った。
残されたのは茶トラだった。
猫嫌いな私だったが、あと一ヶ月もすれば家を出ていく定めなら、家で飼うことも反対はできなかった。
離婚の取り決めとして、それぞれ子供を一人ずつ引き取ることになっていた。
妻は陸也、私は海斗。二人は猫と遊ぶようになっていたが、いつしか海斗にはなつかなくなっていた。
そして悲劇が起こった。仕事帰りに家の方から上がる黒煙。まさか。
自宅まで来ると、すでに燃えている。わたしはキッチンで倒れていた妻を玄関に運び出し、子ども達を捜しに
家に戻ったが。。。
海斗には爪を噛む癖があった。
わたしは、火災当時の見守りカメラの映像から、妻の不思議な行動を発見する。
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名前がありすぎる カツセマサヒコ
清水麗亜は、ガールズバーでのアルバイト面接を受けようと考えたのは、初対面のおじさんと話すのは
就職面接の練習にもなりそうだという都合のいい言い訳で、本当は金欠になっていたのである。
生きるためには、働くしかない。
面接したガールズバーのエリアマネージャーは、麗亜の源氏名をミミと決めた。ミミは酒もいける口らしい。
そういえば、麗亜が昔、家で飼うことのなった拾い猫がミミで、どうやら外猫だったらしく、他の家ではタマと
呼ばれていて驚いた経験があるらしい。
そんな麗亜は、一か月経っても客が付かない。就職面接を終えて働いているガールズバーにやってきたのは。。。
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猫とビデオテープ 嶋津輝
伊部葉子と権田和夫は、学生時代のレンタルビデオのバイト仲間。今はもうお互い五十二歳。十年ごとくらいに再会する不思議な関係だ。
お互いに家族もいる。珠美(たまみ)は権田の奥さんで、今も葉子とは仲が良い。
ある日、タブレットでニュースを見ていると「権田和夫」の名前を発見する。
悪い予感は当たり、溺れた他人の子を助けようとして、権田は意識不明になったらしい。
伊部は、何年か前に権田と再開したときに、四匹も生まれた子猫に困っていた権田から、二匹をもらい受けていた。
そんな関係もあって、葉子は珠美に電話するが。。。
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幸せなシモベ 望月麻衣
高階千佳の一つ年上の姉は、お姫様のようで、自分は使用人のようだった。
そんな姉が妊娠したから、猫を預かってほしいという。
種類をきくと、優雅で気品のあるペルシャだというので、半年くらいいいかと思って預かった。
白いと思っていたその猫は、キジトラ柄だった。おまけに太めで、しっぽはたぬき。
ブサイク! 名前はミャオ。
ぶすっとした顔ばかりで、マイペース。
ところが、である。ミャオのしぐさを観察するうちに、気づいたことがある。それは。。。
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感想
「世界を取り戻す」 私も眼鏡派である。だが老眼があると架け替えがめんどうだ。でもコンタクトにしたところで、素敵な世界が取り戻せる気がしない。
「女か猫か」 このタイトルがどういう意味かと考えた。「私と猫のどちらが大切なの!」ということなのか、「女というよりは猫みたいなやつだなあ・・・」ということなのか。
そうではなかった。「女が犯人か、猫が犯人か?」だった。
「50万の猫と7センチ」 TNRについての説明があり、最近TVでも広告していると認識した次第。耳の先に切れ込みを入れるらしい。不妊・去勢済の印とのこと。地域猫としてみんなで見守ることが動物愛護ということらしい。お勉強になった。あらすじは途中までしか書いていないが、安心して最後まで読んでほしい。
「双胎の爪」 双子のうちひとりが持っていた爪を噛む癖を妻が利用して離婚時の子供の引き取りをスムーズになるよう仕組んでいた。そして、爪を噛まない陸也の耳たぶの形が自分とは違うことが引っかかったようだ。そんなことがあるなんてこの話を読むまでは知らなかった。双子の父親が違う可能性があるなんて、あなたは知っていたか!?
「名前がありすぎる」 私は、外猫というものを知らなかったが、昔からあるのだろうか。懐いた家が三軒あるとしたら、それぞれの家に顔をだして、違う名前で呼ばれたりするそうである。逞しい、二股三股ねこか!と思ったが、人間だったらどうかなと考えて、それ以上考えるのはやめにした。
終盤、思いもかけない人がガールズバーにやって来るという最悪の事態、このピンチは乗り切れないか。
「猫とビデオテープ」 昔のビデオ屋の受付に伊部さんのような女性がいると、アダルトビデオが借りにくいという話は、昔懐かしい。不思議な仲良し関係の三人の様子は、緊迫感もなく、むしろほのぼのとしている。そんな女友だちはいただろうか。微かな記憶も怪しい年齢になってきた。
「幸せなシモベ」 ペットを半年も預かって、情がうつらない人は少ないだろう。たまたま預かった猫のおかげで、猫の本質的な性格に気づくこともある。だから飼ってみたいが、わたしはマンション住まいなので動物は飼えない。
〆