悠々として急げ

 ~未知との遭遇 in books & libraries~

かか 宇佐見りん 第56回文藝賞、第33回三島由紀夫賞。

 

かか

かか

Amazon

 

~宇佐見りん~

1999年静岡県生まれ、神奈川県育ち。

 

~文藝賞とは~

1962年に創設された文学賞で、河出書房新社が主催し、以降年1回発表されている。
河出書房新社は同賞を小説ジャンルにおける「新人の登竜門」と位置づけて未発表の小説原稿を募集している。(Wikipediaから引用)

 

~三島由紀夫賞とは~

作家・三島由紀夫の業績を記念し新潮社の新潮文芸振興会が主催する文学賞。略称は「三島賞」。新潮社が芥川賞・直木賞と同種のカテゴリーを要求しつつ新しい才能を求めるべく打ち出したのが、三島由紀夫賞と山本周五郎賞である。(Wikipediaから引用)

 

裏表紙からの引用

19歳の浪人生うーちゃんは、大好きな母親=かかのことで切実に悩んでいる。かかは離婚を機に徐々に心を病み、酒を飲んでは暴れることを繰り返すようになった。鍵をかけた小さなSNSの空間だけが、うーちゃんの心をなぐさめる。脆い母、身勝手な父、女性に生まれたこと、血縁で繋がる家族という単位……自分を縛るすべてが恨めしく、縛られる自分が何より歯がゆいうーちゃん。彼女はある無謀な祈りを抱え、熊野へと旅立つ—。
未開の感性が生み出す、勢いと魅力溢れる語り。
痛切な愛と自立を描き切った、20歳のデビュー小説。

読書開始

このことばは、どこの方言だろう? と思って読み始めました。

“そいは” “虫眼鏡みたいなやつはないかん” “捕まえようとしるんですが” “掛かっているらしいけんど” “ぶうたれとりました”

 

似非関西弁だか九州弁のような「かか弁」とのこと。舞台は横浜のはずだが?

宇佐見さんは、静岡出身とのこと、よく分からないまま、読み進めました。

 

そして最初のところで、うーちゃんが旅に出る日とかか(母)の入院の日が同じであることと、旅の目的が、自分をちゃんと見つめ、かかを妊娠するためだといいます。かかは、おなかに腫瘍ができて、子宮の摘出手術をしないといけないのです。

 

うーちゃんの置かれている状況をまとめてみると、つぎのような感じでしょうか。

父(とと)が浮気で出ていき、残された家族。主人公のうーちゃんの母はそれが原因で発狂するけど、同居のジジとババは、いとこの明子(同居)ばかり可愛がり、娘のかかとその子であるうーちゃんと弟のみっくんには無関心。弟のみっくんも母のことには無関心で、結局母の世話をするのはうーちゃん。

彼女は、今ニュースでよく聞く「ヤングケアラー」でしょうか。

そのうーちゃんの心のものがたりである。と思う。

 

では、人物相関図です。

場所:横浜
ジジ、ババ
 ├夕子(亡くなった)、浩二さん(海外)
 │ └明子(和歌山から、同居、25歳)
 │  やまけん(彼氏の一人)
 └かか(離婚後に心を病む)、とと(浮気)
   ├うさぎ(うーちゃん、19歳)浪人中
   │     (SNSではラビと名乗る)
   ├みっくん(弟、高一)
   └ホロ(仔犬)

そして、物語は過去へ飛びます。

 

明子は、うーちゃんら家族を困らすようなことをする。

明子は何人も彼氏をつくり、何度も外に泊まりにいったりする。

そのとき、うーちゃんがババから、ととがかかの彼氏だったころの話を聞いて、かかへの信仰を懐疑し始めたというのは、いったいどうゆうことだろう。

“自分がどういう過程を経て生まれたか思い知らされました。” 。。。

 

“インターネットは思うより冷やこくないんです。匿名による悪意の表出、根拠のない誹謗中傷、などというものは実際の使い方の問題であってほんとうは鍵をかけて内にこもっていればネットはぬくい、現実よりほんの少しだけ、ぬくいんです。”

と、うーちゃんは言う。

(この感覚は、わたしにとっては新鮮な情報でした。)

 

この小説の最初のところもそうですが、女性の生物学的な描写もあります。でもこれは必要なことでした。

 

“うーちゃんはにくいのです。ととみたいな男も、そいを受け入れてしまう女も、あかぼうもにくいんです。そいして自分がにくいんでした。”(なぜ、自分までにくいと思うのか。)

“自分が女であり、孕(はら)まされて産むことを決めつけられているこの得体の知れん性別であることが、いっとう、がまんならんかった。“(これが、うーちゃんの悩みでしょう。)

 

“今度こそうーちゃんはかかを壊さずに出会いたかったかん、たったそいだけのために、かかをにんしんしたかった。”

(うーちゃんもかか以上に悩んでいるようです。)

 

さいごは、なんかすっきりした感じなのでしょうか。

複雑な家庭環境の少女、女性のこころの変化を、まさに感じ取るような作品と思いました。

そして“かか弁”は、読みなれてくると心地よく響いてくるのです。