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ミステリーだと思って手にしたこの本は、とんでもないホラーだった! 『火のないところに煙は 芦沢央』

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目次

まえがき

この小説家の以前に読んだ本が面白かった記憶があったので、図書館で借りたのだが、やや苦手なホラーっぽいところがあるのに気付いたのは、第一話を読み終えるころだった。
既に読み終えそうなので、もう手遅れだった。仕方がない。第二話も読んでみることにした。

・・・

登場人物

各章の初めに記載しました。

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あらすじのような(感想・つぶやき含む

第一話 染み

・瀬戸早樹子 せとさきこ
・角田尚子 つのだなおこ 広告代理店
・神楽坂の母、占い師
・榊さん オカルトライター
・主人公の私 小説家

占い師に未来を占ってもらった主人公の友人の早樹子の友人の尚子さんからの相談が始まりだった。
占い師の言った言葉に、尚子さんが付き合っていた彼がキレて、暴言まで吐いて、金も払わずに帰ってしまったところから、おかしなことになり始めた。


そう、人間関係がおかしくなるのは、ほんのちょっとしたことがきっかけなのである。
この第一話は、尚子さんのその彼が事故死したあと、尚子さんの仕事である電車の中吊り広告のポスターに染みが付くという事案が多発し、小説家である主人公の私の友人で、尚子さんの友人でもある早樹子から相談が舞い込んだというわけである。

読み終わったあとも、少々怖いのである。
あなたもこの本に着いている「しみ」をよーく見てみるといい。わたしは老眼でルーペで見ないと分からなかった。

第二話 お祓いを頼む女

・鍵和田君子 フリーライター 榊さん(オカルトライター)との仕事で私と知り合った。
・平田千惠美 ひらたちえみ 

どうやら、第一話の続きらしい。完全な続編ではなく、話題をリレーした別話のようである。

今回は、君子さんが語る。祟り松(たたりまつ)の記事から始まりそうだ。
祟り松とは、数か月前、オカルト特集のムックに掲載された記事で、西千葉駅前にある有名な心霊スポットの話。
突然、君子さんのファンを名乗る女から仕事場に電話があり、「お祓いをしてください」と頼まれたらしい。

ここからの君子さんと平田さんの会話のテンポが物凄い!
あり得ないほどの早いやりとりは、M-1の高速漫才のようだ

と、少し怖いというより、面白いと思って読んでいくと、最後にはゾッとするので、夜には読まないほうがいい。

妄言(「火のない所に煙は」を改題)

・塩屋崇史 しおやたかふみ
・塩屋由美 崇史の妻
・左隣の家の人 前原清次郎、寿子、康司郎
・右隣の家の人 オダさん

塩屋崇史さんは、埼玉県の郊外に家を買う。

さて、いい物件を見つけて、幸せな家族に、おしゃべりで世話好き?の隣人「寿子さん」がほんとうの顔を見せだす。

「寿子さん」から夫の浮気現場を見たという話しを吹き込まれた崇史さんの妻は。。。
可哀そうな、何もしていない夫。。。
どんどん夫婦関係が崩壊し、妻は流産してしまう。

「浮気の噂」を吹き込んだ隣の寿子さんが見た光景は何だったのか。
妄言の正体に気づいたとき、私は「ニワトリが先か卵が先か」「煙を出すために火をつけたことになるのか」などと考えたりした。

助けてって言ったのに

・智世 ネイルサロン勤務
・和典 智世の夫 フリーカメラマンで稼ぎが少なく奥さんが稼いでいるのがコンプレックス
・義母の静子 和典の母
・陣内さん 拝み屋

今度は、智世さんから聞いた話。

夫の実家で暮らすようになって、智世さんは奇妙な悪夢を見るようになった。
義母とはうまく行っているのに、である。

火事の中で、自分が悶え苦しんで死ぬ夢である。
その夢には、おぼろげに女の人が現れて、「助けてって言ったのに」と言う

その夢を見たのは、智世さんが初めてではなかったのだ。
なんと、義母の静子も見たという。そして静子は、高熱にうなされ、二日間生死の境をさまよったのだという。

もう引っ越すしかないと考え、ようやく買い手が見つかったのだが、成約記念に撮った写真が心霊写真のようになってしまったから、売れるものも売れなくなり、結局その家で暮らし続けることになった智世さんは、その進行性の悪夢を見続けたある朝、高熱のため亡くなった

オカルトライターの榊さんが思いついた仮説は、信じられないものだった。
怪奇現象人為現象(論理的現象)が入り混じると、何かすっきりしないものが残る。

誰かの怪異

・岩永幹男 新大学生 Tアパートに暮らし始めた。
・粟田さん Tアパートの隣人 50代女性一人暮らし 十五年前に四歳の娘を失くした。
・中嶋さん 同じ学科の友人
・岸根さん 中嶋さんの高校のクラスメート 霊感あり

岩永幹男さんから聞いた話。
岩永さんは四月から千葉の大学に通うため、大学近くのTコーポに移り住んだ。
はじめはいい物件だと喜んでいたのだが。。。

シャワーの排水口に長い髪の毛が詰まったり、テレビのリモコンが勝ってに切り替わったり、鏡に眼鏡を掛けた高校生くらいの女の子の姿を見たりするようになった。
不動産屋に聴けば、十五年前に隣の粟田さんの四歳の娘が誤飲事故で亡くなったという。

四歳の子で、しかも今はその隣人とも仲はいいので、岩永さんは考えるのをやめた。
秋になって酔っぱらった大学の友人の中嶋を泊めることになったとき、その現象が再発したのである。
その友人もシャワールームで長い髪を発見したため、岩永さんはことの次第をその友人に話した。

すると、その友人は霊感の強い岸根という同級生がいるからと、さっそく翌日呼び寄せたのである。

彼は、水の流れが悪い角部屋のこの部屋には霊がたまりやすいと言って、共用廊下の洗濯機に祈祷済の盛り塩をし、岩永さんと粟田さんの部屋の扉にお札を貼った。

だが、その晩に岩永さんは金縛りに会い、粟田さんは箪笥が倒れて足を骨折するという事件が起こった。根岸さんに電話すると「言いつけを守らなかったのでは」と言われて確認すると、盛り塩が崩れて、粟田さんの部屋の扉のお札が破られていた

拝み屋陣内さんが登場する。
盛り塩があったところにひざまずき、静かに拝んだ。

この話を思い起こしていた著者は、ついに真相に気づいたのである。
それは、怪異の捉え方に関する新しい気づきでもあった。

最終話 禁忌

ここでは、これまでの五話をまとめて出版する話が書いてある。
バラバラの、それも人から聞いた話をまとめたつもりだったが、榊さんと話すうちに、全部繋がっていたんじゃないかと思い、編集者に話すと本に筋が通って力強くなるからいいと言われて複雑な気持ちになる。

そして、怪異(および最後には誰かが罰を受ける)の原因は、どの話も「ある禁忌」を破っていたからではないかと気付く。

最近著者自身が二度も信号無視の車に轢かれそうになった。
もう出版しないほうがいいんじゃないか。

だが、このとおり、その葛藤も書いた本章も含めて出版されてしまったのである。
罰を受けたのは。。。

あとがき

ようやく最後まで読んだとき、朝の7時だった。オチがついたようなそうでもないような感じと、自分には霊感などないから怖くないと思っていたはずだが、冬の朝だからか、少し背筋が寒かった。
下のほうに、芦沢央さんの別の書籍の記事を載せておきます。少ない読書の割には、よく読んでいる作家さんだと気づきました。

芦沢央さんのプロフィール

1984年東京都生まれ。2012年『罪の余白』で第3回野性時代フロンティア文学賞を受賞しデビュー。2017年『許されようとは思いません』が第38回吉川英治文学新人賞の、2018年「ただ、運が悪かっただけ」が第71回日本推理作家協会賞短編部門の候補になった(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)(「BOOK著者紹介情報」より)


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