MENU
ホーム » 書評 » 文芸書 » 『居た場所』 高山羽根子 中国からの元実習留学生の妻と彼女の居た場所をめぐる冒険
この記事の目次

『居た場所』 高山羽根子 中国からの元実習留学生の妻と彼女の居た場所をめぐる冒険

  • URLをコピーしました!

当サイトはアフィリエイト広告を利用しています。

目次

はじめに

私の妻・小翠(シァオツイ)は、実習留学生としてやってきたのだった。日本での居場所にもなじんだころ、妻はかつて自分が一人暮らしを始めた場所に行きたいという。
事前に地図を調べても、なぜか妻が居た海沿いの街が表示されない。地図を片手に、私と彼女はその場所への旅を始めた。
記憶と存在の不確かさを描き出す、第160回芥川賞候補作。

あらすじ・感想

彼女が一人暮らしを始めたアパートのような建物には、もう誰も住んでいない。市場は移転するらしい。彼女の部屋にたどり着いたとき、パンパンという乾いた音がした。それを聞いて彼女は痙攣し、黄緑色の液体を吐く。主人公はそれをなめて気絶する。気が付くと市場は封鎖され出られなくなっていた。どうなることかと心配したが、妻・小翠(シァオツイ)のおかげでホテルに戻ることができた。(まあ、よく分からない展開ですが、一瞬、妻の小翠(シァオツイ)がタッタにでも変身するのかと思いましたよ!)

翌日、妻・小翠(シァオツイ)は、ノートと鉛筆を用意して、地図を作ると言って外に出た。きれいに区画整理されているわけでもないので、道を正確に描くことは難しい。やはりネットの地図に、かつて「居た場所」が表示されないのは、寂しい、許されない、そんな気持ちなのだろうか。

地元の人が行かないその島の博物館を訪れる、その島で滅びたという最初の入植者たちが展示されていた。自分たちの先祖かも知れない人たちに住民らは興味がないようだった。

妻・小翠(シァオツイ)は、ひととおり、居た場所や博物館でルーツを探った。果たしてこの旅で目的は達成されたのか。それは本人にしか分からない。懐かしいとは言っているが、懐かしいというのとは、ちょっと違うような気がする。

高齢者に近くなった私も、たまに帰省するが、少しずつ変わる風景に懐かしさとは違う何かを感じているし、いつまでもあってほしいというよりは、子どものころ行けなかったあそこはどうなってたんかなと気になってしょうがなくなることもあるので、小翠(シァオツイ)の気持ちも分からなくはない。

広告

書籍情報

・形式 単行本・出版社 株式会社河内書房新社
・ページ数 160頁
・著者 高山羽根子
・初版発行 2019年1月30日
・分類 文芸作品

著者情報

1975年富山県生まれ。2016年「太陽の側の島」で林芙美子文学賞大賞を受賞。著書に『オブジェクタム』『居た場所』『暗闇にレンズ』など。
(本書およびネットの情報から)

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
目次