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くるまの娘 宇佐見りん ~車中泊の小旅行で目にするなつかしい風景にどうしてこうなってしまったのかと家族のありかたを問う。娘はあのひとたちは私の、親であり、子どもなのだ。と言う。~

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くるまの娘 宇佐見りん ~2022.5.20初版~

内容紹介、感想

まるひろ

まずは、登場人物の紹介!
にい、かんこ、ぽん、父、母、祖母
にいは、昨年家を出た兄(のあきら)
(あとで、職場の同僚の夏さんと結婚して栃木で暮らしていると分かる。)

ねこみかん

ぽんは、祖父母の家に住み始めた弟。
いまは、母とかんこの二人だ。父は仕事でいない。

まるひろ

”かんこ”こと秋野かなこは、家庭環境(母の病気と父のDV、たぶん)のせいでメンタルがやられているが、どうにか学校には来ている。授業中に眠ってしまう。1年半前から、とつぜん動けなくなるか、何かを反復し続けるかだ。

ねこみかん

母は二年前、脳梗塞で入院し、退院後も左半身に麻痺が残り、調理は包丁のかわりに鋏を使った。母は突然、認知症のような症状を発現しはじめた。後遺症の病名は、何だろう。

まるひろ

病気になって以降の記憶が失われやすい、前向性健忘と医者は言った。


おばあちゃん(父の母)が、危篤となり、家族みんなが病院へ向かった。
兄は間に合い、関西出張の父は間に合わなかった。

途中で父を乗せて、病院へ向かう。兄から電話が入り、母の表情も明るくなるが、病院までは、夜を超す必要があり、昔よくやった車中泊をしたらという兄の提案に、昔の記憶はしっかり残る母はうれしそうだが、父は運転しながら渋い表情だ。
(心の中では、栃木まで行ったら、そこの道の駅に泊ろうと考えている。)

壊れてしまった母や父と昔行った車中泊を懐かしむ娘は、あのころに戻りたいと思う。
でも、兄夫婦は、自分たちを避けている。
父も家を避けている。
そんな家族の中で、おちつかない“かんこ”がめぐらす思い、感情が綴られる。

病院へ着くまでに、母が言いだすわがままにも父は怒らず対応する。

まるひろ

かんこは、集中力がないかもしれないが、大人の事情を推察することができる賢い子であることがわかる。大人社会の親戚との関係などが、子どもだが、全部分かっている。父が娘の“かんこ”に話していたこともある。そうして育ったものだから、いろいろ察することが出来るのだろうなと思った。

亡くなった祖母の家に泊る。
久しぶりに集まった家族は、こんな家族になってしまった過去の出来事を語る。

だがすべてが遅かった。何もかもが遅かった。人が傷つく速度には、芸術も政治もなにもかも追いつかない

怖くて厳格だった父の思い出は、兄と弟にとっては思い出したくないものでも、娘にとってはいい思い出だった。

まるひろ

そういうこともあるか。わたしにも兄弟がいるので、ここで書かれている関係性はなんとなく分かる。

「逆にお前はどうしてあの家で過ごせるの。頭おかしくならないの」と、にいが言う。
「にいはわたしが、あのひとたちが親だから、一緒にいると思ってるのかも知れないけど、でも違うよ」

まるひろ

さて、かんこちゃんはどう思っているのか!?

ねこみかん

書いてあるよ。
”あのひとたちは私の、親であり、子どもなのだ。” って。
このへんは「かか」とも似ているような気がする。

くるまの娘 宇佐見りん

誰のことも傷つけない人間などいない・・・P122
みんな、助けを求めている。相手が大人かどうかは関係がなかった。

むしろ自立を最善の在り方とするようになったこの時代社会が、そうでなければ大人になれないなどと曖昧な言葉でもって迫る人里の掟じたいが、かんこにとってはすでに用済みなのかもしれない。

まるひろ

この言葉を聞いて、この小説は少し哲学的だと思ったし、そんな考え方や視点があるのだと気づかせてくれたことに少し感じ入っているのである。自立して大人になるという社会の掟に抗うという考え方に。

車のナンバーに四則演算をして十にするという遊びだった。

まるひろ

そんな遊びがあったのか。自分はワンペア、ツーペアとか語呂合わせを声に出して家族が笑うので遊んでいたが、四則演算も面白そう。これが読書のご利益!

そして、ドライブが続く。

ねこみかん

あれ、どこからどこへ向かってるんかな?

しんじゅうする。こんなんなったら、もう、それしかない。

脳に麻痺が残る母が、車を運転している。まわりは暗くてよく見えない。

ほんといやだ、この家族は。

まるひろ

仲がいいのか、あるいは(しんじゅうしたいほど)仲が悪いのか


かんこは、車に住む高校生になった。(家族がそれに寛大なのがすごいと思うが。)

持ち物や課題を忘れては叱られたが、その回数も一時期よりは減った。それも、どういうわけだか、なにがきっかけかわからなかった。苦しんだ理由が分からないように、癒えていく理由もわからない

ねこみかん

きっと、成長したということだろう。

まるひろ

みな、必死に生きて、生き残っているだけなんやと思うのである。
これは、そういう普通?の家族の小説。深いけど。・・・泣くかも?

くるまの娘 宇佐見りん

宇佐見りんのプロフィール

1999年生まれ。2019年、『かか』で文藝賞を受賞しデビュー。同作は史上最年少で三島由紀夫賞受賞。第二作『推し、燃ゆ』は21年1月、芥川賞を受賞。同作は現在、世界14か国/地域で翻訳が決定している。 (Amaznonの商品説明より)



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