『僕たちのアラル』 乾緑郎 書評・感想

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『僕たちのアラル』 乾緑郎 書評・感想

目次

おもな登場人物

・井手拓真:主人公、高校三年生
・井手真穂:主人公の姉、スフィア市民大学生
・井手慶一郎:主人公の父、アドセンター内の総合通信局勤務
・戸井康夫:主人公の姉の彼氏
・金城映美:主人公の同級生
・鈴本成志:主人公の同級生、幼馴染
・額田明日菜:主人公の同級生、休学していた

構成

物語は、今(プロローグ)、十年前の物語、今(エピローグ)の構成となっています。
全部読んだあとに、プロローグとエピローグを続けて読むと理解できるので、エピローグは本文を読んでから読みたいです。

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背景・時代

時代は近未来ですね。
将来、火星などに移住した人類がうまく暮らせるのかという壮大な実験を、三十年という長期間に渡り行うというものです。

政治、経済、思想、宗教、犯罪などの動きが監視されるため、様々な人種、経歴の持ち主が送り込まれているので、犯罪も起こり得ます。

人間関係

高校三年生の井手拓真くんを主人公とし、彼の家族や友人とその家族、そして正体の知れない
金城映美、額田明日菜という女ともだちとの関係が設定されています。
このあたりは、青春小説ぽいのかも知れないが、あまり得意ではないので良く分かりません。<(_ _)>

まあ、ちょっと家庭環境に恵まれていたとは言えないような生い立ちが、エピローグへと効いて来ますので、そこも読み逃せない点です。

SF・科学の要素

「スフィア計画」と呼ばれる、大規模な疑似的テラフォーミングの実験は、三十年を満期にして計画されています。
火星への移住に先立っての実験という位置づけで、およそ五十平方キロメートルある居住区には、十五万人ほどの市民が暮らしているということです。

ちょっとわかりにくいので、日本の都市規模で例えると、兵庫県尼崎市(50.7㎢)に、15万人が住んでいる感じです。尼崎市は45万人ほど住んでいるので、その1/3の八王子市くらいのゆったりした人口密度かと思われます。

展開の面白さ、見どころ

突然、外の世界との通信が遮断されるという事故が起こりますが、実はこれも実験の一部であったりします。このような事態は、火星でも起こりうるため、バイオドーム内部の人間がどのように行動するのかというのは興味深い点です

その事件が思わぬ展開、すなわち実験当局の想定を超えたものとなったり、そのため当局がテロリストに屈しなかったために、人質となった主人公の父が殺されたりするというショッキングな展開で物語がスタートした点は、今後の物語の行方を読みたいという衝動に駆られましたので、良いと思いました。

だんだんと、同級生の映美や明日菜の正体や、通信遮断の真相などが明らかになっていきます。
この中盤は、好奇心からどんどん読んでしまうでしょう。
主人公の拓真も、閉じられたバイオドームの外を見てみたいと思い、行動を起こします。

スフィア計画が終わったあとに、外へ出たらどうなっているのか、という点もSFファンはワクワクするかと思いますが、この辺は、エピローグにつなげて、ヒューマンドラマチックにしたため、バイオドームの外は、SF的なぶっ飛んだ世界にはなっていない点は、やや物足りなさを感じるところかも知れません。

書籍・著者情報

・形式 単行本
・出版社 KADOKAWA
・ページ数 304頁
・著者 乾緑郎 1971年 東京都生まれ
・初版 2017年9月29日


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