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この記事の目次

カタストロフ・マニア 島田雅彦 まるで2017年の時点で、2019年からのコロナ禍を予見していたかのような、これは。。。

自分が思い出すための物語の内容と感想が混在しています。

登場人物

・アカシヤ・タツヤ、大学三年生
・スギモト・シンイチ、居酒屋勤務
・シマダ・ミロク、ゲーマー26才
・タカナシ・アユム、大学院生
・二階堂(ミロクの友人未満)
・看護師の国枝すずさん(眼鏡)
・白鳥姫星(しらとりきらら)、40代の女優
・モロボシ・ダン、元記者
・短波のマドンナ、エオマイア
・エルキュール製薬
・眠りが丘病院

シェルターの人たち
・ジュンコ 37歳
・ヒロマツ 44歳
・元水道局の大迫さん
・元エンジニアの(マイクこと)真木さん
・モリ・リンタロウ、高校生
・ハルカ
・モリ・リンタロウの担任の英語教師(偽者)、女性

目次:

1.冬眠への誘い

ミロクは健康になる仕事を二階堂から紹介され、受けてしまう。
投薬と採血を21日間行い、50万円もらえるというもの。
次々と、脱落者が出る中、ミロクは最後の4人に残る。
外の世界では、テロが激化していた。

24時間の睡眠治験から目覚めると、14日も経過していた。
病院は、もぬけの殻となっていた。

残されていたボイスレコーダーを再生すると、「厄災は冬眠でやり過ごすのが一番です。どうするのが、あなたの生存に最も有利かを考えた結果です。どうかあなただけでも生き延びてください。以上。」

いったい、何が起こったのか。。。

2.狩猟採集時代

2017年発行のこの小説は、今のコロナ禍を予見していたのか!
そして、カタストロフの原因が太陽のコロナ質量放出という設定は、言葉だけではあ
るが、コロナという言葉が一致しているという、偶然にしては出来すぎているとしか思えない。

また、カタストロフからの再起を妨げているのが、原発という設定である。
これは、2011年3月11日に発生した東日本大震災をモチーフにしていることは間違いない。加えて、新種の伝染病が蔓延しているという。ほんとにコロナ禍と重なる。何度も言うがこの小説の発行年は、コロナ禍より2年前の2017年である。

ラジオから聞こえたDJのつぶやきは、「パンデミックはいつの時代も弱者に厳しいのです。でも、自暴自棄にならないでください。この最悪の事態を何とか耐え忍べば、新たな時代が到来し、社会の変革が起きる可能性があるのです。1パーセントの裕福な支配層が、99パーセントを貧困に閉じ込め、奴隷状態に置いておく経済システム自体が、パンデミックによって瓦解するかもしれないからです。」

3.世捨て人たち

ミロクは、武蔵野の国枝さんを探す行程で、白鳥姫星(しらとりきらら)の誘導で、代々木公園の森に迷い込んでしまう。

そこで、モロボシ・ダンと名乗る男に出会う。ん~、ロールプレイング・ゲームのようになってきた。地下にセレブ専用のシェルターがあるらしい。男は、「知らないのか?    政府が密モロボシ・ダンンンン引きをしていること。」
政府がウィルス蔓延を政治利用して、意図的に人口調節を図っている。。。

これもまた、コロナ禍とともに、ネット上で囁かれている意図的な人口淘汰の黒い噂のようなことまで書かれている。この小説の影響を受けているのではなかろうか。

病名は、ボトルネック病。
地下には、第二東京があるらしい。これは、プリンセス・トヨトミの大阪国的な話だろうか。いろいろ混ざっていますなあ。そして、ミロクは保健所と警察の乗ったバスに捉えられてしまう。

4.ボトルネック

隔離された施設で、警察に職質されたりして、果たして国枝さんには会えるのか?
ミロクは検査され、抗体を持っていることが分かり、感染が疑われる。
そして、なんとか隔離から免れようと、治験モニターをやっていたことを警察に白状した。

しばらくして、ミロクの血液検査の結果が出た。検出されたウィルスは、感染によるものではなく、あらかじめ不活性化されたウィルスであった。これって、ワクチンではないか!

大村医師は興奮して言った「あなたの持っている不活性ウィルスを大量培養すれば、・・・」

まるで、21年1月から放送されていた、竹内涼真と中条あやみの「君と世界が終わる日に」のストーリーを思わせるものである。

また、このウィルスの感染源を特定するため、保健省、CIA、国家安全保障局が調査に乗り出し、この新型ウィルスは自然界から発生したものではなく、研究所で人工的に作られたものであることが判明した。

なんと、ここもアメリカやヨーロッパが報道しているように、中国の武漢の研究所から流出した可能性があるとして調査している様子と酷似している。

ついに、その研究者を割り出すが、彼がウィルスをばらまいた犯人ではないということも分かった。ではいったいだれが。故意だとして、感染源となった宿主らは商社マン、外交官などの海外出張が多く、給料も地位も高く、政府高官や企業幹部との接触が多い人材であったことは、各国の中枢を占める人間に感染させようという意図が見えるようだ。

捜査の結果、空港のラウンジに勤務していた清掃係のイラン人女性が容疑者として浮かび上がる。たしかに彼女の立場なら、商社マンらにラウンジで商社マンに感染させる方法は、いくらでもありそうだ。

5.文明退化

国枝看護師の住所が判明し、ミロクは警察と共に現場へ連れて行かれたが、国枝すずは見つからなかった。ミロクは偶然そこは自分の生まれた場所に近い場所だとわかり、しかも抗体を持っていたので、その地域のシェルターに迎え入れられた。

そうは言っても、自由の身になったわけではなく、ミロクの身体には治験のときに、GPSチップが埋め込まれたままなのである。

シェルター内では、何でも自分でやらなければならない。お金持ちだとかは関係ない。決められた役割の労働をこなして、食料や水を調達しなくてはならない。泥水をろ過し、野菜を育て、トイレは肥溜めとして活用する。カタストロフは奴隷(社会的弱者)を開放し、ある意味平等をもたらしてくれた。

パンデミックが終息し、インフラも回復し、生産活動が再開するまでは、この中世のような生活に耐えなければならないことは、考えてみればとても厭なことであり、希望が失われるようでもある。ものを手に入れるために、現金はさほど役に立たず、物物交換が主流となった。

この小説の状態に比べれば、太陽のくしゃみで電力が壊滅していない、2021年6月のCOVID-19による世界的パンデミックにあえいでいる実世界が、まだずいぶんマシな気がしてくる。

食料を自給するとしても、野菜を育てるには、農業の知識が必要である。やはりこのような状況になったとき、生き残るためには、農地を所有し農業ができる人が有利である。たとえば、同じ場所で同じ野菜を作り続けると、連作障害が出て、病気になる確率が高くなるというが、現代の農家さんはどうやってそれを防いでいるのだろうか。毎年同じ作物を栽培しているはずである。

公共のシェルターではなく、自給自足のシェルターには、たんぱく源となる肉は配給されず、物物交換で手に入れるしかない、厳しい世界である。

そんな中、絶望することに飽きた老人たちは電気がなくて動作しないハイテクに見切りをつけ、水車での発電や木炭で動く自動車などの製作に生きがいを発見してみせるのである。

6.菊千代

祈る神を持たないミロクは、心の拠り所として、いつものように短波のマドンナの声を聴く。
そう言えば、彼女が流す音楽から、作者も音楽に造詣が深いのだろうと思ってしまうが、というよりは自分の知識の浅さを証明しているようでもある。

筆者が描くように、ライフラインは復旧せず、電話もネットも使えず、FMと短波と口コミが情報源になると考えるとき、実際にそうなったら、インターネット上で構築されたもの、企業、職業、SNS、YouTube・・・など、100年は復活しないだろうと考えてしまう。

短波のマドンナ、エオマイアは、言う。「古代の暮らしに戻るのは大変ですが、産業文明とそれに続く情報文明に馴らされ、すっかり退化してしまった生存本能と能力を取り戻すしかありません。」

まさに現代のCOVID-19は、行き過ぎた開発を行い、地球の環境を破壊し続けている人類に対し、この小説よりはやや軽いが、いまこそ備えるべきだと訴えているような気がしてきた。あなたはどうだろうか。いま簡単にやり過ごせば、我が子の時代に再びパンデミックに襲われた時、後悔するような気がしてならない。

時間の経過とともに、都市での生活は困難になってきています。古代のムラのようなコミュニティをつくり、・・・小集団で分業をしながら暮らすのが、現時点では最も現実的です。われわれは、この作者の言うような対応ができるのだろうか。阪神大震災直後の生活を思い出した。

ジュンコは、ミロクを誘って三浦半島に行こうとするが、畑泥棒を捕まえたら子供の女の子であったことと、その仲間が他にも居ることがわかる。彼らをコミュニティで引き取り教育することになり、脱出は保留となった。

7.アイム・スパルタカス

いつの間にか、大晦日の夜になっていた。
引き入れた子どものリーダーは、名乗らないのでミロクが菊千代と名付けた。
彼はハッカーの才能があり、超短波に乗せられた政府の暗号の解読に成功した。

そこに書かれていたことは、「2037年1月3日午前0時、プラン4を速やかに実行せよ。」

モスクワ、ニューデリー、北京、東京、メキシコシティでプラン4が実行されるようだ。
どうして、アメリカやヨーロッパが無いのかと思ったが、先を読んでみることにする。

彼は自分を囮にして、敵の正体を突き止めようとする。そして、敵の陰謀の邪魔をするつもりだ。
そんな彼に、ミロクは短波のマドンナ・エオマイアを紹介した。エオマイアが語るには、1650年に5億人であった地球人口は、1987年に50億人を超えたという。組織は、地球の適正人口として5億人という数字を掲げ、自分たちの理想の文明を作り出そうとしているらしい。

菊千代が行方をくらました。追っ手が近づいていることを感知したようだ。ミロクもシェルターを抜け出した。

8.内戦誘発装置

ミロクは、菊千代と約束した原宿キャットストリートに着いた。
そして、そのアジトには、あのモロボシ・ダンがいた。ほかにもたくさんおり、パルチザンのようである。

彼らの目的は何か!?
彼らは何かを阻止しようとしているのか!

それでも、彼らは暗号のとおり、第二東京なるシェルターへの突入を行う計画である。
このパンデミックの首謀者をあぶりだすのだ。

このクーデターには大義なんてものはない。あるのは個人的な事情だけだ。
定刻の午前二時ちょうどに、内戦誘発装置が爆発をはじめ、彼らはそのドアからシェルターへ侵入した。

9.智子の水筒

しばらくして、千代田線の留置線に出た彼らは、線路に沿って国会議事堂駅を目指した。

もとシェルターにいた白瀬の先導により、無事潜入に成功する。モロボシは「智子の水筒」に高威力含水爆薬を入れて持ち込んでいた。これひとつでシェルター1つくらいは吹っ飛ぶらしい。

シェルターの中を調査すると、おかしなことが分かってきた。人が活動していないのである。みなベッドで静かに眠っている、そして鼻にチューブを差し込まれている。

何をしているんだ! ミロクらは、敵に見つかってしまう。その中にいた国枝すずを人質にして逃げた。

国枝すずはワクチンのありかを思いつき、ミロクらはワクチンを手に入れた。ミロクらは地上へと脱出するが、菊千代はいなかった。ミロクは国枝すずにワクチンを託してシェルターへ戻った。

10.黎明期(れいめいき)

シェルターにもどったミロクは、菊千代を見つけるが。。。地上にはもう希望は無いという誘惑の声がトランシーバーからした。

菊千代は、「智子の水筒」を使って政府の心臓部での自爆を目論んでいた。

この先、エオマイアの支配に従って、冬眠して生きのびてゆくのか、支配から離れて農耕民族からやり直すかの決断が必要なようだ。エオマイアの正体とは!

11.ボーン・アゲイン

ワンボックスカーで海辺の家にたどり着き、「眠りから目覚める」と、すずはいない。
運行再開した電車の中で、治験者仲間であるタカナシに出会う。
彼は、自分のからだを献体しようとしていた。
肉体を機械に取り替えていけば、ついには寿命を延ばしたり、他人になったりできる(ボ―ン・アゲイン)ようになり、煩悩から解き放たれるという。

すれ違う人々に違和感を覚えた。なんか、映画のマトリックスのような感じだ。
それにしても、ミロクはいつから眠ったのだろうか。

12.幼年期への回帰

ミロクは、NO川流域の集落にタクシーで向かう。集落の家の扉をあけると、どの家も暗闇があるだけだった。

すずが道行く人に年代を訪ねると、20年前の年を告げられた。

このことの真相は読んでのお楽しみ。。。

いろいろあって、気が付くと、現実世界だった。

彼らは、どのように生きて行くのかを決めたようだ。
アフターコロナでの生き方を覚悟しなければならないような気持になった。

終盤にもう少し厚みが欲しいと思った。もっと戦いが続くのかと思ったら、人工知能は破壊せず、共存しつつ、離れて暮らしていくというのが成り立つ不思議な世界である。これもまた、ニュー・ノーマルの一種なのか。

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この記事を書いた人

ソフトウェア会社サラリーマン。書店や図書館で見つけた本の読書録を残したいと考えブログに書いています。ミステリー、時代小説、資格維持のための教養本などジャンルを問わずに読んでいます。読書録に加えてちょっとしたアイデアなども書けたらと思います。

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