悠々として急げ

 ~未知との遭遇 in books & libraries~

The Modern モダン 原田マハ

ピカソのような表紙の絵に惹かれて手に取った。(実際、ピカソの絵だった。)

第1話 中断された展覧会の記憶 Christina's Will

まさか福島の原発の話が出てくるとは思わなかったが、その状況を描き、中止される展覧会の状況を設定することで、展示会を開くことの大変さや、関係者たちの思いが良く分かるような気がした。

「クリスティーナの世界」を知らなかったので、ネットで画像を調べた。この本の解説を読まなければ、気にも留めない風景画のようであったが、もうそうはできなくなってしまった。アンドリュー・ワイエス 1917-2009 アメリカ

出演 ディル・ハワード コマーシャルフォト専門カメラマン
   杏子・ハワード ニューヨーク近代美術館MoMA)展覧会ディレクター(学芸員への転向希望)
           コロンビア大学で博士論文執筆中
   長谷部伸子 ふくしま近代美術館 学芸員(キュレーター)

 

第2話 ロックフェラー・ギャラリーの幽霊 Ghost in the Blanchette Hooker Rockefeller gallery

 
監視員は、その日によって持ち場が違う。「Visitorを敬意をもって疑う」
今回の絵は、ピカソの「アヴィニョンの娘たち」と「鏡の前の少女」。
はたして、彼の前に現れたのは誰のゴーストなのか。
 
ピカソの絵の話と、MoMA初代館長を絡ませたストーリーだが、それより毎日この美術館に勤務して、帰りにバーでホットウイスキーを2,3杯やって帰るというのが、とてもうらやましいと思った。
 
出演 スコット・スミス ニューヨーク近代美術館(MoMA)監視員 
   アルフレッド 幻のように奇妙な青年
 
 
第3話 私の好きなマシン My favorite machine art
 
出演 ルーシー・エイマン・ギャラリー(ソーホー)
   ジュリア・トンプソン(インダストリアル・デザイナー) 
    夫 ロニー・トンプソン(グラフィック・デザイナー)
    娘 ケイト(NY大学)
   ニック・シンドラー(ジュリアの父 シンドラー書店経営)
   リサ・シンドラー(ジュリアの母 児童書の挿絵画家)
   
パメラ・べルトーニ(MoMA建築デザイン部門キュレーター)
 
ルーシー・エイマン・ギャラリーでの、パメラとジュリアの話題は、またまたMoMA初代館長のアルフレッド・バーのことだった。

そのむかし、シンドラー親子三人で訪れたのは、「マシン・アート」展
偶然会った人が、シンドラー書店の常連客でMoMAの館長であった。
彼曰く、「マシンは、僕たちの知らないところで、僕たちの生活の役に立っていて、それでいて美しい。僕はそういうものを「アート」と呼んでいるよ。」
 
ルーシー・エイマン・ギャラリーで、ジュリアと友人パメラがともに尊敬するMoMAの館長アルフレッド・バーが逝去したとことを、パメラがジュリアに伝えたあと、もうひとつ伝えたことがあった。
 
大人の確執の犠牲になったまま逝ってしまったアルフレッド・バーのことを思うジュリアに、もうひとつ伝えられたことは、「デザイン」を「アート」の領域に高めることに挑戦するものたちにエールを贈るような知らせだった。
 
このMoMA理事長との確執で、新しい分野を次々にアートの世界へ導いてきたモダン・アートの立役者のアルフレッド・バーが館長を解任された話は、実話なのだろうか。。。
いつの世も、ボスより目立つものは、目障りなのだろう。
 
出演 ルーシー・エイマン・ギャラリー(ソーホー)
   ジュリア・トンプソン(インダストリアル・デザイナー) 
    夫 ロニー・トンプソン(グラフィック・デザイナー)
    娘 ケイト(NY大学)
   ニック・シンドラー(ジュリアの父 シンドラー書店経営)
   リサ・シンドラー(ジュリアの母 児童書の挿絵画家)
   パメラ・べルトーニ(MoMA建築デザイン部門キュレーター)
   スティーブ・ジョブズ(アップル創業者)
 
 
第4話 新しい出口 Exit between Matisse and Picasso
 
出演 ローラ・ハモンド MoMAのアシスタント・キュレーター
セシル(ローラの友人、9.11で...)
 
9.11 ニューヨークと福島は、ある意味似ているのか。これが原因でローラは、パニック障害を持つようになった。
 
ピカソの「アヴィニョンの娘たち」を、門外不出から解き放ち、モダンアートの巨匠であるマティスとピカソの展覧会を同時に行う。この企画も、この小説のフィクションだろうか。ネットを調べると、いくつかある(あった)ようだ。 

2004年5月22日~7月11日 千葉市美術館
ピカソ・マティスと20世紀の画家たち フォーヴィスムとキュビスム

2019年12月16日 National Gallery of Australia
キャンベラでピカソとマティスの展覧会同時開催
 
色彩の革命(フォーヴィズム(野獣派閥)の誕生)VS.フォルム(形態)の革命
 
「浴女と亀」VS.「アヴィニョンの娘たち」
 
美術館の人たちが、それぞれ専門を持っていて、博士号も持っていて、驚くような企画を実現しようとしていること、作品を守ろうとしていることを知ることができた。これからは、そういう人たちのことにも思いを馳せながら美術館へ行こう。
 
 
第5話 あえてよかった Happy to see you
 
出演 森川麻美 MoMAで研修(日本の私立美術館の学芸員)
   パティ(麻美のアシスタント)
 
「ありがとう」と「ごめんなさい」を一緒に言うのって、日本の習慣なの?
・・・そのようだ。たして2で割ったような感情とでもいいましょうか。
 
最後の物語には、美術品は出てこなかった。
ただ、MoMAの名前の威力が書かれていた。
そして、日本人、日本との文化の違いが書かれており、分かりあうことの難しさを考えさせられた。分かり合えなさそうだとなったとき、アメリカ人はさっさとどこかへ行ってしまい、日本人は粘り強く対応するのだろうと思った。