悠々として急げ

 ~未知との遭遇 in books & libraries~

コルヌトピア 津久井五月 人類はこの植物計算機と共生できるのだろうか。。。

この本を読んで、記憶のためのあらすじと感想を残しています。じっくり読みたい方は本をお読みになってからご覧ください。

この本には、目次が無い。
章番号だけが記載されている。
各章を探しづらいので、便宜上、以下に仮目次として記載した。

仮目次:

1.P9-29

導入部は、何のことかさっぱり分からない。

<角(ウムヴェルト)>とは何か!?
緑のメトロポリス東京に暮らしている。。。?

吾妻橋のビジネス街
2085年6月15日 午前5時17分。
浅草寺エリアと東京スカイツリーエリアを結ぶ「吾妻橋」。Wikipediaを見た。

フロラとは植物のことらしい。着生植物? 分からないので、Wikipediaを見ると、「着生植物(ちゃくせいしょくぶつ)とは、土壌に根を下ろさず、他の木の上、あるいは岩盤などに根を張って生活する植物のことである。」と書いてあった。

<登場人物>
・砂山淵彦(すなやまふちひこ)・・・特殊問題調査室所属(総勢20名あまり)、27歳。<角(ウムヴェルト)>をうなじに付けているらしい。
・楊(ヤン)・・・砂山の先輩、40歳過ぎ
・折口鶲(おりくちひたき)・・・女性、理学博士、28歳
・藤袴嗣実(フジバカマ・ツグミ)

映像紙は、パソコンの画面のようなもので、オフィス内のフロラと接続するらしい。
インターネットを可視化したようなものか。

東京23区全体をほぼすっぽりと内包する直径30キロメートルもの巨大環状緑地帯。東京に莫大な計算資源を提供する都市基幹フロラ、グリーンベルト。
砂山が勤めているのが、この巨大システムの開発・設計・運用改善を請け負う会社(日本演算緑地公社)であり、所属する特殊問題調査室は、ありとあらゆる原因不明のトラブルの調査を行うのが使命のようだ。

そのグリーンベルト内の実験区域でトラブルが発生した。
そこでは、最新の緑地発電システムを試験運用していたらしい。(電力システム部門担当)

担当が電力システム部門なら、その部門が調査すればいいと思うが、なぜ特殊問題調査室が対応するのだろう?

現地調査チームの一員に、砂山も選出された。
チームは17人。

都市基幹フロラのほとんどが常緑樹を主体とするのは、落葉しないからだ。落葉は計算資源を大きく変動させてしまう。

フロラが創発する演算に利用可能な数学的秩序を、パタンという。このパタンが多様であれば、性能が高いといえる。

このグリーンベルトは、2049年に起こった都心南部直下地震を契機にもたらされたという。
今回の火災は、緑地発電用の微生物に原因の一端があるのかもしれない。

― 助けて、ツグミ。 誰のことだ!?

2.P30-75

子どもの頃の思い出の風景が描かれている。
フロラ。ヒタキが母と、そして世界と接続することを可能にする、植生型情報処理システム。
これは、現在とも過去(母)ともつながれるということを言っているのだろうか。。。

このフロラ技術により、既存の動物の神経系におけるシナプスによるニューラルネットワークに対して、それを遥かに上回る経済性でスーパーコンピュータを得たということらしい。

寝ているのか、思考しているのか、<角(ウムヴェルト)>というものにより、人間の脳がコンピュータの端末とスクリーンのようになっているかのような世界観である。

文京区にある古い国立大学とは、東京大学。作者が在学する母校であり、作中に登場する砂山淵彦の母校。そこにも 折口鶲(おりくちひたき)の研究室がある。

折口自作のフロラ。今なら自作のPCってとこだろうか。

<角(ウムヴェルト)>とは、フロラの情報処理を抽出するのに用いるヒューマン・フロラ・インターフェースらしい。やっと説明してくれた。だいたいの予想はついていたが。

折口の分析によれば、今回のグリーンベルト内の実験区域でのトラブル(火災)の原因は、この区域の計算資源(植物のことかな)が、突然消失したことにより、発電システムの制御が効かなくなり火災に至った、というものだった。

その消失の原因は、一度接続できたフロラが計算資源化を拒んだのだろうか。。。強い環境ストレスや放射線による損傷が考えられないか。。。

彼女は、「実験をしてみる価値は、あるかも知れません」という。

それにしても、都市と緑地が生物のように融合しているかのような、文明を遡っているかのような世界観は、ちょっとおもしろいし、バイオテクノロジイーという言葉が世に出てきてからも長い年月が経ち、この世界観の実現性は高いような気がする。

新宿あたりの建物は、フロラの壁を有しており、土壌を全く必要としないというのも、農業での水耕栽培を連想させる。

彩光装置のガラスに社名のロゴなどが入っているというが、この物語もそうだが、SF小説は未来の発明や特許を思いつくためのヒントになるかも知れない。

東京都の中心部には、四つの巨大緑地があるという。
・明治神宮と代々木公園の一帯
・赤坂御用地
・皇居
・新宿御苑

そして、明治神宮は、神社を作るために整備された人工林である。

植生遷移の考えに則って植樹が行われたと聞く。
そして、新宿御苑は、明治神宮のようなグリーンベルト計画のモデルになれない植物たちを集めた場所なのである。

人間の都合で、フロラのシステムに適合する常緑広葉樹ばかりになった都心と違い、ソメイヨシノやケヤキといった落葉広葉樹は遠ざけられているという。

彼女(ヒタキ)の研究室では、事故の原因究明方法を話し合うふたりだが、「計算機として利用可能な、植物の生命維持に悪影響を及ぼさないヒストン領域が特定できないために、情報の書き込みによって植物の遺伝子を誤動作させてしまう。」と考えた。
「つまり、植物であることと計算資源であることが、矛盾してしまう。」

まるで、現在のコンピュータ・システムでのメモリオーバーフローによる暴走のような原因説である。

「第二の理由が、ヒストンに読み書きした情報を植物が勝手に変えてしまうということです。」

これも現代のコンピュータ・システムでの排他制御漏れのようなことを連想させられる。
が、しかし、それより遥かに原因究明が難しそうだ。なぜなら意志をもったコンピュータ内部の因子による犯罪など現在の科学では対応しようもないからだ。

ヒタキの研究室の異端植物のフロラにわざと演算が破綻するような処置を施し、ウムヴェルトを使ってレンダリングした砂山は、フロラの中に引きずり込まれ、救急車で病院に運ばれてしまった。目を覚ますのは、第4章である。

この辺は、ミクロの決死圏を一瞬連想したが、ちょっとちがうか。実体ではなくて、脳が持っていかれるような感じ。

3.76-109

砂山は、大学に入学したばかりのころ、めまいを起こして倒れた。
診断の結果、砂山は、自分の心の一部が、ウムヴェルトの機能の一部に同期していないのだと分かった。
同期不全により慢性的なストレスとなり、自律神経を攪乱していたという診断結果だった。

そして、ある種の精神医療施設にて治療を行うことになった。認知行動療法により認知の偏りを修正するらしい。

そこで、藤袴嗣実(フジバカマ・ツグミ)に出会う。
高校2年生の彼は精神疾患で入院しているらしい。

コルヌコピア。コルヌー・コピアイともいう。Horn of plenty. 豊穣のヤギの角
この本のタイトルは、コルヌトピアで、一文字違う。

ふたりは意気投合し約束をする。「砂山が東京の謎の答えを見つけて、ツグミが金を稼いだら、気もちいい場所を探しに行こう。」

あるとき、ふたりは林がどこまで続いているか行ってみることにした。
ところが、ツグミはフロラの中で発作を起こしてしまい、ふたりは引き剝がされた。
砂山は施設を退院し、ツグミとは連絡が取れなくなって行った。

「ふと気づくと、僕は都市に包囲された庭園だった。」

ちょっと、何を言っているのか分からなくなってきた。「僕は庭園だった?」
ウムヴェルトを通じてフロラとつながると、つながった先が庭園の植物だったということだろうか。

4.P110-148

砂山は、10日ほどで退院して、特殊問題調査室に復帰したのだが、なんとウムヴェルトが使えなくなっていた。
そう、レンダリング(抽出)ができないのだ。

グリーンベルトでの事故は、その後も三日に一件ほどの頻度で発生し、砂山は調査に乗り出した警察の分析官を補助する軽い任務に付けられた。

ヒタキは、自分以外の砂山が異端植物のフロラに、しかもエラーを起こした状態のものに接続させたために、砂山がレンダリングできなくなったのだと謝った。

特殊問題調査室は、メンバーの自律性が高いため、レンダリングのできない砂山は手伝える業務が少なくて、たまに会社を休むようになった。

ある日、ふらふらと長い散歩をして家に帰ると、ツグミからの初めての返信が届いていた。

ここからヒタキの話に切り替わる。
ヒタキは、拒食症に苦しんでいるようだ。
15歳のときに死んだ母の残した庭の手入れを諦めたことに罪悪感を抱いている。

砂山に責任を感じていたヒタキは、その状況を解決するため?に、さらに危険な行いを提案した。彼女は先週すでに、とある実験を砂山に試み、ひとつの事実を発見していた。砂山の脳はなぜか、異端植物の創発する不安定なパタンを理解できるようになった代償として、通常のフロラがレンダリングできなくなったらしいと。

ヒタキは、砂山が通常のフロラをレンダリングできるようにするために、ある花束の装置を作った。

場面は変わる。新宿御苑の温室の地下である。
ヒタキは、砂山にある花束を渡した。この花束は、砂山が通常のレンダリングができるようにするための中間装置のようなものだった。

オフィスに戻った砂山は、ヒタキが作ってくれた装置(花束)で、レンダリングになんとか成功した。


砂山に、ツグミからのメッセージが届いていた。
そして、待ち合わせの約束をした。
ツグミと連絡が取れなくなってから、八年が経過していた。
明治神宮で、やや離れて再会した。
ツグミの以外な告白が、砂山を驚かす。

そんなことがありえるのだろうか。人間が※※※※になるなんてことが。。。

このことは、この物語の大事なところである。私の発想には無かった。

ツグミの叫びだ。
「誰が理解できるというんだ! 俺がフロラに直接影響を受けるという簡単な事実を周囲が認めるのに、どれだけの時間がかかったか、どれだけ言葉を尽くして訴えたか、(略) 人に理解されるのを待っていたら、永遠に物事は変わらない」
天才の苦しみは凡人に理解されない? 分かってもらうためには、何か行動を起こすしかないというのか?

5.P149-181

場所は、新宿御苑温室の地下、栽培室。
砂山は、ヒタキと話している。
ツグミは砂山を自身の理解者として求め、ヒタキもまた砂山を研究対象として求める。

砂山のカード(電話のようなもの)にツグミから連絡が。ツグミはグリーンベルトの最後の最新区域にいるらしい。砂山はそこへ向かうタクシーの中でツグミのことをヒタキに語り始めた。

ツグミの目的は何か? ツグミを理解できなかった砂山に、目標の達成を見せつけたいのか、あるいはフロラを開放したいのか、はたまたフロラと戦うというのか。
彼はフロラと直接つながることができた代償として、フロラに支配されそうになり、ひとりで戦っていたのではないだろうか。
この物語の世界では、このように進化した植物と人類の共生についての課題を提示しているように感じる。

「ツグミがウムヴェルトを使わず、直接フロラと情報のやり取りができるとしたら、グリーンベルトの強力なセキュリティにも阻まれずに計算資源を奪えるのも当然です」

その最新区域の南のはずれで、あと一歩でツグミにたどり着くかと思えたとき、警察に後ろから手を掴まれた。そしてツグミは警官たちに逮捕された。。。

事件とその余波はついに終息した。

ことの次第は本書を読んでいただきたい。

新宿駅屋上からは、見渡す限り、灰と緑の混じり合った街並みが広がっている。
近い未来、東京はこんな風になっているかも知れないということだろうか。